【情報サービス】「情報資源」としての電子書籍、とか。
ちょっと前になりますが、アマゾンが電子書籍に関する興味深い特許を取得したとの記事を見かけました。「電子書籍を拡張し、補足的なコンテンツを読者に合わせてカスタマイズできる技術」とのことで、補足情報として註釈やイラストを表示したり、SNS経由での友人の二次創作や感想などを共有したり、といった活用方法がありそうとも。
個人的には、教育分野での活用ができそうとあったのが興味深く。特に教科書は情報資源としてはフロー情報の属性が強いですから、それを補完する副読本(情報)を、地域、生徒、学習進度(深度)によって柔軟に最新の情報に変えることができるようになれば、幅がでてくるだろうなぁ、と。
ここ数年、毎年のように「電子書籍元年」との言葉を耳にしてきましたが、いまいち普及しきれていないのは、ガラパゴスと揶揄されるシステム的な仕様もそうですが、活用シーンが「紙の本(印刷物)」の延長、もしくは代替としてしか位置づけられていなかったからとも、思っています。
「情報資源」として見ると、ざっくりと分けて「フロー情報」と「ストック情報」のどちらかを扱うことになりますが、個人的には「紙の本」は前者を苦手としつつあるかなと。例えば、時刻表や為替レート、統計情報などの、頻繁に変化(劣化)したり、編集を必要とする情報は、電子書籍形式の方が更新コストも速度も段違いだと思います。
それではいっそ全てを「電子書籍」に切り替えればいいかというと、それはそれでちょっと違うかな、とも感じていますが。
例えば、既存の情報資源に対しては、電子書籍の形式でアクセスできるようにデジタル形式への変換作業が必要となります。そして、今のデジタル形式が永続的に使用できる可能性も低いため、定期的な刷新が必要にもなるかなと、これらは結構なコスト増だと思います。。
また、インターネットへのアクセス環境(ICTインフラ、閲覧端末等)の整備が前提となるため、その環境が無いと利用できないのは「デジタルディバイド(情報格差)」にもつながりますし、既にその弊害も顕在化しつつあります。
そう考えると、高い耐久性と手ごろな値段、容易なアクセス性や反復性を実現している「紙」の凄さをあらためて実感します。
「紙の本(印刷物)」の広がりが「識字率の向上」と関連していたように、今後「デジタルディバイド」が解消されていけば、自ずと「電子書籍」も広がっていくとは思いますが、それぞれが得意とする部分は異なっていますので、どちらか一方だけに集約されていく事も無いかなと考えています。
この先、個々人の「デジタルディバイド」へのケアがどうなされていくのかも興味はありますが、私見では公共の情報サービス機関の一つである「図書館」がその任を模索しているのかなと感じています。この辺り、欧米の既存図書館や電子図書館などの事例も踏まえ、ちょっと見ておきたいですね。。