クラウドは大企業に役立つのか? - Clearing the air on cloud computingの反響
著名なコンサルティング会社であるマッキンゼー (McKinsey & Company)が、"Clearing the air on cloud computing"というレポートを公開しています。すでにオルタナでも、中さんが内容について紹介されています。要点だけをまとめると、Cloud Computingは中小企業にとっては恩恵が大きいが、大規模なデータセンターを保有しているような大企業にとっては、クラウドはコストメリットに欠けるというものです(1ヶ月当たりの1 CPU使用がEC2では366ドルに対し、企業の大規模データセンターでの同等のコストは150ドルに過ぎないとの試算)。
現在少々過熱気味のクラウドコンピューティングに対し、客観的な数字を元にしながら、何がユーザにとって有効かを論じたレポートとして、よくまとまっていると思います。
このレポートはForbesやNew York Timesでも取り上げられ、大きな反響を呼んでいます。
また、すかさず反論したのが、"IT doesn't Matter" (日本語版は「もはやITに戦略的価値はない」)の著作で有名なNicholas Carrです。彼のブログRough Type (日本語訳あり)では、大企業がデータセンターで行っている処理の大部分をクラウドに移行するシナリオはそもそも考えにくく、需要の変動が大きな処理を主な対象とするなら、レポートのコストモデルと異なる可能性があることや、ライセンスや維持費も考慮すべきでだとコメントしています。
前回ご紹介したCloud Computing Interoperablity Forum (CCIF)の代表を務めるReuven Chohenは、EC2で実現されているErasticity 、すなわち、時間単位でサーバインスタンスを活性化したり不活動状態(この場合課金されません)することができる柔軟性をもっと考慮に入れるべきでは、とコメントしています。
ZDNetの記事によれば、IBMは、大企業がデータセンターの処理のすべてをEC2はどのパブリッククラウドに移行するのではなく、プライベートクラウドとの組み合わせでコストを下げていくことができるとコメントしています。
また、TechCrunchの記事は、クラウドコンピューティングにおけるイノベーションとコスト軽減のスピードは侮れないとの主張です。
それぞれの主張にはそれぞれ一理あると思うのですが、客観的な数字を使って、クラウドのコストモデルや長所、短所を議論していくのは大変素晴らしいことですね。