ノーツマイグレーションのポイント
グループウェア業界でIBMのNotesが草刈り場になっているようだ。IBMがNotesへの投資を辞めて(辞めたように見えて)はや数年。流石に取り残されたユーザの我慢も限界にきたということか。
かつてNotesの活用企業として各種メディアに事例として取り上げられた大企業たちもこぞってNotesから他のグループウェアへ切り替えつつある。大物では残るは数社というところか。ただ地方の企業を始めとして中堅企業ではまだNotesの廃止に踏み切れない企業も多いとも聞く。
もうこのブログでも何度も書いているが、Notesから他のグループウェアへ移行する際のポイントは、既存資産の移行をどうするかに尽きる。グループウェアの基本機能を再現するだけなら、別のそのグループウェアへ切り替えても問題はない。しかしながらNotesの上で共有している企業のノウハウや業務上のナレッジを移すとなると話は違ってくる。
蓄積された既存資産にあわせて移行是非、移行先、移行方法、移行時期などをひとつひとつ見ていくことが必要だ。これがNotesデータベースの棚卸し作業になる。グループウェア製品ベンダー各社もノーツマイグレーションを行うSIerも皆、口をそろえて「Notesデータベースの棚卸し作業が重要」だと言う。「まずは棚卸しからです」と最初に言うのだ。
それなのに、具体的な棚卸し時の手法を確立しているSIerは皆無に近い。「棚卸し」と称して作成したEXCELの一覧表を顧客につきつきて「さあ、ここから移行するデータベースを選んで下さい」というだけのエンジニア、「ツールによるNotesデータベースの解析結果」がウリだと言うので結果を見てみたら、単に設計要素の数をこれまたEXCELの表にして数が多い順にグループ化しただけの表を見せて、グループごとの移行工数を掛け算した見積りを出す営業。ノーツマイグレーション市場では、こういう人にばかり会う。
そんな安易な棚卸しでは経営者もユーザも納得はしない。かくしてノーツマイグレーションプロジェクトは迷走する。
永年に渡って蓄積された情報資産に対して、きちんと棚卸しの考え方を整理して提示すべきだ。例えば、我々が棚卸しをする場合は、再利用できるものは何か、一から共有し直したほうが良い情報はどんなものか、貯めるものと周知するものはストックとフローとして分類する。蓄積するものは、FIXされた結果なのか、検討経緯や過程こそが重要なのか、情報の性格によって適するプラットフォームは異なる。更新頻度は多いのか、少ないのか、更新者は単独か複数か、それによっても共有形態をかえる。展示することが目的なのか回覧・周知することが目的なのか、回覧・周知が目的の場合グループウェア以外のツールに適したものがある。
聞いてくれれば、先にこうした棚卸し手法を説明してあげたのに、何故か安易にベンダーやSIerの営業の口車に乗ってムダな「エセ棚卸し」を終えて迷走した後で相談に来るユーザが多くて気の毒になる今日この頃だ。