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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

その場しのぎは止めよう!

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久しぶりに、日本で週末を送っている。野田政権は、臨時国会の会期延長でトラぶったし、さっそく大臣の辞任騒動などもあったが、まあともかくも前政権のように周りが見えずに独善的ということではなさそうなので、当面は好意的に見守りたいと思っている。

ただ、このところ話題に上っている国の政策に関して、感じることだけ簡単に述べたい。まず、復興対策が必要なことはもちろんだし、一方でその財源を示すことが重要なのも事実だと思うが、これを所得税などの増税で賄い10年で回収するという考え方そのものが、全く根拠を欠くものであることから、もっと根本的な議論を深めるべきではないかと考える。

そもそもリーマンショック後の世界経済の停滞の中で、わが国経済も相応に影響を受けており、更に震災の影響や少子高齢化などに鑑みると、わが国経済の先行きは極めて不透明。その中で所得税増税で益々消費・投資に消極的になることは明らかで、期待した増税効果も減少する可能性があることを考えると、このような政策が意味があるのか、という疑問だ。

既に、わが国の国債残高は主要先進国の中で群を抜いてGDP比の比率が高くなっており、それにも関わらず年間40兆円以上増発されるわけだから、復興財源のために所得税増税などというレベルでは済まないところに達している。そのような状況の中で、高々10-20兆円の復興対策のための増税などという議論はそもそもナンセンスだ。

財政規律が大事なのはもちろんだが、だからこそ本気で歳出構造の見直しと税収の拡大に結び付く政策の実現を検討すべきではないか?歳出構造の見直しとは、事業仕分けのようなせこい話ではない。年金を基礎年金に限定して国庫負担とし、健康保険は終身での保険金の上限を儲けるなど、社会保障のコストを大胆に削減し、また地方主権で国の機関を大幅にリストラして、国家公務員を大幅に削減するということだ

税収の拡大につながる政策とは、いま議論されているような相変わらずの信用保証協会主導の中小企業救済策のようなその場しのぎでなく、思い切って存在意義を失いつつある企業には緩やかな退場を促す政策を打ちつつ、新たな産業にリスクを取って参入していく仕組み作りだ。

既に、死にかけている企業を、本来のリスクに見合わない保証料に基づく貸付で一時的に救うという考え方は、もはや意味を失って久しい。この仕組みを温存し、数年ごとに不況という名目で資金をつけることを繰り返しているのだから、結局不良資産は表に出ないし、相当なリスクが溜まりに溜まっているはずだ。

大量の失業を避けるために一時的に先延ばしする必要はあるかもしれないが、退場すべきは徐々に退場させることが不可欠で、このまま置いておいても貸付は焦げ付き、会社は徐々に腐っていき、先に何の可能性もない。大体円高で困るなどと言っているのがおかしい。円高はもちろんあまり得心は行かないが、でも、これが市場の現実だ。

これをおかしいなどと言っても、世界中の先進国が経済的に苦しんでいる中、日本に同情してくれるはずがないし、そもそもそのような自由経済市場のおかげで日本は戦後急成長をしたのであり、もちろん各国の政策や思惑で歪められている部分があれば矯正すべきだが、基本的にはこれを受け入れるしかない。

それに、どうせ日本国債が近い将来暴落し、極端な円安に振れることは間違いないのだから、逆に今のうちにこの円安のメリットを享受すれば良い。円高でやっていけないという企業は出ていけばよいし、この程度の円高で勝てない企業ならそもそも国際競争力などないと思ったほうが良い

どうも日本の企業は大企業も含めて、アジアを始めとした各国の競争相手との競争で追い詰められている状況を、すぐに法人税、空港使用料などの物流コストなどの政府の規制のせいにするか、或いは円高のせいにする傾向にある。でも、結局はひところ世界を席巻した製造技術や生産管理の分野でも、既に世界に伍して戦える企業は指で数えるほどしかいないという状況のようであり、甘えているとしか言えない。

災害復興も、国家財政も、そして企業・産業・経済も、もう人のせい、その場しのぎでは済まないのであり、復興はすぐやるのは当然として、財源や経済再興施策のところで、これまでのやり方を踏襲するのではなく、早急に抜本的なやり方を議論して欲しいと思う。

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