偶然性を設計する - コミュニティ戦略の、その先へ
ソーシャルメディアと「コミュニティ」という言葉は切り離せません。Facebookのファン、Twitterのフォロワー、いずれも一種のコミュニティです。ファンやフォロワーをどう増やすか、どうリアクションをもらうか、といった試みは、コミュニティの活性化とも言えます。またコミュニティは人と人との繋がり、ネットワークでもあります。今回はファンやフォロワーを繋ぎ、コミュニティのネットワークを強化するという手法について考えてみます。
コミュニティの密度を上げる
6次の隔たりという言葉をご存知でしょうか。
世界中の任意の2人は、知人の知人というような知り合いの連鎖の中で5人程度の仲介者によって間接的につながっているという考え。
この考え方はインターネットが普及した際、またソーシャルメディアが普及した際、有名になりました。実際にTwitter上のユーザーをランダムに2人選び、ソーシャルグラフ上で何人辿れば結びつくのかという調査結果が昨年発表されています。結果は平均5~6人と、「6次の隔たり」と合致するものでした。
Six Degrees of Separation, Twitter Style
これをソーシャルメディアにおけるコミュニティの活性化に応用できないでしょうか?
FacebookページやTwitterを情報発信の場所として捉えた時、私たちが描きがちなのは、「情報発信をする企業⇔受け取るユーザー」という構図です。そこまでモロでなくとも、いつの間にかこういった水平的な図を描いてしまっていることがあります。
水平的な繋がりの問題点は情報発信者が1人しかいないため、一度発信された情報を受け取り損ねた場合、それっきりになってしまう点です。一期一会も良いですが、できればもう少し機会損失を減らしたいところです。
Twitterの場合、平均して5~6人辿れば任意の2ユーザーが結びつきます。つまり放っておいても、ツイートがRTされまくれば5~6人を隔てて見逃してしまった人のところにも情報は届くはずです。理論的には。しかし実際そこまでRTされるようなことはほぼありません。Facebookにしても同様です。ではこの平均5~6人という「距離」を縮めるとどうなるか?
例えばこの図ではファン同士の平均的な距離は約0.9です(情報発信側は数に入れていません)。間に1人挟むか挟まないかで、ファン同士が結びつきます。究極的にはファンやフォロー全員が相互に知り合いであることです。こうなると距離はゼロになります。そこまでいかなくとも、情報を企業側が発信した際、上記のファンAさんは企業だけでなくRTやいいねを通じてBさんからも情報を受け取る可能性があります。繋がりの多いCさんに至っては企業以外に情報発信者となってくれる可能性のある人が4人もいます。
いわゆるバズマーケティングは、ユーザーの間でバイラルしそうなネタ(バズ)をいかに上手く用意するかが肝となります。しかしFacebookページやTwitterアカウントを使って、もっと小規模なコミュニティを育てていくといった視点を持った場合、このようにコミュニティ内部のネットワークを最適化する、端的にいえばファンやフォロワー同士を繋げてその平均距離を下げる、逆にいえば「ネットワークの密度を上げる」という手だてが有効になります。
では実際にどのようにファンやフォロワー同士を繋げるのか? よくあるのはイベントです。メディアのようにセグメント化されたトピックの周りにコミュニティを作れる場合、オフ会やセミナーを開くことでユーザー間の繋がりが生まれ、距離は縮まります。また特定のテーマに沿ったCGMを作る例もよく見ます(失敗例もよく見ますが)。Twitterでは企業側が積極的にフォロワーの発言をチェックし、RTすることで、それを機にユーザー同士が結びつくケースも考えられます。
いくつか手だてはありますが、おそらくすぐに効果の出るものは無いと思います。発想としてはまったく新しいものではなく、昔からある手法ではある思いますが、ゆえにそこは王道なし、といった気がします。
Facebookのセレンディピティ戦略
余談です。先日開かれたFacebookの開発者向けフォーラム「f8」の裏テーマは「セレンディピティ」でした。
Markはしきりに「セレンディピティ」という言葉を使っていたが、まさに偶然、偶発的に、あるいはちょっとしたきっかけを友人の行動から「発見」することができるようになってくる。まさにこの項で掲出した画像のように、人のつながりという固定的な関係性だけでなく、人の行動とその偶然の一致を発見できるようになる。
ソーシャルはシェアだった。これからのOpenGraphはセレンディピティだ。これはFacebook CTOのBret Taylor氏の言葉だ。
この用語自体は何度かプチ流行してるようですが、単に偶然を指すのではなく、偶然によって何かを発見する能力のことを指すようです。FacebookはOpen Graphによって「動詞」と人を結びつけようとしています。これによって、私たちはFacebook上で自然に生きていくだけで、Open Graphが「より高解像度」(前述の松村太郎さんのエントリより)にその様子を記録してくれます。
人と人が結びつき、人とモノが結びつき、人と行動が結びつく。こうしてネットワークの密度はひたすら上昇していきます。高密度なネットワークの中を様々な情報が飛び交い、ある時沸点を超えた水のように、人々は次々にボコボコと、何かを「偶然」発見するのでしょう。このエントリではファンやフォロワーを1つのネットワークとして考え、その間を繋ぐことについて考えました。Open Graphはさらにそうしてできたネットワークの中で、何かがスパークする、そうした「偶然性を設計する」ための仕組みを用意しているように思えます。
○お知らせ
明日は今週のエントリをまとめて、Facebookページでの情報発信を最適化する施策について考えます。以下のFacebookページに「いいね!」していただくと、続きを逃さず読めます。