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仕事に絡んだ四方山話などを徒然にと思いつつも、読んで興味深かった本ネタが多くなりそうでもあります。

【ブックトーク】五つ目のR / 『レスポンシブル・カンパニー』

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 通勤時の乗換駅でもある「池袋」ですが、いい感じに書店が揃っています。普段使用する東口だけでも「リブロ」「ジュンク堂」「三省堂」が固まっていて、、腰を落ち着けて眺めていると、気づいたら小一時間位は経っていることもしばしば。また、西武線の池袋駅構内にも「明和書店」があり、新刊本をチェックする位であれば十分だったりもします。

 さすがに日参で購入するほどの余裕はないので、ブラウジングで済ますことが大半なのですが、、そんな中、その表紙の「目力」に惹きつけられたのが、こちらになります。

 『レスポンシブル・カンパニー』(イヴォン・シュイナード&ヴィンセント・スタンリー/ダイヤモンド社)

 題材は「パタゴニア」という、アウトドア関連の製品を取り扱っているアメリカの会社です。「我々は、返せないものを自然から借りてしまった」として、広い意味での「社会」、、自然、環境、地域、顧客、従業員など、「企業活動に関わる全てに対して責任を果たしていくこと」を、ミッションステートメントとしています。

 そして、このミッションを実現していくためには「自分の環境負荷を知る、改善を心がける、得た知識を共有する」必要があるとしていて、今までの大量生産&大量消費は企業の利益には直結するが、ただそれだけに過ぎず、今後はそれとは別の次元で、その他の環境(労働、自然、地域等々)へのダメージを見据えていかねばならないとも。

 確かに言われてみれば納得のいく話で、今後は「企業の社会責任」と真摯に向き合っていく必要があるのだろうなと思います、、日本も昨年から「ISO26000」に批准してますし。また、それを遵守していない企業は、社会的有用性を失い、緩やかに衰退していってしまうのかな、とも。

 大地の果てが有限である以上、安価な労働力の供給元にも限りがありますし、消費する市場もまた、同じでしょう。未だに、消費させたいモノは溢れかえり、その消費市場は無限に在るかの如く喧伝されていますが、、徐々に「いまの生活給はもう少し基準が低く、四人家族を支えられる額の半分をひとりが稼げるようにすべき」といった、生活規模の伸び代の限界も耳にする機会が増えていると思います。

 「パタゴニア」は、そんな大量生産・大量消費のビジネスモデルに疑問に感じ、「自然が再生できる範囲に自然の消費を抑える」ことを念頭に置いて、「五つのR」、「リデュース(資源消費を削減する)」「リペア(修理して使う)」「リユース(再利用する)」「リサイクル(再生する)」「リイマジン(再考する)」を提唱しています。

 目先の売上(利益)に囚われがちなコトが多い中、「企業は、顧客が心の底から欲しいと思うモノを売るようにすべきである。」として、長く良いものを継続的に、安売りではない適正な価格で提供し続けようとの理念と、それが実践できているのが素晴らしい。そして、そのような積み重ねがあるからこそ「財布のひもを締めねばならない場合、尊敬・信頼する会社から買おうとする」と自信を持って言い切れるのでしょう、、選ばれるのは「私たち(パタゴニア)だと」。

 といっても、この「パタゴニア」も創設時からその境地に至っていた訳ではなく、そこに行き着くには様々な試行錯誤があったようです。いろいろと失敗をしながらも、継続して新しい価値観や知識を注入しながら、徐々に今のような理念を形成していったようで、、本書はその経緯も踏まえて丁寧に紐解かれていて、非常に興味深く読めました。

 そうそう、こんななんとも重い「社会的責任」と真摯に向き合っている「パタゴニア」ですが、その一方では「仕事を通じて元気になりたいと願うものだ」として、仕事中でも社員をサーフィンに行かせてしまうような、なんともフランクな精神も併せ持っています。どこまで意識しているのかは不明ですが「儲かる会社にしたいのであれば、いまいる社員が一生懸命、喜んで働くようにするのが得策」というのを、ごくごく自然体に実現しているのかなとも。

 個人的には、冒頭で述べられている「日本基準」というのがかなり意外でした、、頑張らないとなぁ。。また「トリプルボトムライン」、CSRの考え方の延長のようですが、、今後日本でも会計方法の一つとして浸透していくのでしょうか、ちょっとどのようなものか見ておかないとな、とも。

 「五つ目のRは、ほかの四つを支える土台のようなものである」とあるように、常に考えて、柔軟に対応していく必要があるのだなと、そんな事を考えさせられた一冊です。

【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
 『増補改訂版 なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか』(青木高夫/ディスカヴァー携書)
 『自分の仕事をつくる』(西村佳哲/ちくま文庫)
 『パーミッション・マーケティング』(セス・ゴーディン/海と月社)
 『100円のコーラを1000円で売る方法』(永井孝尚/中経出版)
 『生活保護が危ない』(産経新聞大阪社会部/扶桑社新書)

【補足】
 そんなこんなで、アウトドア系のモノを探す時には、まず最初に「パタゴニア」から探すようになってしまいました、、フリースとかバックパックとか欲しいものもいくつかあるので、いろいろと検討中です。

 また「社会保障は、欧州と日本を中心に先進工業国の大半でほころび始めた」と述べられていたのも興味深く、、日本でも生活保護問題が取り沙汰されるようになってきていますが、他国でも同じようなことが起きているのかな、、とも。

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