社員ブログポリシーの策定~組織からの対外情報発信としての視点
先週の土曜日(2008/1/26)の日経新聞朝刊1面に「ブログ開設、10人に1人、昨年11月1354万件――販促に活用も。」という記事が載り、7面の関連記事では企業もブログの内容をコントロールする時代になったと結ばれていた。この記事がいうコントロールというのはその企業のお客さんにあたる消費者側の評判を示しているのだろうが、それ以外にも各企業は自社の所属社員(職員)の書くブログにももうちょっと注意を払うべきだろう。
実際に私のところにも昨年あたりから社員がブログを書くことについての相談がいくつかくるようになった。組織として所属社員のブログポリシーを定めたいというような相談だ。そのような相談を受けてディスカッションを行い、実際にコンサルティングの結果としてブログポリシーを明文化し社員や職員に配布するまでに至る場合と、検討したが明文化する必要はないと判断される場合が現時点ではだいたい半分半分だ。
具体的なブログポリシーを紹介することはできないので、こうしたディスカッションの際に我々がよく使う、組織から見たときの社員(職員)ブログの分類の視点を紹介してみる。社員(職員)ブログはだいたい以下の3つに分けることが出来る。
1.社員が企業と関係ない日記や趣味についてブログを書くケース
サッカーや野球といったスポーツの話から登山や写真といった趣味の話、あるいは住んでいる家の周りの地域情報など、社員がプライベートな時間に各個人の
活動としてブログを書くケース。基本的にブログの内容は企業と関係ない話題であるし、こうした場合はブロガー自身が勤務先を公開することも少ない。
企業としては、社員のこうしたブログ活動については一般的な町内会の活動やPTA活動、同窓会や勉強会と同じように捉えるべきで、必要以上に気を揉み過
ぎるべきではない。これまでも町内会や同窓会などでの活動で各個人の属性情報として必要最低限の職業や勤務先が公開・交換されたはずだが、これに目くじら
を立ててはいなかったはずだ。
だから同じように、趣味のブログ活動についても企業として何か特別な制約をもうけるなどの関与を行う必要はないし、そもそもそこまで権限があるかどうかについてからが疑問である。
通常企業は一般的な社員の企業外活動での活動に際して犯罪行為を行わないことや公序良俗に反しないこと等を定めているはずで、この延長としてむやみに社名をひけらかさないように周知するくらいで良い。
2.企業が公認し用意した場所に社員がブログを書くケース
企業側で用意した自社ホームページやあるいは外部のメディアなどに企業名や所属を明記してブログを書くケース。社内で企画が持ち上がるにしても、社外からオファーが来るにしても企業の広報担当などが関与するのが一般的である。
このケースは、従来のメディアからの取材や雑誌への寄稿、学会・研究誌へ投稿活動に準じたものとして捉えるのが良い。すなわち企業公式の対外広報活動だと捉えるのが一番近い。
ただブログの場合は、従来の紙系のメディアに比較して手軽に発信できるというのがメリットであり、ブロガーが記事を書いたらその場で即座に公開とうのが
常である。したがってブログを開設すると言うことは記事を載せることではなく連載のコーナーを作る事に近い。一応公式の対外広報活動の一環と言うことであ
れば、記事を毎回事前にチェック事がする体制を取ったほうが良いだろう。
もし毎回チェックする体制が取れないようであれば、あらかじめ広報担当にも削除や修正の権限を与えておくなどの運用面での工夫をしておく。あと当然だ
が、開設前にブロガーの人選をきちんと行うと共にブロガーに一般的な対外広報の文書作成時の注意事項などは再教育しておくべきだ。
3.社員が所属企業に関連する分野や業務の周辺分野のブログを書くケース
さて、実際には上記の1や2に綺麗に分かれるわけでは無く、その中間にあたる部分がどうしても出来てしまう。例えば、IT企業に勤務する社員が自分が利
用している(他社の)データベース製品に関してのブログを書いたり、車が好きで自動車会社に就職した社員が自分の所有車や自動車レースに関するブログを書
いた場合はどうなるのか。
実際にプライベートな趣味をテーマに始めたブログでも、自分の日記を書いていたらいつのまにか日々の自分の業務の内容に踏み込んでしまっていたとか、ペ
ンネームや匿名で始めたブログでもネットワーク上での活動が活発になるにつれてオフ会などで勤務先が他のブロガーに伝わりそれが公然のものとなっていくこ
ともありえる。
冒頭の部分で書いたようなブログポリシーを明文化して配布するのは、この最後のケースを想定したものである。ブログを書く際の心得的なものを何箇条化にまとめるのだ。
ブログポリシーには「正直であること」「プライバシー保護や著作権関係の法律を守ること」「守秘義務規程等の規程を守ること」といった一般的な留意事項か
ら「社名を出すときのルール」「自社製品について書くときの留意事項」「ブログをいつ書くのか」などが含まれる。場合によっては「ディスカッションの姿勢」や「炎上時の対応」など
も規定しておく。
もし今読者の中に、社員(職員)の対外活動としてのブログ執筆に関して、企業側の対策やブログポリシー策定を検討している方がいれば、こうした視点を参考にしていただきたい。
あと注意すべきは既にブログが普及してしまった今となっては、必ず既にブログを書いている社員(職員)がいるということだ。こうしたブロガーの存在を無視
してある日突然ルールを決めてそれに従わせるというのはあまり感心しない。画一的な対応ではなく、それぞれの外部環境や潜在している社員ブロガーのこれま
での活動状況など併せて柔軟に対応するべきだ。