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アジャイルや機械学習、リーンシックスシグマなど、日々の仕事の中で見て聞いて感じた事を書き留めています。

バブル世代の憂鬱

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近頃ニュースサイトなどを見ていると、大企業が行っているというバブル世代をターゲットにした希望退職の記事が否応なしに目に留まようになりました。希望退職による企業の人員削減は昔から行われているので、それ自体は別に珍しいものではないのですが、最近のものは特にバブル世代をターゲットにしているということなので、バブル世代の僕にとってはとても他人事には思えないのです。

年齢を基準にした希望退職や役職定年、はたまた追い出し部屋などは、陰湿な"いじめ"としか僕には思えません。その対象になった人達が決して悪いのではなく、むしろその人達は年功序列や年功賃金、解雇しにくい法制度、人材の流動化を阻む様々な雇用慣行の犠牲者なのではないかと僕は思うのです。

日本の属人主義

よく日本の雇用制度は属人主義だと言われます。まず人を雇ってから、次に仕事を与えるので、きっとその様に言われるのでしょう。社員を採用する場合でも、まず人事部が採用の面接をして、それから配属先で仕事が与えられる様子を見れば、確かに属人主義だと言えるのかもしれません。

属人主義の場合、もし今の仕事が無くなってしまっても、次の仕事が与えられるまでは、その人は会社に残ることになります。たまたま次の仕事がその人の待遇に相応しいものならば良いのですが、それ以下の場合であったり、適性の合わないものであったり、または仕事そのものが無かったりした場合は、その人は希望退職や役職定年の対象になってしまうのでしょう。そしてそれを拒めば追い出し部屋に異動させられるというのですから、同じバブル世代としてそのような記事を読むと、なんとも憂鬱な気持ちになります。

欧米の職務主義

日系企業の属人主義とは対照的に、欧米企業の雇用制度は職務主義と言われます。仕事(職務)がまずあり、次にその仕事を片付けるために人が雇われるので、きっとその様に言われるのでしょう。社員を採用する場合でも、まず実際に働く(仕事がある)部署でチームメンバーが採用の面接をして採用/非採用を決めます。人事部は事務手続きだけをするだけなので、確かに欧米企業は職務主義だと言えるのかもしれません。

職務主義なので、欧米企業(特に米系は。欧州系は少し違う)では仕事が無くなれば、即レイオフです。実に簡単であっさりしたものです。後腐れがありません。映画などで観たことがあるのではないかと思いますが、ある日突然上司から「30分以内に私物をまとめ、人事部に行って手続きを済ませるように」と言われる、あれです。

希望退職とレイオフ、どちらが良いのかと聞かれれば、僕はレイオフの方が良いです。レイオフはその理由がはっきりしているし、陰湿なところがあまりないからです。それから日系企業のように年齢で切られるということはまずないので、自分がバブル世代だということを憂う必要がないからです。

レイオフのパターン

これまで30年近く米系企業に勤めて、いくつものレイオフを見てきました。その中で多くの同僚や上司をレイオフで失いました。見たくも聞きたくもないレイオフですか、レイオフのたびに生き残った同僚と「なんでレイオフなの??」と情報交換しているうちに、レイオフにはいくつかのパターンがあることが分かりました。

パターン1: プロジェクトが無くなる場合

プロジェクトが進行中であっても、予算を使い切ってしまったり(追加予算なし)、そのプロジェクトが予想する将来の利益率が市場環境の変化から見直しを迫られて社内基準に達しないと判断された時、そのプロジェクトが突然打ち切られることがあります。その場合、プロジェクトに携わっていた人達がレイオフされます。その人達の優秀さとか実力、年齢に関わりなく、全員レイオフされます。「運の悪いプロジェクトに当たってしまったな」と割り切るほかに仕方がありません。

パターン2: 組織変更で部署が無くなる場合

組織の再構成(リストラクチャリング)のために、ある部署が統廃合で無くなったりすると、その無くなった部署にいた人達は優秀さとか実力、年齢に関わりなく、全員レイオフされます。これも同じく「運の悪い部署に配属されてしまったな」と割り切るほかに仕方がありません。

パターン3: 新しい上級管理職が外部からやってきた場合

米系企業は年功序列ではないため、上級管理職が外部から突然やってくることがあります。外部からやってきた上級管理職は自分の存在をアピールして手柄を上げるために、新しい組織や新しい管理手法などを導入しがちです。その時レイオフの対象となるのが古い体質を持った中間管理職(人の管理職)やモノの管理職(プロジェクト・マネジャーなど)です。

この場合、エンジニアは割と安全です。

パターン4: 一律コストダウンの場合

「四半期の利益を確保するために、各部署で一律5%の人件費をカットする」ということがあります(実際にリーマンショックの後は何度もありました)。この場合、モノの管理職や、置き換えの効く初級エンジニアがレイオフの対象になることが多いようです。中間管理職(人の管理職)や上級エンジニアも対象になることがたまにあります。

レイオフされにくいスイートスポット

一方これまでレイオフされなかった人達には、ある共通事項がありました。

  • 製品開発部など価値を生み出す部署に所属し、
  • 主流のプロジェクト(製品)を担当し、
  • 中級エンジニアで
  • 貴重な得意分野を持っている

企業にとっては、これらスイートスポットにいる人達は「年棒がそれほど高いわけではないが利益を生んでくれる貴重な存在であり、かつ置き換えが難しい」ということでしょうか。確率から言って、このスイートスポットにいる人達はどのようなパターンであっても、レイオフされる心配は少ないようです。

先日異動があり、残念なことに僕はこのスイートスポットから外れてしまいました。つまり今後はレイオフされる確率が高くなったわけです。もしレイオフされれば、バブル世代という年齢もあり、今後の人生設計にも大きく響いてくることでしょう。

状況の違いはあるにせよ、バブル世代をターゲットにした希望退職の記事はとても他人事には思えず、バブル世代の憂鬱が今後も続きそうです。

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