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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

Secure Enterprise Search 10gについて

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 今年度の「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」で、大々的に発表された「Secure Enterprise Search(以下SES) 10g」だが先日2006/4/12より市場への出荷が開始されたようだ。

 あのオラクルがエンタープライズサーチ分野に乗り出すということ、ラリー・エリソンCEOの

「Googleは、パブリックなな情報の検索には長けているが、プライベート検索部分は弱い。企業の情報資産はパブリックなものだけではない。こういったイントラネットに存在する非公開のデータにもセキュアに検索できる手段を提供することが必要だ。DBベンダであるオラクルは、このセキュアな環境での検索に長けている」

という売り込みには納得感があり、先日早速日本オラクルから「SES 10g」の製品説明を受けた。

 そしてその結果による私の「SES 10g」の現時点での評価は、“いまいち”である。

 なぜ“いまいち”なのかというと、まず対応しているプラットフォームが圧倒的に少ない。現時点でのR1では、NotesにもExchangeといったグループウェアは検索の対象にできず、ドキュメンタムやマイクロソフトのSharePointPortalServerといった文書管理系システムにも対応していない。オラクル自身が提供しているコラボレーション・システムである「Oracle Collaboration Suite(OCS)」にすら対応していない。

 現時点で対応しているのは、ファイルサーバとWebコンテンツ、それにオラクルのデータベース(データベース検索が売りなのに他社製品のデータベースは検索できないという)とポータル製品ということである。R2、R3という今後のバージョンアップで、これら以外の別のプラットフォームへのクローラーが提供されるということであるが、そのあたりのはっきりしたロードマップは提示されていない。

 オラクルの言う「企業内のあらゆるデータ」とはイントラネットとオラクルのデータベースの中にあるデータのことなのだろうか?

 他にも、エンタープライズサーチとして弱点だと思われる部分がいくつかある

・検索インターフェースがキーワードの検索のみで、絞込みを支援するような機能(ドリルダウンや類義語検索といったようなもの)がないので、大量の検索結果が表示された際に目的のものへ到達しにくい。

・SESは検索機能部分・インデックス保管部分(オラクルデータ)・インデックス生成部分が全て一体の製品構成となっているために拡張性や柔軟性に乏しい。クラスタリングが組めないし、検索対象が増えてきたときにはCPUを足すことと複数のSESを構築してそれぞれが検索対象範囲を分担する方法しかないので、導入後に検索対象データやフラットフォームが増加した場合に対応が難しい。

・検索結果の評価機能。Googleのページランクと同様の機能を実装しているということであるが、企業内データの特殊性に配慮した独自の評価を加えてはいない(若干のパーソナライゼーション機能は実装)。またそういった独自の評価を加えるカスタマイズポイントを用意しているかは不明。

 オラクルはこの製品をGoogleへの対抗製品だといっているが、私はこの製品の競合製品は国産ではConceptBase(ジャストシステム)、BizSeach(アクセラテクノロジ)、海外勢ではFAST ESP(ファストサーチ&トランスファ)やUltraseek(オートノミ)になると思っている。しかしながら正直言ってR1の段階では、比較対象候補にすらならないのではないだろうか?

 提唱しているコンセプトについては魅力的であり、早めのR2のリリースに期待したい。

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