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全員がブロゴスフィアに参加しないといけないのか?

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 もう先月のことになるのだが、enNetforum事務局が主催する「第5回社内ブログ・SNS等業務改革研究会」に参加した。既に5回目の開催ということもあり数名の知り合いも含めて会場には多数の参加者がいて賑わっていた。
 さてこのイベントでは、前半のプレゼンテーションとNTTデータにおける導入事例紹介に続いてパネルディスカッション形式で「社内ブログ・SNSの導入効果の評価」に関するディスカッションが行われた。このディスカッション自体は某企業での社内ブログの利用者へのアンケートをベースにした非常に有意義なものであったのだが、ディスカッションの間中ずっと違和感を感じ続けたことが1点だけあった。

 それが今日のタイトルにある「全員がブロゴスフィアに参加しないといけないのか?」という疑問である。別にブログに関わらずSNSでも掲示板形式のフォーラムでも同じである、組織内でコミュニティを構築したときにそこへの参加者を全員までとは言わないが80%とか90%とかいう高い数字に維持することは不可能に近いと思うのだ。
 誤解されないように言っておくと、もちろん参加率は高いにこしたことはない。発言率もそうだ。そして私自身企業に導入コンサルティングを行うときには参加率や発言率をKPIのひとつとしてよく利用する。でもそういった経験で得た企業内のコミュニティの参加率や発言率は、数字だけ見ると実は相当に低い数字になる。あまりにも低すぎる場合には、テクニックとして集計期間を1週間から1月、あるいは開設依頼の累計というように調整して数字のお化粧をするのだが、それでもそんなに高い数字にはならない。
 なぜ参加しない人が一定数いるのかという理由については、いろいろな意見も仮説もあると思うが、私はそのひとつに「組織内フリーライダーの存在」というのを挙げたい。組織内にはフリーライダーは一定数いるというのが定説だ。その割合についてはっきりした数字を現したものはいまのところないが、例えば小林盾さん他による「職場のフリーライダー――サイズ,仕事内容,モチベーションの効果」という研究では、貢献者は役割内行動で6割、役割外行動で5割なのに対して、貢献が「かなり少ない」「少ない」フリーライダー的な人の割合は役割内行動で11.9%、役割外行動では18.7%ということである。

 全員参加や発言率100%を目指さないのは、このような組織内フリーライダーが存在する問題はコミュニケーションや情報共有とはまったく別の問題であってその理由をナレッジマネジメント側に押し付けられても困るからである。但し以前にちょっと書いたように、ナレッジマネジメントの目的のひとつに企業風土の変革というのがあるのも事実なので、一概にこのせいだけにしてはいけないのも確かだ。少なくともフリーライダー率の低下に寄与はできるはずだから。
 冒頭に戻ってこのセミナーの中で違和感を感じたのは発言者がクチをそろえて、参加率を上げなければというようなことを言っていたからなのだが、一般的にイントラブログや社内SNSの運営者は、参加率や発言率の期待値をどのあたりにおいているのだろうか?なんとなく私が通常設定する数値よりも随分高いものを目指しているように感じたのだ。当日に質問の機会を逸してしまい、このテーマを議論できなかったのだが、その後もこのテーマに私自身悶々と思い悩むことが多いのであえてブログに書かせていただいた。

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