オルタナティブ・ブログ > 開米のリアリスト思考室 >

「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(106)ニュージーランドでの鯨集団死を福島の事件と詐称するデマ

»
こんにちは。文書作成能力向上トレーナーの開米ですが、今日は放射能デマの話。

こちらは数日前に出た英文記事ですが・・・
"BREAKING... Fukushima Disaster Leaves Hundreds of Whales Radiated to Death
 -National Report "
http://nationalreport.net/breaking-fukushima-disaster-leaves-hundreds-whales-beached/

この記事中にこういう一節があります。
Reporting from the village of Fukushima I was shocked to find on my arrival that hundreds of whale carcasses were found along the beach early this morning which now extend up and down the shore as far as I can see. - See more at:
「福島の海岸に何百頭もの鯨の死体が漂着したのを、この朝、自分で見た」・・・・と称する文面に写真が続いているのですが、この写真は実は2010年にニュージーランドの海岸で撮影されたものです。
↓こちらが実際に起きた事件。ニュージーランド、in 2010。
"Dozens of whales die after 58 are stranded on New Zealand beach - CNN.com"
http://edition.cnn.com/2010/WORLD/asiapcf/08/20/new.zealand.whales/index.html

ご丁寧なことにCNNが報じたオリジナルの写真の右端を切り落として使ってますね。該当部分に子供を含む地元住民と思われる姿があるのは都合が悪かったのでしょうか。

ショッキングな写真つきで流される放射能デマにはこういうものがよくあります。写真の出所を辿ると全然別な事件、というわけです。

やはり「ショッキングな写真」を使って危機を煽る情報はデマ率が非常に高いです。信憑性を十分検証する姿勢を忘れないようにしましょう。

なお、デマを掲載した nationalreport.net というのは、"America's #1 Independent News Team" とか自称しているようですが、要するに「"citizen journalists"」のportalで、原子力論考(101) せめて一次ソースを確かめましょうよ で取り上げた Alexander Higgins と同じような個人ブロガーの集合体のようです。ただし、Higgins のほうはまだしも報道をもとにした誤解という言い訳ができますが、今回のこの記事はNZの写真に対して「福島で見てきた」というテキストをかぶせており、完全に捏造と言える分、より悪質です。

■開米の原子力論考一覧ページを用意しました。
→原子力論考 一覧ページ
Comment(2)