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コミュニケーション強化はフリーライダーを増やさないため

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 社内コミュニケーションのテーマでちょっと新しい仮説を立てている。
 「社内コミュニケーションを活性化させて何が良くなるのか?」という質問への回答になると思うのだが、「社内コミュニケーションが活性化するとフリーライダーが減る」という仮説を考えた。

 これまでは良く、日本人は、利他行為への意識が高く組織への帰属意識から協力を惜しまない民族だと言われているが、実は違った説もあるようだ。最近こうした論文を2つ読んだ。西條辰義先生の『実験経済学の方法論:「日本人はいじわるがお好き?!」プロジェクトを通じて』と竹村幸祐先生他の『日本人の集団主義を支える制度と心:日米比較実験による検討』である。

 西條先生の実験とその結果は、2006/10/25の日本経済新聞朝刊の(やさしい経済学)での説明がわかりやすいので以下に引用する。

 二人に二十四ドルずつもたせた
(中略)
(2)そのなかで両者が八ドルずつ出せば互いに利得が極大になる(3)こちらの出し分が八ドルより少ない(多い)場合、自分の利得はその値より減るが、相手の利得のほうが自分より少ない(多い)――というゲームをつくり実験した。
(中略)
 日本人を被験者とした場合、八ドルよりも少ないお金、たとえば七ドルしか出さない人がけっこういる。その理由は先述の(3)にある。一ドル減らすことで自分の利得は減るが、相手の利得はもっと減るという構造を理解してわざわざ一ドル減らすのである。まさに意地悪な行動である。
 一方、米国人を被験者とした場合、ほんのわずかだが意地悪行動をとる者がいるものの、その割合は日本人の場合よりはるかに小さい。

 日本人には、知らない他人が幸せになることを許せない面があるらしい。
 もうひとつの竹村先生達の実験結果では、日本人は集団内での監視が無いと判るととたんにサボる民族のようで、監視されているとアメリカ人以上に勤勉に働くが、サボっても誰も咎めないと判るとよりフリーライダー化しやすい傾向が読み取れる。

 ここ最近の終身雇用の崩壊や、社内での雑談や喫煙家同士の会話・飲み会などが減った結果、組織内に知らない他人が増えて、監視意識も希薄化したとする。その結果として、今の日本企業では、フリーライダーの割合が増えているのではないかという仮説である。

 もしそうだとすれば、知っている人を増やす、あるいは暗黙に監視者の存在を意識させる為として社内コミュニケーションを見直すのはどうか。日頃からの相互理解を取り戻せば、「サボると悪いなー」とか「皆も頑張っているんだから」という意識が沸きやすくなると思うのだ。

 何かを生み出す効果ではなく、サボらせない効果というのは、やや後ろ向きなので余り大きな声では言いにくいが一考には値すると思う。

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