事業計画と自転車操業
今日は先日から「責任者会議」を変更して「会社の未来を考える会」のミーティングでした。前回ブログで書いた内容はこのあたりです。発言する人に偏りはやっぱりあるものの、活発に議論が飛び交うようになりましたし、少なくとも会社の、あるいは事業の将来を考えたいという人たちの意識合わせができるということは、とても良いことだと考えています。
さて、ちょうど年度末ということもあり、議題の一つに「事業計画」がありますが、ここで根本的な指摘をしてくれた人がいました。もちろんその人は悪気があって突っ込んでいるのではなく、問題提起という意味なのですが、
「ビジョンとか戦略とか議論する以前に、今の会社の状況は、目の前の案件をどうするか、ということの方が重要なのではないか?たとえば5千万円の仕事が入るかどうかで、業績としてひっくり返るくらいじゃないの?立派な目標を立てて満足してしまって、頭でっかちになるのでは?」
という指摘です。
私はもちろん答えをはじめから持っていましたが、このミーティングは経営者対社員という形式ではありませんので、皆に議論してもらいました。
・目先の案件ももちろん大切だけど、それをどう獲得するかという行動の背景にも、全体の方向性とかがないと動けないのではないか?
・目先の仕事だけしか考えていないと、今を乗り越えられてもその先がわからない
こんな感じで、細かい話も必要だけど、方向性は共通認識としてしっかりしていないと駄目だ、という意見が出ました。要するに今が良ければ、という考えだと自転車操業になってしまうと、ちゃんと理解しているということです。同時に、目標といっても具体性や実現可能性は必要だという意見もありました。
目標を立てろと言われたから立てたような内容であれば、議論する時間だけ無駄かも知れません。しかし、このミーティングは、「自ら会社・事業の将来を議論したいと思っている人」が集まっている場ですから、そういう人たちの意識合わせをすることはとても重要だと考えています。今のつじつま合わせももちろん大切なのですが、同じくらい先に向けての動きも大切です。ここで重要なのは、つじつま合わせは指示すれば誰でもこなせるかも知れませんが、先に向けての動きは、「何とかしたい」と思っているメンバーが集まらなければできないことです。参加メンバーの意識レベルが低ければ、事業計画などの議論はただの無駄な時間になるでしょう。
頭でっかちの側面も、悪い面だけではありません。たとえば、今日は事業の分析をするためには、3C,4P,5Forceの考え方がわかりやすいということを簡単に紹介しました。そんなことを知らなくても目先の案件を何とかすることはできるかも知れませんが、じっくり事業計画を議論したりするとき、あるいは、お客さんと業界の話などになると、こういう単語も、熟知していないでも聞いたことがあるかないかでは、大きな違いになるはずです。目の前の仕事だけ片付けられれば良いというものではありません。大げさかも知れませんが、お客さんとのコミュニケーションを通じて、一人のビジネスマンとしてのレベルを見られるのです。そしてそれを通じて会社のレベルも想像されてしまうのです。
経営にはいろいろな考え方があります。その時点で使える人を集めて、用が済んだら入れ替えて、というやり方もあります。しかし、私はそういう経営ではなく、会社と共に社員も成長していくような経営をしたいと考えています。そのためには意欲あるメンバーにはどんどん議論に参加してもらい、幅広い知識も学んで欲しいと考えています。さすがに全社員がそうなれるかどうかといわれれば疑問もありますが、少なくともそういう考えの社員が実際に出てきているというのは、当社のこれからの大きな強みになるはずです。
当社はすでに33年続いていますが、事業も世の中も常に変化していますから、どんな事業でも必ず変化が必要です。自転車操業ではなく、自分たちの意志で道を切り開いていきたいものです。