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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(91)電力自由化で何が起きたか、他国の前例に学んでみては?

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こんにちは。このところ暇があればツバメの撮影に行くのですっかり日焼けしてしまった文書化能力向上コンサルタントの開米です。

先日、"原子力論考(88)発送電分離が電気料金アップを招くワケ" と題して、電力自由化・発送電分離は電気料金アップを招く可能性が高い、と書きました。

その理由のひとつが、「電力自由化によって経営の安定が保証されなくなると、巨額の長期投資ができなくなる」ことですが、ちょうどその件を詳しく書いてくれている記事が出ましたのでご紹介しましょう。

"10年後に迫る停電の恐怖 | NPO法人 国際環境経済研究所 主席研究員 山本隆三"
http://ieei.or.jp/2013/06/yamamoto-blog130611/

前半で英国の事例が紹介されています。要点は、

a) 英国では電力自由化の結果、発電設備に対する収益保証がなくなった。
b) その結果、原子力発電所、天然ガス火力発電所を新設する企業は今後出てこなくなる可能性が強い。
c) そのため既存設備の老朽が進む2020年代には停電が発生する可能性が強いと英国政府は予想している。
d) その事態を打開するために英国政府が考えた政策が、「電力の固定価格買い取り制度」と設備を建設すれば一定額の支払いが保証される「容量市場」だった。

・・・と、いうことですが、何かおかしいと思いませんか。
英国は「電力自由化」したはずでしょう。
その英国でなぜ「電力の固定価格買い取り制度」なんてものが必要なのでしょうか。それは「自由化」とは真っ向から反する政策ではないですか。

と、イギリス人に小一時間問い詰めたいところですが、結局、「自由化」をしてしまうと「電力の安定性」は維持できないのですよ。

電力インフラには巨額の投資が必要です。その投資を回収するためには長い時間がかかります。その長期間の収益が保証されない案件には投資は集まりません。結局どこかで保証する必要が出てくるわけです。

"電力市場を自由化すれば、老朽化した火力発電所の建て替えるリスクを取る事業者が全く出てこない可能性がある。仮に、出てきたとして、資金調達ができるか疑問だ。将来の収益見通しがない事業に金を貸す銀行はない" http://ieei.or.jp/2013/06/yamamoto-blog130611/

というわけですね。

そんな話は聞いたことがない、としたら、それは日本の大手報道機関が報道機関としての役割を果たしていないことの証明です。
電力事業に求められるファイナンスの条件を考えたら、これは論理的に当然の話で、意外でも何でも無いことなんです。それを一般市民に理解できるように報道しない報道機関に、「報道」を名乗る資格はあるのでしょうか。


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