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仕事に絡んだ四方山話などを徒然にと思いつつも、読んで興味深かった本ネタが多くなりそうでもあります。

【ブックトーク】子どもと一緒に読んでほしい、そうです。/『子どもの教養の育て方』

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 ここ最近、小2の子どもに「図書館行く?」と尋ねると、「行く行く!」との嬉しそうな答えが来ることが増えてきました。お目当ては『マジック・ツリーハウス』というファンタジーシリーズ、各国の歴史ネタも散りばめられていて、意外と侮れません(「アレクサンダー大王」の話をし始めた時には、ちょっとびっくりしました)。

 もともとは、昔話系の絵本から始まって、『ミッケ』などのギミック系を経て、最近では『マジック・ツリーハウス』の他、『かいけつゾロリ』や『ドラえもん』、ポケモンや名探偵コナンの映画ノベライズあたりなどが主流です。

 この先どんな方向性で読書の機会を広げていこうかなぁ、、と悩んでいるのですが、そんな中、子どもに対するお勧め本の解説書としても面白いなぁと感じたのが、こちら。

 『子どもの教養の育て方』(佐藤優&井戸まさえ/東洋経済新報社)

 元外交官で“知の巨人”とも言われる佐藤優さんと、5人のお子さんを育てられている元衆議院議員・井戸まさえさんの、育児を軸にした“教養”を涵養していくことについての対談集となります。

 子どもと一緒に読んでほしいとの想いからか、平易な書き方でサラッと読めますが、内容は非常に濃いものとなっています。

 “子どもが興味を持つ本を与えて、活字好きにすることが重要”

 これは確かにそう感じることが多く、本に限らず、興味が無いものは何事も長続きはしないなと。ただ、そのきっかけは半ば強制でもいいかなと思います。うちの例では、強制的に放り込んだスイミングは何のかんのと3年目に突入ですが、野球やサッカーは、体験だけで終わっています。。

 “読み方の指導というのは、課題図書を与えるのであれば、
  具体的な「課題」を与えることです。”

 そして、興味が継続するのであれば、どこかのタイミングからは“成果(アウトプット)”を意識させていくことが大事なのかな、とも。

 お二人は、教育の究極的な目的を「信頼」 とされ、ではその信頼関係を作るのに必要なものを「思いやり」「想像力」「ユーモア」とされています。それではどのようにそれらを身につけていけばいいのか、、それに対する一つの“解”として「読書」を位置付けられていて、どのような本を手に取らせればよいのかとの、談義を重ねられています。

 その幅は広く、古今東西の古典名著はもとより、絵本、漫画、小説などなど、非常に多岐にわたるジャンルの本が紹介されています。

 そして“教養”を身にまとうには、次の2点が大事とおっしゃっています。

 “ひとつは学術です。
  論理によって自分の置かれている
  社会的な位置を知って、言語化していくことです。”

 “もうひとつは、小説によって、
  自分の社会的に置かれている位置を
  感情で追体験することです。”

 論理と感情、一見相反するモノのようですが、どちらかに偏るのではなく、どちらもバランスよく“食べていく”のが大事なのかなと。小説などでの虚構の設定であっても、その中で語られている事象に対し、自分自身がどう感じたのかというコトは間違いなく“真実”として、残るでしょうから。

 “いまはどの大学を出ていようと、どのくらいの教養のレベルがあるかという
  国際スタンダードが問われる時代”

 そしてそれらを高いレベルで融合させた教養が、国際的に求められるレベルなのかな、とも。確か“地頭”という言葉を使い始めたのは佐藤さんだったと思いますが、ソレはこのレベルに達して初めて説得力が出てくる言葉なんですかね、、なんて風にも。

 ふと佐藤さんが『読書の技法』で「ビジネスの延長で雑談をするには、専門分野とは全く別の“歴史書や哲学書、さらに小説など、意外な本を挙げる必要がある”」と話されていたことも思い出しました。

 “小説というのは、自分たちは同じ時間を共有して、
  同じ舞台にいるんだという、共通の意識を持たせる文学形式です。”

 本書の後半では『八日目の蝉』を題材にして、人の罪と罰、そして営みの螺旋について読み解こうとされています。こちら、表面的に言えば人さらいの話です、現実的になかなかできるものではないでしょう。だからこそ、追体験としての価値を見いだせるのだと思います。

 仮に私が同じような位置付けで取り上げるとすれば、『シャーロック・ホームズ』のシリーズ、それも短編をあげるでしょう。昔から不思議と好きだったのですが、それは、19世紀ロンドン、そしてイギリスの“在り様”を追体験できるから、と今では考えています(ポアロやルパンには不思議と惹かれなかったんです)。

 なお、井戸さんは5人のお子さんがいらっしゃるそうですが、佐藤さんにはお子さんはおられないそうです。それでも不思議とスルッと入って来る説得力があるのは、、古くはモスクワ駐在時代に現地の学生にポケットマネーで仕事を与えていた、今でも、経済的に困窮している学生を同じように支援しているとのエピソードがあるからでしょうか。

 一貫して、その“軸”がブレない方なのだなと言うことを、感じることができました。我が身を振り返って、ブレない軸をどの程度に持てているのだろうか、なんてことを考えさせられた一冊です。

【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
 『想像の共同体』(ベネディクト・アンダーソン/書籍工房早山)
 『読書の技法』(佐藤優/東洋経済新報社)
 『八日目の蝉』(角田光代/中公文庫)
 『シャーロック・ホームズの冒険』(アーサー・コナン・ドイル/創元推理文庫)
 『こころ』(夏目漱石/新潮文庫)

【補足】
 なおこちら、日頃からお世話になっている「東京朝活読書会(エビカツ読書会)」での【テーマ:昨年読んだ中の一番のお勧め本」】の回で紹介しました。ノンフィクション系と小説系で一冊づつ持っていったのですが、子どもに「読書習慣」を身につけさせたいなと想いが、昨年は印象に残っていたのかな、と。ちなみに小説の方は『楽園のカンヴァス』を持って行きました。

 ご興味を持たれましたら、是非こちらから覗いてみてください~

 >>> エビカツ!~東京朝活読書会の本棚(ブクログ)

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