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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(105) 燃料費増加は1人あたり3万円(2013年)

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こんにちは。アイデアクラフト・開米瑞浩です。

まずはこちらをご覧ください。
経済産業省 総合資源エネルギー調査会 第2回会合 資料2です。

エネルギーコストと経済影響について
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/2nd/2nd-2.pdf (pdf)

p.3 にこういう記述がありますね。

原子力発電の稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる2012、2013年度の燃料費の増加について試算したところ、2012年度は約3.1兆円、2013年度には約3.8兆円の増加と推計される。(1人あたり約3万円の負担)

燃料費の増加額は、1人あたり約3万円、です。
4人家族なら12万円ということです。
しかもこれは2013年度だけの数字ですので、2011年からの原発停止分をすべて含めて計算すれば30万円ほどになります。

しかも、原発再稼働の見通しはまだ立っていません。今年度中に再稼働できそうな原発はごく限られており、2014年以降も「原発停止による燃料費増」は続く見込みです。

「原発を止めると1人あたり年間3万円の負担増になります」
ということを、菅直人・野田佳彦の元・前首相は説明したでしょうか?
大新聞は、TV局は報じたでしょうか?

もしそれが広く知られていれば、

「いやそれでもかまいません、年間3万円負担が増えても原発を止めてください」

という選択をする国民はどれほどいたでしょうか?

たとえば不動産や金融商品を契約する場面で、こういう重要な事実を説明せずに契約させると重要事項説明義務違反に問われ、悪質な場合は業者に業務停止を含むペナルティが課せられます。

そういう重大な、菅直人元首相にとっての「不都合な真実」を隠蔽した上で行われてきたのがこの2年半の政策であるということを、私達は直視しなければならないのだと思います。

菅直人に責任をかぶせるわけにはいきません。
菅直人という首相の暴走を許してしまったことは、国民の責任なのです。

なお、「燃料費の増加が1人あたり3万円(2013年度)」といっても、電力のすべてを家庭が使っているわけではないので、それがそのまま家庭の負担増になるわけではありません。しかし、日本経済全体で負担しなければならないことには変わりありません。

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