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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

役所の批判ばかりだけど、民間も同じじゃないか?

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驚くべき自己保身

私は、優れた技術や製品、サービスを持った企業を、大手の企業や行政に紹介し、取引を達成することを支援する仕事をしていますが、常に驚くのは組織の抵抗です。

我々が主力で支援している事業に、企業の購買・調達コストを削減するサービスがあります。これをある独立行政法人に紹介しようと、たまたま理事に知人がいたので連絡をとりました。理事は真面目な方なので、前向きに考えてくれるのですが、一方で実際の調達作業は当然担当部署が管理しており、彼の言葉を借りれば「理事が口を挟む余地はない」というコメントでした。

行政の無駄が喧伝される中、どんなに小さな問題でも、そのコストを削減することは極めて重要であることは論を俟ちません。独立行政法人や公益法人に関する国の事業仕分けでも、どうしても天下りとか、宝くじなどの異様な経費が目立ちますが、そもそも単価の体系がおかしくなっている行政の世界では、個別のコストの見直しが重要なのです。

行政は、基本的に一般競争入札で物品などを調達します。そしてそこには様々なルールが存在し、落札の予定価格なども設定することになっています。では、これらのルールに沿って調達すれば、市場の中で妥当な金額で調達が出来ていると言えるのか?そこが問題です。

そして、それぞれの機関の担当部署は、ルールに従ってやっているのだから、これを変更するような話は聞きたくないしこれまで通りやりたい、一方でこれをチェックする側も、競争入札なのだから問題ないはずだ、と看過してしまう。仕組みを作れば大丈夫、というこのスタンスそのものに問題があるのではないでしょうか?

私は、行政にかかる入札の仕組みそのものを抜本的に見直すべきだと思っています。そしてそのことをきちんと行政刷新会議で議論していただきたいと申し入れしています。また、一方でそもそも通常の体系と異なる役所の単価についても、きちんと見直しをしてほしいと申し上げています。

例えば、一時間の講演で50万円の講演料を取る講師が、国の審議会では2時間の委員としての出席で2万円です。一方で、少し古い話ですが、ODAの予算だと、ある国に関する政策レポートを書くと、200字詰め原稿用紙1枚で1万円の原稿料が出る時代がありました。

国のために働くのだから、安いのは当たり前、こんな常識はもう通用しないと思いますし、これが、例えばシステム導入に当たって異常な価格で落札し、以降の運用で儲けるという異様な競争状況を作り出した所以かもしれませんし、一方でせっかく予算を設けても、有効な活用方法がなく、本来対象国の具体的な事業に活用すべき予算が、効果のない分野に使われている、ということのように思えます。

民間だって変なプライドがある

ただ、重要なのは、このような事態は行政固有ではないということです。確かに、行政マンが国民の税金を使い、それで生活しながら、このようなお粗末な状態というのは、どうかと思いますが、民間だって同じなのです。

同じように、調達コストの削減を提案すると、まず一流企業は「我々は完ぺきにやっているので必要ない」という回答をしてきます。本当でしょうか?自分たちは一流だから間違いなどあるはずがない、そのこと自体がものすごい思い上がりだと思います。

確かに一流企業は、納入する側も最初から相当努力した価格で持ち込みます。加えて、当然いくつかのサプライヤーから相見積もりを取り対応するので、相応に安価な調達は出来ているはずです。でも、本気で下げる努力をしているか、例えば日本中の同じ製品の納入業者を当たっているかと言えば、答えはNOです。

ここはもちろんそのような作業を行うコストと効果の比較になりますが、この手間も含めて削減をしましょうという話に否定的なのは何故か?一つはプライド、それから自己保身です。もし仮に実際にこのサービスを導入してコストが下がったら「今まで何していたんだ」ということになるのは自明の理ですから。

更に、怠惰もあります。例えばあるコストが50%下がったとします。担当者は「これをこれから5年に分けて徐々に下げてほしい」と要求するのです。そうすれば毎年課される削減努力を、各年努力なしに達成できるからです。

行政にしても、民間にしても、無駄なコストを回避することが重要なのは同じです。そしてそれぞれのプロとしてこの努力を行うことは当然だと思います。行政は、国民の税金で、国民にサービスを提供しているわけですから、税金の無駄遣いを避けながら、最大のサービスを提供する義務があります。

民間であれば、そもそも株主のために収益を最大にする義務があり、そのためにコストを削減するのは当然ですし、一方で重要なステイクホルダーである顧客・消費者に対してもコストを削減することは結果として価格を下げる余地を作り出すので、重要です。

要は、行政であろうと民間であろうと、基本的な行動原理は共通のものがあるはずで、そのことがいつのまにか国民のほぼ全員の頭から消えてしまったことが問題なのではないでしょうか?あまりに個別の枝葉末節だけを追い求めた結果、皆が「自分は弱者だから自分を守り、他者に対して責任を追及する」スタンスに陥っているのでは ないでしょうか?

政治の世界も騙されないように

民主党の参議院選挙の公約がちょうど新聞に載っていました。成長戦略で、環境分野、医療滞在ビザ、アジアインフラ、地域観光、NPO、金融総合取引所などが記載され、一方で法人税の引き下げ、財政健全化、子供手当の削減、農業個別保障などが示されているようです。

しかし、相変わらず個々のアイデアの集積体で、一体どのような国にしたいのか、イメージがつかめません。民主党の失敗は、再三申し上げているように残念ながら経験が少ない人たちが、バラバラに、困っていると主張する有権者の声に単純に応えようとして、全体の絵なく政策を作ってきたことであり、そろそろこのことに気付いてきちんとした国の方向性の案を示して欲しいと思います。今度の参議院選挙の政策面の課題については、来週土曜日このブログでちょっと議論してみたいと考えています。

 

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