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ハーバードビジネススクールの日本スタッフとして働く中で、気づいたこと、感じたこと、考えたことを、ゆるゆるとつづります。

日本発のケースを集めた本が出版されました:「ケース・スタディ 日本企業事例集」

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HBS_casestudy_Japan.jpgこのたび、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)日本リサーチ・センターがこれまで作成に携わった日本発のケースをまとめた本「ケース・スタディ:日本企業事例集」がダイヤモンド社より出版された。

構想から約3年。もともとはハーバード・ビジネス・スクール出版会の日本の代理店をやっている、そして日本語版ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)を出しているダイヤモンド社のHBS担当部門の方々と相談して、2008年4月のHBS100周年記念にあわせて出版しようという話になった。でも様々な事情により、ずるずると延期され、もうこの本は企画倒れになってしまうのかなあ、とあきらめたことも。何とか出版までたどり着けて、うれしい限り。驚くほどの少人数で月刊のHBRからHBS関連の翻訳本まで手がけているダイヤモンドのHBSチームのみなさまに感謝!

 

以下の10本のケースが翻訳され収録されている。

1.松下電器産業:危機と変革
2.日産自動車:再生への挑戦
3.富士フイルム:第2の創業
4.資生堂:中国市場への参入
5.コマツ:グローバル化の取り組み
6.NTTドコモ:モバイルFeliCa
7.楽天:Eコマース事業の創造
8.旭硝子:EVAの導入
9.プロダクション・アイジー:アニメというビジネス
10.日本の起業家:稲盛和夫

 

このうち私が書いたケースは10章「日本の起業家:稲盛和夫」一本だけだけど、2010年の年明けあたりから出版に向けて本格的に動き始めてからは、かなり時間と心を割いて出版を手伝った。 

まずは翻訳・校正の段階で出てきた膨大な質問への対応。実はもとのケースが間違っていた、みたいなことまで含めて、ぼろぼろとあらが出てきて、それを一つ一つ、原典までさかのぼってチェック。

それをしているうちに、日本語変換時に意味合いが異なってきてしまっているものがあるような気配を感じ、出版社から頼まれていたわけではなかったけど、もう一度原文を読み、そして日本語読む、という作業に突入。これはえらく時間がかかった。

そして、各社にコンタクト。ケースを作成する場合は、ケースそのものだけではなく、翻訳や本という形で再出版するというところまで含めてHBSが著作権を持つ、という許可書に会社からサインをいただいているので、法律上は会社に確認せずに出版してしまっても別にかまわない。でも、これまでのそしてこれからの会社との関係を尊重して、一応すべての会社に事前に了承をとることにした。

もうすでにケースとして出版しているものだし、会社にとっても悪い話でないし、というかむしろ宣伝になるから会社にとってはいいく話だろうから、どこも簡単に「はい、いいですよー」と言ってくれるかと思いきや。うーん、現実はそんな甘くありません。いろいろありました。あやうく収録できなくなりそうな事態も発生。

こういうところへの対応一つとっても、会社の個性がよく出ていた気がする。一番違いがあるなあ、と思ったのは、ケース作成の当時は取り組んでいたけれど、数年後の今はもうやっていない、ということに対して。

「もうやっていないから(つまりやってみてうまくいかないことが後にわかったから)記述を消去してほしい」といってくる会社もあれば、「別にそのままでいいですよ」と鷹揚な会社もあった。どちらかというと前者の会社の方が多く、その要望に従って直しを入れていると、ふと「ああ、こうやって歴史は、消去するという行為を通じて、少しずつ書き換えられていくんだな」と思ったりもした。

会社側からの修正を反映し、あがってきた校正原稿を読み...というのを何度も繰り返す。地道な作業だった。だから本になって本当にうれしい。万歳!

 

このプロセスでこれらのケースを何度も読み返すことになったわけだけど、今更ながら、ケースっておもしろいな、と思った。内容が濃い。詰まっている。そもそもの企画が3年以上前だったこともあり、今回収録されたケースは2002年~2007年の間に作られたもの。だからケース自体はちょっと昔のことを扱っていて、会社の状況も市場環境も当時と比較して変わっているところも多いが、本質の部分は全く古い感じがない。HBSでも時折、1986年、とか、時には1960年代のケースが教えられていたりするが、さもありなん、だ。時代が変わって、変わるものもあれば、変わらないものもある。

 

書店でみかけたら手にとってみていただけたらうれしいです。

次の2回のエントリーで簡単に各ケースのことを紹介します。

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