ベンチャーファイナンス事情2009(Vol.1)
1995年のWindows95販売開始とほぼ同時に、ベンチャー経営に身を投じて、14年目になりますが、今年のベンチャーファイナンスの厳しさは、ダントツではないかと思います・・・いや、正確には強く感じています。
大まかに、ブラックマンデー、バブルの崩壊、ITバブル崩壊、リーマンショックという近年の経済危機の歴史がありますが、いつの時代も、社歴(業歴)が浅く、経済的基盤が確立されておらず、金融機関からの与信が低く、金融政策からも漏れてしまいがちなのが、ベンチャービジネスではないでしょうか?
特にIT系を中心とするアーリー・シーズフェーズの未上場ベンチャー企業は、2代目・3代目と歴史のある中小企業とは異なり、地場の銀行や商工会議所・青年会議所・法人会などの各種組織・団体との関わりも無く(または希薄で)、雇用や売上など社会的影響度も低く、危機的状況での情報ソースに偏りがあるのか、リアルな人脈形成ができていないのか、はたまた、各種政策広報が不足しているのか、「生きる道」を見いだせずに消えていってしまう会社が多いような気がします。
このような背景の中でも、特に、2009年は、究極のファイナンスの厳しさがあります。
上場企業、上場に準ずる企業でさえも厳しいわけですが、東京商工リサーチの倒産件数・負債額推移(http://www.tsr-net.co.jp/new/zenkoku/transit/)を見て見ると、昨年の上場企業33件の倒産は異常ですが、15,646件の倒産は特別ではないようで、リーマンショックの秋以降の影響による倒産が多いはずの今年の数値がどうなるのかと思えば、5か月(1,360+1,318+1,537 +1,329+1,203 = 6,747)の平均から年間の倒産件数を算出すると、約16,200件となり、5月は前年比マイナスということで、件数としては思ったほど増加傾向にありませんでした。
おーっ、大丈夫じゃないか!と思う方も多いかもしれませんが、東京商工リサーチの統計では、銀行取引停止処分・会社更生法・民事再生法・破産法・特別清算が対象となっており、休業・廃業・解散・人員整理・手形ジャンプが含まれていません。
つまり、スモールベンチャーがとる道である「解散」が含まれていないのです。
ほとんどのベンチャーが手形決済不渡りとなるような当座口座を開設しているはずもなく(開設する与信もなく)、その他の手段以前に、単に消えていく「解散」、借入保証人となっている経営者の自己破産で終わっているのでは?と。(実際に、良く聞くケースです。)
そんな2009年ですが、前半が終了したこのタイミングで、ベンチャーファイナンスの現状について、あらためて書かせて頂き、「生きる道」を共有できればということで、本ログのスタートです。(長い前フリ、すみません。)
まず、2007年に『実践・初めてのベンチャー起業・経営セミナー』・「第4回 資金調達・レベニューUPが解決する諸問題」 http://www.gbil.jp/activity/entrepreneur_seminar2007/20071213.html を開催しましたが、このスライドを抜粋して、今回のテーマにおける基本編とさせて頂きます。(下記ご参照ください。)
また、次回以降、当時の状況と、2009の現状と対策などについて、自らの経験則のみならず、当社監査役の石割由紀人さん(石割公認会計士事務所) など、ファイナンス系やインキュベータの方々からの情報や、当方なりに解釈したお話をお伝えしたいと思います。
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資金調達・レベニューUPが解決する諸問題
(2007年12月13日)
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(1)資金調達・レベニューUPが解決する諸問題
資金不足は、事業の妨げる状況に陥りやすくなります。
支払、人材、モチベーション・・・
商品・サービスが創業間もなく確立すれば、早期に売上を計上できる可能性がありますが、通常は、売上を成すための商材が不十分であり、また、創業時の自己資金(自身・身内・知人・友人および企業利益の留保)のみで会社を経営・成長させることは容易ではありません
