その「傾聴」、数字にできますか-ソーシャルメディアをWeb解析の力で活用する
初めまして
アイティメディアでリサーチやWeb解析・SEO等を担当している伊藤海彦と申します。ソーシャルメディア×Web解析をテーマにブログを書いていきます。よろしくお願いします。
Facebookの盛り上がりを始め、まだまだ日本でもソーシャルメディアの勢いは衰えを知りません。ときにビジネス、特にマーケティング活動の中でソーシャルメディアの役割って何でしょう。「傾聴」という言葉もすっかり定着した感がある昨今、敢えて数字でその成果を可視化するための考え方を探ってみたいと思います。
ソーシャルメディアの機能を有機的に考える
マーケティングにおけるソーシャルメディアの使われ方を、ざっくり2つに分けてみます。
1.ユーザーとの関係性を築く
2.特定のコンバージョンへ誘導する
ユーザーの声を集めたり、コミュニケーションを図ったりするのは前者です。また後者はECなどのみならず、PVを目的としたコンテンツへのアクセスも含まれます。
前者は時に大変エモーショナルな言葉で語られます。最終的な目的として「顧客とのキズナ作り!」は正しくても、それとソーシャルメディアが直結するとは限りません。ましてや隣の上司が「ロイヤリティ」「コミットメント」など謎の呪文を唱えながらTwitterやFacebookのアカウントを作り出したら、キズナ作り最初の一歩はまずそのアカウントをスパムレポートに突っ込むっことです。
後者は時に誇張された効果が吹聴されます。「Facebookを使ってアクセス◯倍!」「Twitterを使って◯億円の売り上げ!」など。しかしアクセス増にしろ成約増にしろ、長期的に見てSEO・SEM以上に費用対効果が良いという話は寡聞にして知りません。多分これからもないと思います。
いずれもマーケティングのゴールとユーザーの関係性がきちんと概念化されていないことからが原因では、と思っています。謎の呪文を唱えながらアカウントを作り出すパルプンテ上司は、自社の製品やWeb上のコンテンツにユーザーがどのようなプロセスで接触するのか知りません。FacebookやTwitterでいきなり売り上げ増を目論むドリーマーケッターも、コンバージョンやアクセスの直前しかユーザーの動きを知りません。ゴールとユーザーの間に線が引かれていなかったり、線が一本しかなかったりするわけです。
例えば資料請求等のコンバージョンをゴールとしたとき、ユーザーが以下のように行動したとします。この時、マーケティングのなかで仕掛けた施策が果たす機能は2つに大別できます。直接貢献と間接貢献です。
コンバージョンの直前にユーザーが「踏んだ」施策です。一方間接貢献は、直接貢献した施策にユーザーを渡した施策です。例えば下の図ではソーシャルメディアは直接コンバージョンに導く効果と、それをサポートする効果の2つがあったということになります。またここでは図を簡単にするために間接貢献の段階を1つにしていますが、間接貢献した施策にユーザーを渡した施策……と考えていくとこのツリー図はかなりの大樹に育ちます。
ゴールとユーザーの間にある動きをモデル化し、関係者の中で周知しておくことは重要です。思わず自分で(キリッと言いたくなるセリフですが、網羅とは言わなくとも単純化しつつ過不足の無い状態で図を作っておかないと、
1.目標をブレークダウンできない(→アクションがそもそも見えない)
2.何が効いたのか・効かなかったのか分からない(→計画の修正ができない)
等々、厄介かつよくある問題を生み出すことになります。また図式化しておくと組織内のコンセンサスも取りやすくなります。話としてはまったくもって車輪の再発見ですが、賽の河原でツイートを積み上げるよりはマシです。
ソーシャルメディアとWeb解析のポジションを考える
ここでいくつか問題が生じます。
1.ゴールとユーザーの間の関係を図式化したいけれど、そもそもどういうルートが合ってどう繋がっているのか、分からない。
2.図式化したはいいけれど、本当にそうやってユーザーが動いているのか分からない。
