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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

製図のデジタル化(CAD化)で新人教育がやりにくくなった話

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こんにちは。文書作成能力向上研修を手がける開米です。

昨日は読解力・図解力の公開講座のため名古屋に行ってました。
そこで終了後に某自動車部品メーカー社員さんと国際特許事務所に務める弁理士さんと一杯飲んでいたときのこと。
何の流れでか、CADの話になりました。そこで私は20年ぐらい前に読んだある本を思い出したんです。

Yさん:どんな話ですか?
開米:それがですね、製図作業がデジタル化(CAD化)されたことで、新人教育がやりにくくなったという話です
Yさん:ほうほう
開米:なんでも、手書きで製図をしていた時代は、新入りが書いた図面をベテランに見せると、問題のあるところにすぐに指摘が入ったのに、CADになるとそれが難しいそうで
Yさん:ふむふむ
開米:どうしてかというと、手書きの線には心の迷いが出るというんですよね
Yさん:ほう。
開米:自信が無いまま書いたところは線が弱くなったり揺らいだりする、ベテランが見るとそれがすぐわかるから、そこで指導が出来た。けれどCADになってしまうと全部同じ線なのでわからなくなってしまった・・・という話なんですけれど、そういうことって本当にあるものですか?

と、私はYさんに聞いてみました。Yさんはデンソーで自動車関連部品の開発をされていた方なので知っていそうだったからです。

Yさん:はい、そうですね、ありますよ、実際。
開米:あるんですか! じゃあこの話は本当なんですね!
Yさん:はい、本当です。あと、CADの落とし穴というのが他にもあって・・・なんというか、引いた線の通りにモノを作れるような錯覚をしてしまう、というのがですね・・・
開米:引いた線の通りにモノを作れるような錯覚?
Yさん:ええ、なんというか、僕らが手書きで製図してた頃というのは、平面図を書きながら、頭の中で立体をイメージしてたので、図面を書きながら、モノを作っている感覚があったんですよ。だから、変なものを書いても早めに気がついたんですよね。ところが今の3D-CADの時代になると、バーチャルな世界できれいな線を引けてしまう、それを3Dで簡単に見れてしまう、その結果、実際には製造できないような図面を引いてしまってもなかなか気がつかないみたいなんです。
開米:へえーーーーー
Yさん:CADマシンの画面の中ではキレイに見えるんですけどね。実際には作れないということがわからない。そんなことがありますね。

というとこで、20年前の聞きかじりの知識に思いがけず証言が得られた一夜でありました。
もちろん、そんな副作用があるからといってCADを使わない、というのもおかしな話で、便利なツールの便利さは活かしつつ、欠点は何らかの方法で補うことが求められるのでしょう。一つの欠点だけで新しい技術を放棄するというのはおかしな話ですね。

原子力についても、私達はそのような姿勢で、つまり欠点をうまく制御する方法を見つけながら使いこなすという姿勢で向かいたいものです。

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