【ブックトーク】日本(人)にとっての“大きな物語”とは。/『口語訳 古事記 - 神代篇』
“温故知新”、その意味するところは「昔の事をたずね求めて、そこから新しい見解・知識を得ること。(出典『岩波国語辞典』)」で、大元は『論語』からとなります。では、日本人にとっての“古き”とは何になるのだろうか、と言った事を考えていくのに“入り口”となってくれそうなのがこちらです。
『口語訳 古事記 - 神代篇』(三浦佑之/文春文庫)
日本神話を記した『古事記』の神代部分、イザナギ・イザナミから天孫降臨の辺りまでが、わかりやすく&読み易い“口語調”でまとめられています(ちなみに「人代篇」もあります)。
神話である以上、科学的な“事実か否か”で裁断してしまえば、その大半はフィクションに分類されてしまうのでしょうが、、それでもその根底には、日本の国造りの成り立ちや自然や文明との距離感、シンボリックに使われる婚姻などなど、日本人の原風景がつまっていると思います。
そしてそこからは、それらに根差す“日本人の心性”、「自然観」「死生観」「歴史観」といったものが読み解けるのはないかと。
いざグローバル化!とした時に、弱い弱いと言われる日本人のアイディンティティですが、それらを再構築していくためのヒントの一つがここに、あるのではないでしょうか。
個人的にはもうちょっと突っ込んで、、“歴史”は勝者のものではありますが、そんな中でも散りばめられている隠された歴史についての符号なども観てみたいところです。例えば、出雲の国譲りや諏訪での御神渡りなど、“まつろわぬ神々”との闘争と融合と思われるものなど。
また、随所で“婚姻”がシンボリックに使われていて、これは敵対勢力に対して、殲滅戦や民族浄化などではなく、話し合いなどでの“緩やかな融和”を重ねていったとの見方もできるかなとも。この辺りは、古代ローマの在り様とも被せて比較してみたいところです。
イギリスの歴史学者トインビーは言っています、「12-3歳までに神話を学ばなかった民族は例外なく滅びている」と。
日本がこの先の国際化の波に立ち向かっていくには、“日本人としての大きな物語”を持っておかないといろいろと厳しいのではないかなと、、これは“プリンシプル”との理念とも通じるのではないでしょうか。
自分が大事にしているものがあるからこそ、相手にも大事なものがあるってことが理解できる、そのためには“多様な価値観”を知っておかないといけないでしょうし、そこに至るための“教養”を身につけておかないとなと、、そんなことを考えさせてくれた一冊です。
【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
『日本人の原点がわかる「国体」の授業』(竹田恒泰/PHP研究所)
『ぼおるぺん古事記』(こうの史代/平凡社)
『世界のトップスクールが実践する考える力の磨き方』(福原正大/大和書房)
『ハーバード白熱日本史教室』(北川智子/新潮新書)
『ローマ人の物語』(塩野七生/新潮社)
【補足】
なお、並行して『ぼおるぺん古事記』というシリーズも読んでいたのですが、こちらも導入本としていい感じです。全編がボールペンで描かれた漫画で、ほのかな温かみを感じる味わい深い作りとなっています。
ちなみに先日、お世話になっている「東京朝活読書会(エビカツ読書会)」での【テーマ:温故知新】の回で紹介しました。日本語で説明できない事を、英語で説明できるわけがないだろうとは、なるほどと。英語がしゃべれても中身のあることを話せないとなぁ、との自省も込めて。。
ご興味を持たれましたら、是非こちらから覗いてみてください~
>>> エビカツ!~東京朝活読書会の本棚(ブクログ)