WIDEプロジェクト
今日はWIDEプロジェクトの報告会・懇親会に参加してきました。WIDEプロジェクトはIT、特にネットワーク関連に詳しい方でしたらご存じだと思いますが、日本のインターネットの生みの親とも言える慶応の村井先生を中心とした技術集団で、現在約800名の研究員が活躍しているのですが、私の会社からも3名研究員として参加してきました。
WIDEは産学連携プロジェクトで、参加の形態としては研究員としての参加と、スポンサーとしての参加があります。企業として参加する場合は基本的にスポンサーになる感じになりますが、さらに研究員を兼ねることももちろん可能です。研究員の多くは大学生・大学院生で、卒業後も大学の先生として、あるいは企業の研究所からの参加という人がほとんどではないかと思います。
そんな中で、私の会社のように、小さい会社で、しかも学生時代にWIDEと関係していなかったメンバーしかいないのに参加しているというのはかなり特殊なケースでしょう。
WIDEに参加して1年半くらいなのですが、来年度以降、参加は厳しいということを事前にWIDE幹部の方に相談してました。スポンサーとしての費用(大手さんに比べると安くしていただいてましたが)が厳しいということもあるのですが、それよりむしろ、メンバーが製品開発販売関連で多忙になってしまったこと、さらに、我々がやっているような、ソフトウェア開発自体やプログラミング自体があまりWIDEでは盛り上がらないという点がポイントでした。
WIDEの研究の多くはネットワークのルーティング(経路制御)や、ネットワークを使った先端的な取り組みが多く、我々中小企業の開発チームがやっているような、小規模で隙間的なシステムはあまり興味を持ってもらえず、しかも学生たちにとって重要な「論文になるか」という面でまず適さないテーマということがあります。
もちろん産学連携ですから、事業的に興味深い取り組みも多くありますが、どちらかというと中小企業には手を出しにくい内容が多い感じです。
そんな感じで、今日の報告会は、お世話になった皆さんにきちんとご挨拶を、と思って参加したのですが、「この不景気で、スポンサー行為が大変な企業も多い中、金の切れ目が縁の切れ目、ということにならないように、せっかくのつながりを大切にしたい。」というような村井先生のスピーチがあり、さらに懇親会では直接お世話になっている方々からも、スポンサーが無理でも関係は継続したい、と、ありがたいお声をかけていただきました。
なかでも、砂原先生から「せっかくitojunが残してくれた絆を失いたくない」と言われたときにはかなり反省してしまいました。
我々のような小さい会社で、メンバーも学生時代からWIDEと関係を持っていなかったにもかかわらず、WIDEにお誘いいただいたのは、故itojunこと萩野純一郎さんのおかげなのです。萩野さんが私の著書「プログラミングでメシが食えるか!?」を読んでくれ、すぐにメールをいただき、会いましょうということで話が盛り上がり、私の会社の仕事ぶりやメンバーのお話をしたところ、「そんなに面白い人たちがいるならWIDEに入って!」と誘っていただいたのです。
メンバーももちろん喜び、WIDEの研究会・合宿に参加し、積極的にプレゼンなども行いました。しかし、いまひとつ前述したように志向が合わなかった気がするのと、本業が忙しくなってしまったことにより、今年度はどんどん参加の機会が減ってしまいました。
私が悪かった面も反省していて、私はメンバーに対して、せっかくWIDEというレベルが高い集まりに参加できるのだからと、メンバー任せで発表などをやらせていたのですが、言い方を変えれば「プレゼンの練習の場」的なやり方になってしまっていたのだと思います。
萩野さんが、あるいはWIDEが我々に求めていたのは、中途半端な研究ではなく、ビジネスでの開発現場を知っているという経験を活かした、WIDE内でのかき混ぜのようなものだったのだと思います。
私の目から見たWIDEは、単なる学生の卒論・修論練習の場と、ある程度上になった先生方・研究所の方々が、若手にあれこれ刺激を与える場、というような印象が強かったのです。一言で言えば「指導する側とされる側」という感じでした。さらに、とりあえず参加して面白いことがあれば聞いておこう、という感じの方も多かった感じです。批評家的な発言も多かった気もします。実際は違うのかも知れませんが。
以前のWIDEはもっと活気があった、という発言もよく聞きました。
プログラミングを楽しんでいる我々メンバーが参加することによって、論文ばかり考えている若手に刺激を与えたりできるのではないかという役割があったはずです。
私なりに著書でIPv6のプログラミングを説明したり、ブログなどでIPv6の紹介をしたりしましたが、なかなか非力な私では影響を与えるほどのことはできませんし、他のメンバーも仕事で忙しくなってしまい、WIDEへの貢献もどうすればいいのかと悩んでいたのですが、今日WIDEの皆さんとお話しして少し目が冷めてきたかも知れません。
私・我々メンバーが日頃やっているようなことで貢献するのが、自然に続けられることだと思います。まあ、それが役に立つかどうかは分かりませんが、中途半端な状態でWIDEから離れてしまうことは思いとどまろうと思ったのでした。
自分の頭の整理をブログで書いてどうするのだ、という感じもしますが、今日は懇親会で多少ブロガー名刺を配りましたし、メンバーにも読んでもらいたいということと、コミュニティ参加の心がけみたいな、反面教師的な意味もなるかな、と書いてみました。また、WIDEの皆さんがこういうブログへのコメントでも書いて、ビジネス寄りと技術寄りのコミュニケーションのきっかけになればもっと楽しいだろうと思って書きました。
いずれにしても、背伸びして無理して参加していてもなかなか続けるのが難しくなるものです。自分たちが一番自然な状態で参加することがやっぱりとても大切ですね。