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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

世界の動向を見据えた政策立案を!

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29年度税制改正で、所謂CFC税制(外国子会社合算課税)の見直しが予定されている。

このベースにあるのは、このところOECDを中心に議論してきたBEPS(税源浸食と利益移転)の回避のための規制であり、この動きを踏まえて与党においても「今後の国際課税のあり方についての基本的考え方」が議論された。ただ、この中で「企業の健全な海外展開」という用語が使われ、その意味が「グローバル企業の経済活動が行われる場所と、税が支払われるべき場所とを一致させる」ということだとすれば、本当に欧米諸国がこの意味を同じ意識で共有しているのか、それとも同床異夢なのか、ちょっと懸念を持たざるを得ない。

一つには、BREXITやトランプ政権の誕生など、一見孤立主義の台頭に見える世界情勢の変化が理由だが、それ以上にそれぞれの国家における社会・経済的な背景の相違が挙げられるし、併せて、BEPSの契機となったアマゾン・スターバックスの問題や、昨今問題となったパナマペーパーの本質がどこか、ということにも論及せざるを得ない。

我が国のような、とにかく公共的な、或いは公益的な問題は、全て政府任せ、だから税金を払っていれば良い、という国と、租税を法律の範囲で出来る限り節約して、その代わりに節約した税金で増えた税引き後利益を様々な公益的な事業に投じていくという米国の仕組みは根本的に異なる。我が国では、節税すらある意味で悪だが、米国では当然のことなのだ

加えて、ウォールストリート型の、株主・投資家至上主義の資本主義においては、とにかく税引き後利益で成果や収益性を図るのが当然であり、その意味でもグローバルな国家ごとの租税の仕組みを研究して、その隙間を縫ってとにかく税引き後ベースで収益を増やし株主への配当を上げることは当たり前なのだ。もっと言えば株主への配当を増やすために節税をするのは当たり前ということだ。

加えて言えば、BEPSの契機となったアマゾンなどのケースは、要は自国で事業をやっている、或いは収益を上げているのに課税できないのは不快だ、という欧州諸国の米国多国籍企業に対する批判であり、ある意味自国に税源が発生すれば良いというもの、またパナマペーパーも不適切な資金洗浄が行われること、或いは公的資金や政府高官の資金が流れていることが問題視されているのであって、節税そのものにどれだけ視点が当たっているかははっきりしない。

従って、BEPSの議論にしても、その内容をそのまま制度化するのではなく、精神は大事にしつつ、各国の出方を伺いながらそれぞれの本音をあぶりだす形で、我が国企業の国際競争力を確保するようにしていくべきだと考える。

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