「オリンピックのスポンサーになりたい!」そんな無茶振りを上司に言われている広報担当者の方へ
今年は大きなスポーツイベントが立て続けにあります。既に閉幕しましたが2月からは平昌冬季オリンピックパラリンピック。6月にはワールドカップロシア大会が控えています。そしてなんといっても2年後には東京オリンピックパラリンピックが開催され、これからも様々なスポーツの話題が増えてくることでしょう。
■オリンピックで何かしたいと思う企業が増えている?
そんなスポーツに関心が高まっている中、平昌オリンピックでの日本人選手の活躍もありスポーツを支援したいと考える企業も増えてきているのではないでしょうか。私の会社には平昌オリンピックよりも前から、これは東京オリンピックパラリンピックが決まってからなのですが、「なにかオリンピックでできないか」と言うお問合せをちらほら頂きます。
ただお話をよくよく聞いてみると「オリンピックという言葉を使えないか」「オリンピックに出場する選手を使ってPRできないか」もしくは「何をするか決まってないが、なにかオリンピックを使えないか」という話が多くあります。
弊社では残念ながらオリンピックに関するお仕事はお受けできない旨を申し上げ、電通さんに問合せをしてみてくださいといった感じで話をするのですが、実は多くの御担当者の方は元々オリンピックを支援する予算も費用対効果もオリンピックと言う言葉を使うことがそもそも難しいことも理解しています。
社長、もしくは上司から無茶振りのような感じで「オリンピック」と使って何かPRしろと言われ、ネットで検索したら弊社がヒットしたと言う形です。
■オリンピックのスポンサーって何ができるの?
私も実のところオリンピックのスポンサーに関しては良く分かりません。ネット上での情報を以前まとめたので、ぜひそちらもご覧ください。
http://sponsormarket.info/?p=122
ゴールドパートナーともなると年間25億円程度、さらにスポンサーのランクに応じて細かく規定が決まっています。かなりの規模の会社でないとスポンサーになるのは難しいことがわかります。
ではスポンサーにはならずに選手を所属させると言う方法はどうでしょうか。これに関しては、少し前にオリンピックに出場する選手が所属する企業が壮行会を行い、それをマスコミにプレスリリースや取材させることがNGだという報道がありました。
https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20180118/k00/00e/050/277000c
こちらに関しては現在国会議員からの陳情もあり、学校や自治体に関しては制限が緩められましたが、企業に関してはまだ決着がついていません。海外ではこう言った規制も緩和されている方向だと言う記事も見たことがあります。
ちなみにオリンピックに出場する選手の肖像権は基本的にJOCが一括で管理しているため、自社に所属する選手でも様々な手続きを踏まないと商業的なPRには利用できない可能性もあります。
もろもろ詳細は把握できていないので、オリンピックを活用したいと考えている企業は電通さんやJOCに問合せをしてみると良いでしょう。もう締め切っているかもしれませんが。
■オリンピックでなにかやれと言われたら
さてオリンピックを活用したマーケティングがかくも複雑な権利関係の上に成り立っているということを踏まえたうえで社長から「オリンピックでなにかやれ」と言われたらどうでしょうか。
普通、予算のことを話せば冷静になって諦めてくれそうなものですが、それでもなにかやりたい!と言われたらこういう質問をしてみましょう。
「オリンピックスポンサーの名前、何個か挙げてもらえますか?アルソック除いて」
ほとんどの方はこの質問に答えることはできないでしょう。ちなみにJOCのサイトにはオリンピックスポンサーの一覧が掲載されています。
https://tokyo2020.org/jp/organising-committee/marketing/sponsors/
これを見ても「この企業、オリンピックスポンサーだったんだ」というイメージではないでしょうか。
すなわちオリンピックスポンサーになっても知名度はそこまで上がらないと思った方が良いです。アルソックはオリンピック選手を前面に押し出してTVCMを豊富に流しているのでオリンピックスポンサーであることを知っている人は多いと思いますが、それはTVCMを大量に流しているから知名度があるとも言えるでしょう。
「なんでオリンピックスポンサーの名前が出てこないのにスポンサーになろうなんて思うのですか?」と逆に聞いてあげればまた少し冷静になってくれるはずです。きっと。
■オリンピックは宣伝広告する場所ではありません
それでも「オリンピックを!」とひかなければそもそもオリンピックパラリンピックは何か宣伝広告する舞台ではないと言うことを教えてあげましょう。主役はあくまでも選手であるので、基本的にオリンピックの試合会場では一切の宣伝行為は認められていません。それはオリンピック憲章にも明記されています。
1- オリンピック・エリアにおいては、いかなる種類のデモンストレーションも、いかなる種類の政治的、宗教的もしくは人種的な宣伝活動は認められない。オリンピック施設の1部であると考えられるスタジアム、およびその他の競技エリア内、およびその上空ではいかなるかたちの広告も許可されない。
スタジアム内あるいはその他の競技グラウンド内では、商業目的の装置や広告用の看板などの設置は許可されない。
2- なんらかのかたちでの宣伝や広告を許可するための原則および条件を決定する権限は、IOC理事会だけが持つものとする。
もちろんオリンピックの公式スポンサーと言う存在があるので厳密にはそうだとはいえませんが。とにかくオリンピックは選手のために存在している、スポンサーはそれを支える存在であり、知名度を上げようなどと考えるのは間違っていると伝えましょう。
ただまあ、こういう言い方では逆に怒られてしまうかもしれません。しかし最後に「オリンピックはあくまでも選手が主役。スポンサーは宣伝広告をして知名度を上げることが目的ではないので費用対効果を追い求めない」と言うことを納得していただければいいと思います。万が一本当に東京オリンピックのスポンサーになれたとして、終わった後に費用対効果を見られるのが一番厳しいと思うので。
ただいちばん簡単なのは電通さんかJOCさんにオリンピックのスポンサーになれるか聞いてみるのが一番です。既に受付終了しているかもしれませんし、そこでお断りされたらそれまでなので。元も子もない話ですが。
おそらくこれから東京オリンピックに向けて多くの企業がなにかスポーツを絡めてPRしたいと思ってくるはずです。今後、社長や上司にオリンピックを使ったマーケティングをしろと言われている方はまずはオリンピックのスポンサーを何社知っているかを社長や上司に聞いてみましょう。
(スポーツスポンサーマーケット:衛藤 涼太)