相関関係から因果関係を知る
AとBとが相関関係にあるからといって、A→B(あるいはその逆)という因果関係があるとは限らない、という話。今週読んだ『「豊かさ」の誕生―成長と発展の文明史』の中に、相関関係のデータから因果関係を読んだ例があり、まことにハッといたしました。以下、他サイトに書いた書評から転載します。
世界価値意識調査(WVS)によれば、「生存/自己表現」(大まかにいって、『個人がマズローの欲望ピラミッドにおいて、底辺からどこまで上昇したか』) の高さ、つまり国民の幸福度と、民主的な政治制度の強さには強い正の相関関係があるそうです。往々にして相関関係を見出すのは容易ですが、メカニズムを考 える上では、それらに因果関係があるか否かを検証する必要があります。
ここで本当に重要なのは、ニワトリが先か卵が先か、ということだろう。民主主義が自己表現の度合の増加をもたらすというのも、自己表現の度合の増加が民主主義をもたらすというのも、同じくらいありそうなことではないか。(p367)
多 くの場合、このニワタマの関係を解き明かすのが難しい。わたしは、論理的に妥当なシナリオが立てられるか、第三第四の因子を加えて構造化し、時間的な前後 関係が見出せないかどうかというアプローチで考えることが多い(他のやり方を知らない)のですが、ここでは面白い方法で因果関係を推測していました。先の 引用部分の続きを引用します:
幸い、イングルハートとヴェル ツェルは「時間差クロス相関比較」という統計手法を用いて、二つの変数の間の因果関係を特定した。具体的には、一九九五年の「生存/自己表現」と二〇〇〇 年の民主主義の間の相関のほうが、二〇〇〇年の「生存/自己表現」と一九九五年の民主主義の間の相関よりもずっと高い――言葉を変えれば、現在の民主主義 は、それより前の「生存/自己表現」の高得点との関係が強く、これに対して現在の「生存/自己表現」の高得点と、それより前の民主主義との関係は、それよ りずっと弱いということを発見したのである。先に来るもののほうが原因だろうから、「生存/自己表現」の高得点が、民主主義の強さをもたらす、と考えられ る。
なるほど!ですよね。何か身近なニワタマ関係で挑戦したくなりました。