一方で、ベンチャー企業の成功の為に、資金調達は重要な要素です
本日のセミナーでは、融資・助成金・補助金・出資・株式公開といった多用な資金調達方法の概要と、ベンチャーキャピタルからの資金調達を中心に講演します
(2)ベンチャー企業の資金ニーズ
創業間もないベンチャー企業は、志が高くとも、資金力が不十分であることが多い
- 資金が不足すると・・・
スタッフ採用ができないなど基本的な経営資源が不足する
→商品・サービス開発のスピードが鈍化する
→資金枯渇で事業を休止または廃業に追い込まれる可能性がある
(3)資金力があると
- 本来目指すべき商品・サービス開発に注力できるようになる
- 設備・人材採用などが進み、ビジネスが加速する可能性が高まる
- 経営者が資金繰りに走る事が無くなり、本業に注力でき、ストレスも抑制される
(4)多用な資金調達
経営チームによる出資、ファミリーや友人の支援の限界から、外部からの調達が必要
【主な調達方法】
- レベニューUPによる自己資金の充実
- 金融機関からの融資
- 公的機関などからの助成金・補助金
- ベンチャーキャピタルなどからの第三者割当増資
- 株式公開
(5)レベニューUPで自己資金の充実
本業での売上実績と伸びを捻出できると
- 顧客実績が次の顧客を生み出す可能性
→前例主義の国内市場
→ロイヤルカスタマーや支援者からの紹介が受けやすい - 投資も融資も受けやすい!!
- 本業以外の日銭ビジネスであっても、融資を審査する金融機関および信用保証協会は、与信枠の付与や拡大がなされる可能性が高まります
- 資金不足からの給料遅配や減報など、組織を弱体化させる可能性がありますが、レベニューUPの為の給与体系変更(インセンティブモデルの導入)などは一定の効果が期待できます。
- ベンチャーキャピタルからの増資を受けないことで高いシェアを経営陣が維持できる
余計な金利を払わないために利益が留保しやすくなる
(6)金融機関からの融資 1
各種創業融資制度の活用
- 創業融資は、都道府県や市区町村から利子補填が受けられ、低金利での調達が可能。 但し、前職と同業であること、資本金(自己資金)を上限とするなどの一定の条件・制限
- ケース:神奈川県 「企業化支援資金(創業支援融資)」
→2ヶ月以内に新規創業、または創業1年未満
→年2.1%以内(固定) +信用保証料0.8%
→融資期間:運転資金は5年以内、設備資金は7年以内
(7)金融機関からの融資 2
ケース: 国民生活金融公庫
- 「新創業融資制度」http://www.kokukin.go.jp/yuushi/atarasiku/04_shinsogyo_m.html
→新規創業もしくは2期未満、雇用の創出を伴うなどの諸条件
→1,000万円以内、基準利率 2.3% +1.2%
→融資期間:運転資金は5年以内、設備資金は7年以内 - 「女性、若者/シニア起業家資金」http://www.kokukin.go.jp/sinkikaigyou/loanj_c.html
→女性または30歳未満か55歳以上
→新規創業または事業開始後5年以内
→基準金利 2.3% ±α(融資期間・審査による)
(8)公的機関などからの助成金・補助金
- 各種助成金や補助金の申請・承認には時間と手間、さらに審査結果という不確定性
- 受給可能性が高い助成金
独立行政法人雇用・能力開発機構の雇用助成金
(中小企業基盤人材確保助成金 http://www.ehdo.go.jp/gyomu/kakuho.html)
→経営基盤の強化となる人材を雇い入れた場合の賃金の一部を助成
→諸条件 - 実務経験を有する基盤人材1人あたり140万円、(1企業あたり5人まで)、その基盤人材の補助する一般労働者1人あたり30万円(基盤人材1人につき1人)
- 基盤人材に対して労働条件通知書又は雇用契約書等により年収350万円以上の支給を予定している人
- 雇用保険の適用事業主となること
- 設備投資\300万円以上、申請書提出以前に、対象人材をアルバイト・契約・社員などで雇用していないこと・・・などの厳しい条件もある
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