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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

同じ論理構造を持った「たとえ話」をするように気をつける

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昨日の「精密に練り込まれたたとえ話で「推論」を疑似体験してもらう法」の続きです。

 ここから先は、昨日の記事後半の「電力シーソー」の部分を読んでからご覧ください。

■「電力シーソー」をめぐる対話
以下、対話形式でお届けします。

 電平くん:・・・ちゅうわけで、電気は消費量と同量を発電しなきゃいけねえのさ
 市民さん:発電のほうが多ければいいっていうんじゃなくて?
 電平:いかんいかん、同量でなきゃあいかん。ただまあ、発電のほうが多かったら、発電やめればいいわけだから、まだ対応できっけどよ
 市民:消費量のほうが多かったら?
 電平:消費量のほうが多かったら・・・どうなると思うかえ?(質問1a)
 市民:えっ・・・
 電平:電力シーソーの「消費」の側にだけ荷物が増えて、「発電」のほうでそれに見合った量を増やせなくなったら、そんときゃどうなると思う? (質問1b)
 市民:シーソーが傾く・・・? (推論1)
 電平:そうよ! で、傾いたらしまいにゃどうなる?(質問2)
 市民:消費のほうが下がってガタッと地面にぶつかって・・・(推論2)
 電平:それだよ! そこで「ドンガラガッシャ!!」でこんなんなっちまうのさ(結論イメージ)
seesaw-crash.PNG
 市民:こ、これは・・・・
 電平:これが、「予期せぬ大規模停電」ってやつよ。発電所が全部シーソーから落っこちてんだろ? そうなりゃ当然電気はどこにも届かねえ
 市民:つまり・・・大停電?
 電平:そういうこっちゃ。で、一度これが起きちまうと復旧するのに大変な時間がかかるんだな。だからよ、これだけは起こしちゃいけねえんだな。


 なにやら突然べらんめえ調のキャラが出てきて驚かれたかもしれませんが(笑)、このやりとりで電平くんはいくつか質問をして市民さんの「推論」をうながしています。
 そのうえで、「結論イメージ」を視覚化して「予期せぬ大規模停電」という現実の事象へと結びつけています。

 電力の需給をシーソーのバランスになぞらえることで、

    バランスが崩れるとシーソーが傾き、
    それが修正されないと破局(ドンガラガッシャ!)が訪れる

 という事態を直観的に推論しやすくしているわけですね。

 ここで使った「電力シーソー」のようなたとえ話が、「精密に練り込まれたたとえ話」です。電力システムの平常時における「同時・同量原則」を「シーソーのバランス」にたとえ、需給が崩れたときの「電力品質の不安定化」を「シーソーが傾く」事象にたとえ、破局が起きた時の「大規模停電の発生」を「ドンガラガッシャ!」にたとえています。

PE-SS-analogy.PNG こんなふうに、本題のテーマ(電力)と論理的に同じ構造を持つたとえ話を慎重に選ぶと、「素人」でもある程度その論理構造に沿った推論ができるため、結論に対する理解・納得が得られやすくなります。

 また、こうして得た理解は、もちろん前提知識そのものをきちんと学んで得た理解とは違いますが、ただ単に結論を与えられてそれを覚えようとした時よりも忘れにくく、誤解もしにくいものです。

 というわけで、専門的な知識を素人に説明して理解を得なければいけない、という状況で苦労されている方はぜひ試してみてください。

 その場合のポイントは2つあります。
 1つは、問題の本質と同じ論理構造を持った「たとえ」の選択。ここはとことん考え抜いて選ぶ必要があります。この「たとえ」を安易にやってしまうとかえって誤解を促進することになってしまいます。
 2つめは、一方的に説明しないこと。電平くんがしていたように、「質問」をして「推論」をうながしてください。人は「質問」されると頭が働きます。そして、「こうじゃないかな?」と自分で考えた答えが肯定されると理解・納得が強化され、人間関係も良くなるものです。

 そのためには、自然な推論によって求める「結論」が出てくるような、「たとえ」を慎重に選ばなければいけないわけです。この「たとえ」の選択が非常に難しいのですが、やってみる価値はあります。ぜひ試してみてください。



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