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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

皆で分かち合おう、そして自粛はほどほどに!

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先週の木曜日に、私も関わっている構想日本のフォーラムで、全国各地で復興支援をしている15の市町村の首長が集まり、その活動状況と課題を語り合いました。私は、聴衆の一人として聞いていただけですが、茨城や埼玉、富山、神奈川、静岡、長野など比較的近いところのみならず、九州でも支援をしている市町村があったのには驚きました。

そして、政府の対応がもたもたしている印象がある一方で、各地が独自にしかも震災翌日には動いていたところもあるなど、市町村行政に携わっているが故に、何が必要かを理解し迅速に行動していることに正直言って感動すら覚えました。しかも、支援は物資の提供のみならず、医療関係者などの人的支援はもとより、被災者受け入れ更には住居の提供に至るまで、幅広く行われています。

これは、一つには各県が被災地の担当県を定めて、その上でその県内の各市町村がそれぞれ個別の被災市町村を支援するという図式もあれば、姉妹市町村など従来から関係を築き上げてきたものをベースに実施しているところ、更には従来の関係がない中で、自らの市町村の過去の経緯を調べて関係が深そうなところに支援を行っているところなど、様々です。

もちろん、一方で被災地のすべてがこのような形で、様々な市町村の支援で網羅されているわけではないでしょうし、個々に様々なニーズがあって、すべてに対応できているわけでもないと思いますが、このような個々の努力の積み重ねと、これを横串を刺して漏れのないようにする工夫で、相当のレベルまで行けるのではと思いました。

一方で、まだ被災者の方々の全容が分からない状況ですし、原発も時間がかかりそうですが、これらの各地の支援はまずは復旧に関わる第一次のものであり、各市町村にとってもこれが長期化する想定は出来ていません。一方で例えばそれぞれの市町村に受け入れていただいている方々も、先行き何を糧として生きていくのか、地元をどうするのか、などなどを念頭に置けば、このような観点も頭に入れて、日本全体で次のステップを考える必要があります。

また、それぞれ支援する自治体の財政規模から、例えば受け入れ一つとっても少人数に限られるケースもあり、被災地の各市町村の復興という観点からも、またそれぞれの被災者の方々の精神面を考慮しても、ある程度まとまった形で当面の生活を送るということが今後は想定されるべきだろうと思います。

それに、個々人の生活設計は異なるものであり、個々の世帯のある程度の自由な選択も求められるでしょう。そういう意味で、とても難しい対応を迫られます。また、もちろん被災者の方々の支援が最優先ですが、片や東北復興を考えると、これはまさに地元に方々のお考えと相応のコミットが必要でもあり、どこまで支援すべきかという課題にも遠からず行き当たると思われます。

翻って世界を眺めれば、リビアを中心に北アフリカの政治情勢は引き続き不安定で、その結果として油価は益々上昇が見込まれ、ヨーロッパの金融危機もポルトガルとアイルランドが名を連ねるに至り、益々深刻化しています。日本の地震を契機とした電子部品供給の停滞は、経済成長のけん引役であったアジア経済に影響を及ぼさないとも限りません。

原発の問題から、東北の復興には相当な時間がかかる見込まれること、発電能力の低下に伴いわが国に生産活動にも自ずから制約があること、更に復興に巨額の資金投入が必要なことから、わが国の財政構造の天井が想定より早く破れる、つまり国債の国内消化が不可能になり、大幅な円安基調となる可能性があること、など想定すべき課題が山積しています。

しかし、このように不透明で世界中が投資を手控えているときにおいてこそ、わが国は世界に対する供給拠点としての役割を果たす一方で、上記の新たな事態に即応した手立てを取り、エネルギー構造を大幅に転換し、これを東北、更にはわが国全体の復興に結び付けるべく積極的な投資を行い、結果として世界経済の安定的な成長に貢献すべきだと考えます。

具体的は手法は、既に政府内においてもいろいろと議論されているようですが、まずは生産拠点(被災地の中小製造業を含む)の西日本への移転省電力型社会経済への早急な転換とこの分野での被災者の雇用、将来的な被災地の農業復興を念頭に置いた首都圏などでの被災農業者による農業の展開などでしょうし、為替市場の将来的な変化を念頭に、再度わが国の品質を含めた競争力の復活を繊維産業などに期待し、これを被災地復興に資する産業に育てるということも考えられるかもしれません。

その意味でも、これは友人の受け売りですが、いつまでも自粛ムードで縮小し続けると益々経済の停滞が長引くので、そろそろ自粛、自粛というのを止めて、多少は使うことが求められます。もちろんただ楽しむとか使うのではなく、その中で被災地以外の方々は日本全体の再生のための活力を醸成し、一方でその一部を被災地と分かち合う、というシェア或いは連帯の精神を忘れてはなりませんが。

 

 

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