ここでWeb解析が登場します。Web解析・アクセス解析は通常、いわゆるPDCAで言うところのCに当たると考えられています。ところが実際そう綺麗にはいきません。パルプンテ上司がPlanをぶっ飛ばしてDoしちゃっているかもしれません。もちろんそれは仮説を先に実行に移してみて、そこから順次修正を図るテストファーストの発想かもしれません。いずれにせよ、初期計画の段階ですでにゴールとユ―ザーの関係をある程度知っておく必要があり、その際に何らかのWeb解析の知識が必要になることがあります。
ただソーシャルメディアがこれだけ語られつつも、Web解析の話と絡んだトピックはあまり見当たりません。もちろん、Web解析に関する話題を扱ったブログやメディアでそうした話はありますし、大変有用です。ですがそれはWeb解析に興味がある人の目には留まりこそすれ、ソーシャルメディアを入り口として入ってきた人の目には留まりづらい、もしくは役立てづらいのが現状かと思います。
ということで、このブログはソーシャルメディアとWeb解析の掛け合わせを目指します。ただソーシャルメディアはマーケティングの一手段に過ぎず、またWeb解析もマーケティングプロセスの1フェイズに過ぎません。One of them同士を掛け合わせても、あまり話は広がりません。0.5と0.5を掛けても0.25です。そもそも卑近な問題としてそんなにネタがありません。ということで、以下のようにソーシャルメディアについて書く場合は常にWeb解析の視点をバックに持ちながら、Web解析について書く場合には常にソーシャルメディアの視点をバックに持ちながら、コンテンツを作っていきたいと思います。
具体的なコンテンツの方向性=エントリカテゴリとしては以下の4つを考えています。
○ノウハウ・考え方
・ユーザとの関係分析
・情報発信の最適化
「ノウハウ」と偉そうに書きましたが、あまり細かい数字の話やツールの話は少ないと思います。このエントリのように、そもそもWeb解析を通じてソーシャルメディアをもっとうまく活用するための考え方について書いたものがメインになる予定です。「ユーザとの関係分析」では、コンテンツ・情報とユーザーの関係の分析がメインになります。例えばTwitterでプロダクトの評価を探る、コンバージョンに効いたコンテンツを探る、等です。「情報発信の最適化」では、企業や個人が主体的にソーシャルメディア上でコンテンツを発信していく際に、どういったやり方・考え方が良いのかを考えます。
「ゴールとユーザの関係を図式化云々」と書いておきながらなんですが、どちらのカテゴリでも最終的なゴールについてはあまり言及しません。組織や状況によって大きく異なるからです。ただその一つ下のレベル、ゴールから1段階ブレークダウンしたレイヤーでは、どのゴールにも共通するやり方や考え方、目標が少なからずあると思います。そういった事柄について書いていくつもりです(さらにその下のレベル=具体的なタスクは、これまたケースバイケースになるので書けません)。
○ニュース
・ソーシャルメディアのニュース
・Web解析ツールのニュース
ソーシャルメディアやWeb解析に関して気になるニュースがあった時、ピックアップします。更新頻度はこちらの方が高いかもしれません。ただあまり上記のようなカッチリしたものばかりだと僕も書くハードルが上がっていく一方になってしまうので、継続のためにもこうした軽めのトピックはちょくちょく挟んでいくつもりです。
次回予告
※次回、ノウハウ・考え方系のエントリは「インサイトでFacebookページを活性化(1)目標の設定」の予定です。長くなったので2回に分割します。色々書きましたがとりあえず流行りに乗るのもブログでは大事です。
※現時点でエントリはあと2つほどすでに書いています。つまり少なくともあと2回は更新されます。それ以降はいつ更新されるか分かりません。このブログのRSSフィードをリーダーに登録していただくか、以下の出来立てほやほやなFacebookページを「いいね!」していただくと、逃さず読めます。是非。
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