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評判検索として期待できそうな「みんなの経験」

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 昨日と今日は情報爆発時代プロジェクトの成果報告会を聴くためにNIIにある一橋記念講堂に来ている。情報爆発プロジェクトは文部科学省がスポンサーとなって取り組んでいる情報大爆発時代の諸問題に総合的に挑戦しようというプロジェクトで経済産業省のやっている情報大航海プロジェクトと並んでなにかと興味深い研究が多い。

 昨日はまず基調講演の後に各分野ごとの研究概要の紹介が手短にされたのを聴き、その後別会議室で気になったいくつかの展示とデモンストレーションをざっと見て回った。その中で私が立ち止まったのは情報通信研究機構の鳥澤先生による「検索用の巨大ディレクトリ鳥式」と京都大学の西田先生の「複数の非言語情報によるインタラクション中の意図推定」、そして奈良先端技術大学の乾先生の「経験マイニング」の3つ。
 「鳥式」は検索キーワードを入力した際にさらに絞り込んだり拡張するための関連語や類似語を提示するためのディレクトリ。デモでは出来上がったディレクトリを使って、従来のクラスタリングツールと同様に検索語に対して関連語を星形に表示していた。こういうのはその場で見ると面白いのだが、反面日常的な検索ではこういうインターフェースは不便だしニーズも低い。もっと関連語の見せ方を工夫しない限りあくまで特別に「気づき」を得たい時用の特殊検索という域を出られないように思う。
 「複数の非言語情報によるインタラクション中の意図推定」のほうは難しくて理解しきれていないのだが、どうやら人の発言時の仕草(例えば発話の音韻、うなづき、目配り?)などを機械が認識して発言の目的(提案、同意、その他)を推定しようという事らしい。まだ研究初期段階だと言っていたがこれは面白いと思った。

 一番面白かったのは経験マイニングの「みんなの経験」。こちらはブログの記事を収集・マイニングして各記事から①何に関するトピックか②誰の経験か(執筆者本人の経験、執筆者の友人からの伝聞か)③どんな事態になったか(入手した、ポジティブな出来事、ネガティブな出来事)④時間(現在、過去、未来)⑤再発性(単発、繰り返し、継続)⑥態度(事実、可能性、願望)⑦事態の表現内容を把握してそれをそれぞれで括って検索結果に表示できるようにした検索エンジン。
 これまでの評判分岐でもポジティブとネガティブな判定はあったが、これに加えて本人の経験、未来の願望でなく過去の事実といった条件で分類・絞込みするというアイデアは斬新だ。 

 「みんなの経験」は富士通とアクセラテクノロジの協力を得て既にインターネット上に実装もされていたので早速試してみた。これは結構すぐに実用化してもいける気がする。たとえば検索窓に「VAIO」と投げ込むとブログの記事が   

  • 買う/利用するつもり
  • 買った/利用した
  • 良さそうな噂
  • 良かった感想
  • 良かった出来事
  • 悪そうな噂
  • 悪かった感想
  • 悪かった出来事

というように分類され、人数とともに表示される。欲を言えばこの分類の表示順を過去から未来、事実から可能性というように評判としての記事の信頼性順に並べたほうがよさそうだが、それでも見たい記事を絞り込むのに十分直感的で便利だ。

 残念ながらインターネット上の「みんなの経験」は、クローリング(情報収集)を止めているのでインデックスには2008年秋頃のデータしかない。だからiPhoneは検索できるがVAIOでもTypePは出てこない。ネットブック電動自転車なども出てこなかった。もっとも今のスパムが増えたブログをそのままクロールすると大変なのでもう一工夫が必要そうだ。スパムが少ないTwitterなどのミニブログ向きかもしれない。
 今後は導入実験が予定されているようなので毎日クローリンクするようになったら、またいろいろ試してみたい。

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