【ブックトーク】現場の“力”・その壱/『河北新報のいちばん長い日』
あれから3回目の「311」が訪れ、4年目が始まっています。それと前後して、印象的な本が何冊か文庫に落ちてきていたので、再読がてら何回かに分けて。個人的にハードカバーから文庫に来る際一番嬉しく思うのが“+α”の要素があることです。特にノンフィクション系は後日談的な加筆がなされてることも多く、こちらもそんな“オマケ”がありました。
『河北新報のいちばん長い日』(河北新報社/文春文庫)
東北に根差した地元新聞・河北新報の、震災の日々を綴ったルポルタージュ、ハードカバー版と図書館で出会ったのですが、当時、何かに急き立てられるように読み進めたのを覚えています。
徹頭徹尾「被災者に寄り添う新聞」であることを貫きながら、様々な視点での多重的な現地の取材状況が丹念に、当事者としての視点からも積み重ねられていて、重く心に響いてきます。
焼け跡が存在しない“焼野原”
何も無いところから立ち上る“生の臭気”
空撮カメラマンの“後悔”
福島配属であった記者の“懊悩”
一つ一つの“出来事”が全て、圧倒的な現実として、迫ってきます。決して正解を一つに集約することのできない“現実”として。情報を伝えるという事、事実を伝えるという事は、ジャーナリズムの本質なのだと、そんなことをあらためて。
“われわれは皆被災者だ。誰かを責めることはするな。”
ただ単に記事を書くだけが新聞の仕事ではない、情報を可能な限りに正確に伝えることが公益なのだ、と。そして、30年前の教訓を伝えきれなかったのではないかとの忸怩たる思いと、次の30年後に備えるために伝えていくとの、との覚悟の模索が、痛いくらいに伝わってきました。
ん、伝えていく使命と責任は報道機関だけに背負わせていいものではないのだろうと、「自助、共助、公助」との言葉を思い出しながら、考えさせられた、そんな一冊です。
【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
『救命』(海堂尊/新潮文庫)
『前へ!』(麻生幾/新潮文庫)
『日本人の底力 東日本大震災1年の全記録』(産経新聞社/産経新聞出版)
『南三陸から』(佐藤信一/日本文芸社)
『千夜千冊番外録 3・11を読む』(松岡正剛/平凡社)
【補足】
今回プラスされたのは「後書き」の部分、あくまでも地元に寄り添う「被災者の一人」としての決意が綴られています。どうすれば「わがこと」になるのか、なんてことが突きつけられていると、そう感じます。
なおこちらは主催の一人としてお手伝いしている「朝活読書サロン Collective Intelligencehonn(裏エビカツ)」でも紹介しました。特にテーマは無い集いですので、本好きの皆さんに響きそうな、と言った視点から。やはり“本”にまつわるコトガラに関わっていきたいなぁ、、ともあらためて。
ご興味を持たれましたら、是非こちらから覗いてみてください~
>>> 朝活読書サロン Collective Intelligence(裏エビカツ)の本棚(ブクログ)