『ロリータ』の新訳は素晴らしい、らしい。
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そして若島正による今度の改訳は、既訳二種とは対蹠的な見事な出来ばえで、わたしはほとんど圧倒され、作者のためにもわれわれの文明のためにも大いに喜んだ。ガルシア=マルケスの『百年の孤独』と並ぶ名作は、つひにその偉容にふさはしい名訳を得たと言つてもよからう。
― 丸谷 才一 『蝶々は誰からの手紙』 マガジンハウス 2008年
この本には78の書評が収められています。はなはだ斜め読みですが、この本が一番ほめられていたのではないでしょうか。ほめ方にも気合いが入っていますよ。
その小説における文体の美を、若島はまことに巧みにもたらしてくれる。筋を運ぶときはすたすたと歩行し、皮肉を言ふときは声をひそめ、そして大きく業をかけるときは派手に踊つたり舞つたりして。これはひよつとすると近代日本の小説の翻訳のなかで有数のものかもしれないと思つた。
― 同上
読みたくなりますね。この書評の初出は2006/2/26の毎日新聞ですが、残念ながら毎日は小学生新聞しか購読していないため、氏の新刊『蝶々は誰からの手紙』で初めて知りました。実に2年遅れです。
しかし悪いことばかりではありません。新聞に載った当時は単行本しか出てなかったのに、いまでは文庫で読むことができます。
新聞で書評を読んでしまっていたら、単行本を買わざるを得なかったことでしょう。
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