オルタナティブ・ブログ > マイク丹治の「グローバル・アイ」 >

 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

人口3億人計画

»

意味不明の産業ビジョン

この間経済産業省が産業ビジョンなるものを発表していましたが、相変わらず総花的で、何がしたいのかよく分かりません。

横断的な施策というところがあって、外資優遇とか、インフラ整備でアジアのハブにとか、法人税率ほかの事業コストの削減をするとか、企業の再編を支援して収益力を高めるとか、指摘されていました。確かに、わが国は法人税率も高いですし、輸送のための高速道路が高いとか、港湾の利用料が高いとか、それから行政の手続きが面倒だとか、いろいろと事業を行っていく上での障害があるのは事実です。

だから、そういうところを改めて、わが国企業が競争力を高めることが出来るとともに、海外企業がわが国へもっと進出できるように、整備を行うというのは正しいと思います。でも、こんなことはずいぶん前から言われてきたことで、何を今さらと感じるのは私だけでしょうか?

問題は、このようなインフラなどにあるのではなく、そもそも1億2千万のわが国はこれから人口が減少し、高齢化する中で、国内需要も大きな伸びは見込めず、そもそも市場としても現在急成長途上の国と比較して、魅力がなくなってきているということではないでしょうか?

そして、これまでわが国の成長を支えてきた製造業も、既に相当な部分で今や技術水準からいっても世界最高峰とは言えなくなってしまっているからではないでしょうか?そしてそれに加えて、制度的な点もさることながら、日本人が政治も、政府も、企業も、社会も、自信を失い、一方で守りに入ってリスクも取らず、相変わらず外へ向けては頑なな対応をしているからではないでしょうか?

抱腹絶倒の成長産業

世界的な金融収縮構造の中で、産業に資金を回すため、成長分野への融資に回る資金には日銀が低利で金融機関に資金を融通するという政策があるようです。そしてこれが中小企業支援策にもなっているように報道されていますが、では一体成長分野とは何なのでしょうか?

先に述べた産業ビジョンでは、インフラ分野、社会保障分野、文化、次世代エネルギー、ロボットなどの先端技術だそうです。でも、これらの分野が成長分野として、これに直接かかわっている中小企業がどれだけあるのでしょうか?インフラなどは、大規模ですから大企業の専門分野です。社会保障は、器材などで一部中小企業が活躍できる分野があるかもしれませんが、介護や医療は相当程度の規模が不可欠です。文化、例えばアニメなどは確かに必ずしも大企業でなくとも関与できるかもしれませんが、一方で想定されている海外でも評価される分野となると、これは大作家でないと無理という世界になります。エネルギーやロボットもやはり最先端の技術が必要ですから、なかなか中小企業には厳しいところです。

ということで、この金融政策はやっぱり大企業優遇になってしまいます。そして、だとすればもちろん研究開発などについて相応の資金支援などは必要でしょうが、必要以上にこれらの分野の発展のために政府が支援すべきかどうかは疑問でもあります。

ましてや、これらの産業が選ばれた理由の一部は、この分野はわが国が世界に比して進んでいるという誤解に基づくものだとすれば、何をかいわんやです。インフラで例えばクラウドコンピューティングの話が出ていますが、総務省が提唱している国家レベルのデータセンターの規模は500億円だそうです。グーグルが1兆円を超える投資をこの分野で行っていることからすれば、全くナンセンスですし、そもそも今さらこの分野でわが国が世界をリードできるとも思えません。

社会保障は、確かにこれから急速な高齢化を迎えるので、様々な工夫が必要になるでしょう。でも、北欧と比べて得意などと言えるとは思えませんし、文化はもっと積極的に推進すべきだと思いますが、これは資金をかけてどうなるという代物ではないはずです。既に相応に海外で評価を受けており、これを広げてゆく努力をすれば良いだけです。エネルギー分野も既に大きく取り残されてしまっています。ロボットなどの先端分野は私は技術の専門家ではないのでよくわかりませんが、多少は戦えるところはあるのかもしれません。でも、一方で日本が強いと誤解している環境技術も、もう相当遅れているはずです。

つまり、そもそもわが国の産業の強みについて、相当誤解があると思えますし、加えてこれをどう伸ばしていくのかという実効性のある具体策が見えない、ましてや現実の経済を支える中小企業が元気になる方策が欠けている、というのが正直な感想です。

リークァンユー

たまたま昨晩旧知の友と飲んでいて、ここまで書いたような話を酒の勢いでまくし立てていたら、彼が面白いことを教えてくれました。また聞きのようですが、急速な成長を遂げ引き続き元気があるシンガポールは、ご案内の通りリークァンユー氏がずっとその中心にいるわけですが、その国としての明確な目標は、現在の人口500万人を次には600万人にすることだそうです。

このことを例にとって、わが友人が言ったのは、「そもそも高齢化して人口が減っていくという前提で話すから、経済成長もないし、年金ももらえないし、明るいことがない社会になるのだから、思い切って人口を50年後には3億人にする目標を立てれば良いのではないか?」

BRICSより人口増が見込めれば、海外から投資も出てくるでしょうし、人もどんどん来る。つまり魅力ある国になるというのです。そして、これを達成するためには、日本人だけがどんどん生むだけでは間に合わないので、海外からの流入が必要になり、治安の問題も出てくるが、だからダメと言わずに、何とか解決すれば良い。そもそも最近は日本人だって結構恐ろしい犯罪を犯すようになっているから、あまり差はない、とのことでした。

ローマクラブの成長の限界を念頭に置けば、わが国がどんどん人口を伸ばせば、世界中の人口増がなかなか止まらないという事態につながっていくような気もして、人類存続の観点からは、更に慎重に考えるべきところがあると思いますが、でも確かに人口を増やせば経済は立ち直りますし、先行きも明るくなります。そして、世界で増え続けている途上国の人口爆発の受け皿になるとすれば、先に述べた問題も多少は解消するかもしれません。とすれば、これは決して悪い話ではない。総花的に、細かい政策を長い時間をかけて議論しているより、ずっと明確で効果ある施策だと思った次第です。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する