サーバシステムを販売する難しさ
昨日、製品開発販売に関する話題を書きましたが、私が行っているソフトウェア製品では、販売する視点から見て二種類、製品の種類があると感じています。
決まった言葉がないというか思いつかないのですが、サーバシステムとスポットシステムとでも言う感じでしょうか。要するに、サーバとしてあるサービスをし続けなければならないタイプのシステムと、使うときだけ使えれば良いというシステムです。当社のシステムで言うと、ProDHCPやIntraGuardianシリーズなどはサーバシステムで、Ethdelayなどはスポットシステムです。DHCPサーバや不正接続検知/排除システムは常に確実に動いている必要がありますが、回線遅延シミュレータは使うときだけでよいのです。
この違いは販売する立場になったときに大きな違いがあります。極論してしまえば、スポットシステムは、万が一不具合などで止まってしまってもそれほど影響は大きくないのですが、サーバシステムは止まってしまっては非常に困りますし、動きが変でも困るのです。特にProDHCPは「大規模向けDHCPサーバ」とアピールしていますので、使われるのは、商用サービスがほとんどです。不具合は非常に困りますし、もっと困るのは、当社が事業から撤退してしまうことなどでしょう。IntraGuardianシリーズのように情報セキュリティ対策システムも同様に、不具合や検知漏れは困るのです。買う側の立場で考えれば、スポットシステムは比較的気軽に選択できますが、サーバシステムは慎重に選ぶことになります。
当社のような中小企業がサーバシステムのような、品質やサポートが重要なシステムを販売すると、まずお客さんに聞かれるのが「サポート体制」「社歴」「実績」です。製品自体と会社に関して聞かれます。直接エンドユーザさんの場合でも、SIerさんの場合でも同じです。実績のない中小企業の製品を選んで、何か問題が発生したら、選んだ担当者やその上司が責任を問われてしまいます。当然リスクをできるだけ避けたいので、できれば有名な実績のある製品を選びたくなるものです。
しかし、それを乗り越えなければ、サーバシステム製品の開発販売はできないのです。当社は幸いなことに会長が創業してからすでに34年目を向かえており、会社としての実績は中小企業としては良い方でしょう。それ以外の点をどのように工夫しているかというところをざっと紹介してみましょう。
・製品の実績
まず、できるだけ大きな現場で使ってもらうことを目指します。大手さんと共同開発のような感じで、情報を共有しながら開発を進めたり、その製品の分野で販売実績のあるベンダーさんにOEM供給するなど、とにかくある程度名の通った会社やサービスで使ってもらうようにします。実際は使ってもらっても公開できないことも多いのですが、それでも、どのくらいの規模で何年くらい使っているかなど、嘘ではなく本当のことを言えるようになりますし、何より自分たち自身が自信を持てます。
・サポート
さすがに24時間365日対応などを自社でサポートするのはコストの面などから現実的ではありませんから、そのようなサポートを行っている会社さんと手を組んで提案することもあります。ソースを別途契約して提供することで安心してもらうケースもあります。しかし、何よりも大切なことは、本当に製品が安心できるものであることです。自社開発の製品の場合、安定稼働のためにどのような工夫をしているのかなど、自分自身でわかっているのは当然ですから、そこをしっかり説明することも大切です。例えば、ProDHCPの場合、あえてマルチスレッドではなく、シングルスレッドで開発しました。排他処理でデッドロックしてしまう心配を排除するのと、性能的にもDHCPの場合、不利ではないこと、さらに、プロトタイプ開発の時間的猶予がほとんどなかったため、十分なテストなしでも少なくとも稼働し続けるためには、シンプルな作りが何よりも大切と考えたためです。そのように説明し、さらに、実際の運用実績でも止まっていません、と説明できればかなり安心できるものです。
また、書面上は業務時間のみの対応、と書くのですが(嘘は書けませんから)、実際はベストエフォートで対応してきています。例えば、私やメンバーたちの多くは、会社にいなくても、かなりの確立で携帯電話を使うなどしてサポート宛のメールを見ていますし、自宅など社外でもかなりの対応ができるように、VPNの準備や開発環境を持ち歩くなどしています。私自身は休みを取って家族旅行に行く際でも、必ずMacBookAirを持ち歩き、自分が関係している製品のサポートはほぼ完全にできる状態を心がけています。メンバーたちの多くもそのような対応をしてくれています。
会社としては、深夜や休日にも対応しろ、と指示することはしていません。それでもメンバーたちの多くがそのような対応をしてくれているのは、昨日書いたように、自分が主体の事業だ、と感じながらやっているからでしょう。その姿勢はお客さんにもきちんと評価していただけますし、リピートにもつながっています。
中小企業の製品開発販売には、このような難しい点もあり、だからこそ、メンバー一人一人が自主的に取り組んでくれることが大切で、そのようなメンバーたちに支えられて当社の製品開発販売事業は成立しているのです。リーダーとして、そのようなメンバーたちに巡り会えたことに心から感謝せねばなりませんし、彼らの行動が実を結ぶようにがんばらねばなりません!