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年明け早々,バイラルした「いい話」と「酷い話」

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年明け早々,いろいろな話題がネット上をバイラルしました.

■その1 まるで残飯のようなおせち料理
初日の出を待ちつつネット上のニュースをチェックしていたら「まるで残飯のようなおせち料理」の写真が目に飛び込んできました.衝撃的なその様子に,思わずツイートしたところ,たちどころに20件を超えるリツイート(非公式リツイート)がなされました.このとき既に,2chやTwitterでは結構な話題になっていました.

発端は大晦日.購入者が届いたおせち料理の写真を「食べログ」に苦情と共に投稿したことから始まります.
すぐさま,販売元の社長がTwitterと自身が運営するブログに謝罪コメントを掲載.しかし,1月1日にはTwitterのツイートと共に過去にポストしたブログも削除されています.
ブログは1月2日に投稿されたお詫びの記事のみになりました.以降,投稿はありません.
Twitterには,ブログやTwitterの過去履歴を削除したことを報告とともに.第三者が運営する掲示板で質問を募り,その回答を1月4日以降に掲示する旨を宣言しています.が,「誰かに口止めをされた」ことを理由に方針転換,回答保留の状態となっています.
発端となった食べログでは該当するコメントだけでなく,店舗ページ自体が参照できない状況になりました.
しかし削除されたコメントも,多くの記事に転用されたり魚拓サイトで今でも確認することができます.

販売元の会社は1日のうちに全額返金を,翌2日には社長が辞任することを発表しました,しかし鎮火することなく,3日には大手新聞やニュースサイトでも大きく報じられることになりました.今やテレビニュースでも取り上げられ,消費者行政担当相もコメントする事態に発展しました.話題も,食材の品質や調理の際の衛生管理に対する疑問,社長の過去の発言との対比等に拡大しました.更に販売企業の問題に留まらず,共同して販売したグルーポンへの批判,擁護と取られる発言をした人々への反発等,新たな「燃料」を得ながら拡散していました.

相当に呆れる事件ですが,それぞれの企業や個人の対応と,それに対する読者の反応には教訓になります.

けして悪いニュースだけで年が開けたのではありません.心温まるバイラルも紹介したいと思います.

■その2 北海道神宮の絵馬

北海道神宮にかけられた絵馬です.
Photo_ema

上・下・左・右それぞれの絵馬には

 「真ん中」の奴が合格しますように

と,書かれています.それぞれ異なる筆跡で書かれた5枚の絵馬は「真ん中の奴」を友人みんなで応援している図です.
友人たちの暖かい心配りが感動を与え,多くの人に伝播しました.topsyでみると約1万件ものツイートがされています.

Topsy_ema

ネガティブなコメントは皆無.全く関係ない大勢の人が「真ん中の人」の合格を祈ってくれています.

■その3 ポプラ(コンビニエンスストア)ドライバーの素晴らしい行動
年を跨いで,鳥取県大山町では大雪に見舞われました.国道9号線は麻痺状態.立ち往生となった2000人が車中で新年を迎えることとなりました.巻き込まれた被害者でもある「ポプラ(コンビニエンスストア)のドライバー」は,積荷のおにぎりをほかの被害者に配って回ったのです.感謝した被害者の一人が以下のツイートを発しました.

Twitter_popla

これを取り上げた記事は2800件以上リツイートされています.

Topsy_popla

おにぎりは空腹を満たしただけでなく,極寒の車中に心の温もりも,もたらしてくれたことでしょう.

「ポプラ大好き」「ええ話や」「惚れた」

といった極めて好意的なコメントが寄せられています.折しも平成22年11月に,ポプラは鳥取市と「災害時における物資供給及び防災活動への協力に関する協定」を締結してもいます.行動はドライバーの独断ではなく,会社に確認をとっての行動だと思われます.協定を口上だけでなく,実践したことにもなります.ポプラの評判も相当に高まったことでしょう.

「おせち」の件は、販売元企業の思慮の足りない行動が火種です.食べログという人気の高いサイトとインパクトのある(読者に共感を得やすい)写真が触媒となり,2ちゃんねる,Twitterに「酷さ」を増幅し,さらにまマスメディアを巻き込み大規模な炎上事件に発展してしまいました.勿論、ソーシャルメディアが今ほど普及していなければ,ここまでの話題にはならなかったでしょう.

「絵馬」と「ポプラ」の件は,他者への思いやりが火種です.やはり2ちゃんねる,Twitterが「好感」を増幅しました.美談だと思いますが,マスメディアがあまり取り上げてくれていないのは,残念ですね.

「生活者からポジティプな協力を得る」ことが,マーケティング3.0時代の具体的な重点施策ですが,年明け早々,示唆に富む事例ではないでしょうか.

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