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世の中にはまだ知られていないスポーツがたくさんあります。日本では知られていないけど海外では有名だったり、いまこの瞬間に生まれているスポーツや、障害者の方が楽しめるスポーツなどなど。このブログでひとつでも新しいスポーツを知っていただき、ぜひ楽しんでもらえればと思います。

日本代表監督に聞く ウィルチェアーラグビー日本代表監督 岩渕典仁さん

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 色々な日本代表監督にお話を聞く、「日本代表監督に聞く」3回目はウィルチェアーラグビー日本代表監督の岩渕典仁さんです。ウィルチェアーラグビーは頸髄損傷をした人が車いすに乗って行うスポーツです。そのウィルチェアーラグビー日本代表の監督である岩渕さんにお話を伺いました。

 

PA083424.jpg-ウィルチェアーラグビーとはどのようなスポーツですか?

 1977年にカナダで頸髄損傷者によって考案されたスポーツです。その当事、パラリンピックには頸髄損傷者らが中心となる団体種目はありませんでしたので、パラリンピックの種目にすることを考えていたようです。

 その後、対象者は頸髄損傷(四肢麻痺)者だけではなく、四肢の切断や脳性麻痺者など、両上肢、両下肢に機能障害を持っている人まで拡大しました。

 1996年のアトランタパラリンピックでデモンストレーション競技として、そして2000年のシドニーパラリンピックで正式種目として採用されました。日本では頸髄損傷の方が行うスポーツとしてはツインバスケットボールが考案(1987年に第1回日本選手権開催)されています。そして1997年に日本ウィルチェアーラグビー(旧クアドラグビー)連盟が設立されました。

 コートはバスケットボールコートと同じです。接触すると言う意味ではラグビーと、そしてボールを持っていない人にもぶつかることができるのはアメリカンフットボール、その他バスケットボール、バレーボール、アイスホッケーなど様々なスポーツの要素を取り入れて、頸髄損傷の人が行っても楽しめるスポーツになっています。

<非常に当たりが強いスポーツです>

 ボールはバレーボールに似ていますが、少し表面がざらざらとしていてキャッチしやすいようになっています。このボールをゴールラインまで運ぶ、タッチダウンのような形ですね。そうすると得点になります。

 見ていると分かるのですが非常に当たりの激しいスポーツです。車いすの形状には大きく分けて攻撃用と守備用の2種類あります。またコートには4人の選手がいるのですが、障害に応じた持ち点がある一定の点数以下にならないといけません。

 非常に当たりの激しいスポーツではありますが、女性も参加できます。女性が参加する場合は障害の持ち点が若干優遇されるようになっています。海外のチームでは女性の選手も少なくありません。

 ベンチも含めた人数は12人。そのうち4人がコートに入り、先ほどのポイントを考慮しながら選手交代を行います。選手交代は何回でもすることができます。


-ウィルチェアーラグビーの魅力について教えてください。

 まずはタックルですね。車いす同士がここまで激しくぶつかっていいのかと思えるようなタックルをします。スペースを確保したりするためにボールを持っていない選手へのタックルも行います。この激しいところが魅力のひとつです。

 そして頸髄損傷、四肢に何らかの障害を持っている人が対象であることも魅力だと思います。四肢に障害を持っている方は日常生活を送ることも簡単なことではありません。重度な障害を持っている人がここまで激しいスポーツをする、そのギャップも魅力です。

<日本の強みはチェアワーク!>

 普段の生活では大きなハンデを背負っている人が車いすに乗ったとたんに健常者よりもスピーディに動けるんです。そしてそのスピードが日本チームにとっても多きな武器になっています。

 また、チェアワーク(車いすの操作)、ストップ、ダッシュといった細かい技術は世界でも有数のものを日本代表チームは持っています。観戦する人もここに注目してもらうと楽しんでみることができると思います。

-岩渕さんがウィルチェアーラグビーにかかわるようになったきっかけを教えてください

 日本ウィルチェアーラグビー連盟が設立された当時、私は学生でした。まだ日本選手権も開催できていない、そんな時期に国立障害者リハビリテーションセンターでウィルチェアーラグビーに出会います。高校、大学とラグビーをやっていましたので同じラグビーと言うキーワードで興味を持っていました。

 当たりの激しいスポーツ、男のスポーツだと感じすぐにのめり込み、選手の日常生活の介助、遠征に帯同するボランティアとして係っていくようになります。最初はスタッフ、審判もいない状態だったので、いろいろな役割も担っていました。

<そして日本代表監督へ>

 2003年に千葉でオセアニアゾーンの国際大会を行った際に、オーストラリア、ニュージーランドと言った海外の選手を間近に見ることができ、そのアグレッシブさにもっともっとウィルチェアーラグビーを勉強したいと思うようになります。

 2005年に再びオセアニアゾーンの大会が開かれ、国際審判の資格を取りました。そしてウィルチェアーラグビーの最新のルールを日本に伝達していく活動を行うようになります。2005年からは強化委員として、2009年から強化委員長(兼日本代表監督)として強化普及に努めています。

 

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 ラグビーを学生時代にやっていた経験も役に立っていると思います。タックルやスペースをいかに作るか、2対1、1対1のミスマッチをどうやって作り出すか、そしてなんといってもチームスポーツであると言うこと。ラグビーは15人制や7人制がありますが、ウィルチェアーラグビーはコートの中には4人しかいません。

 4人のうち1人だけずば抜けた実力があっても、その選手がマークされれば残りの3人が頑張らなくてはいけない。そして一試合を通して考えればベンチを含めた全員が頑張らなければならない。そういった意味では仲間を信頼し、監督、キャプテンはどうやってチームを盛り上げていくかを考えるかもラグビーと共通していますね。


-監督としてチームをまとめるために心がけていることを教えてください

 まずは選手一人一人とコミュニケーションを図り、自分の考えをしっかりと伝えること。そして選手の考えていることを聞き出すことです。選手だけではなくスタッフともコミュニケーションを取ります。それぞれの自己目標、そしてチーム目標をコミュニケーションを図り共有していく。

 選手は北海道から沖縄まで全国にいるのですが、日本代表の練習としては月一回しかありません。そのためメールなどを使って私と選手、スタッフだけでなく、選手同士、スタッフ同士、選手とスタッフでも情報を共有していきます。仲間を知ることが、仲間を信じることにも繋がっていきます。

-月に一度しか会えない中でモチベーションの維持などはどのように行っていますか?

 目標がないと動機付けをすることはできません。チームの長期的な目標は大体共有しています。それはパラリンピックでメダルを取ること。そして個人の短期的な目標や長期的な目標を設定する。これは国際大会のことかもしれないし、一回一回の合宿のことかもしれない。

 目標設定をした上で、その目標を達成するためにはどうやって練習をするのかなどのプログラムを作っていきます。モチベーションを維持するためにもこの目標設定は重要になります。さらにその目標を共有することでチーム全員で戦っていくことができます。練習メニューを作れるのは目標があるから、そして継続できるのも目標があるからです。

 

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-ロンドンパラリンピックの感想をお聞かせください

 ロンドンパラリンピックはメダル獲得を目標にしていました。まずは予選で2勝して決勝トーナメントに進み、その後の決勝はチャレンジ精神でやろうと。予選では地元イギリスと世界ランキング1位のアメリカと同組になりました。イギリスは世界5位で対戦成績はイギリスのほうが上でした。このイギリス戦に勝ってベスト4に進もうと。

 イギリス戦は一万人近い観客、当然ほとんどがイギリスの応援とアウェーの状況でした。しかし終始リードを保って勝利することができ、決勝トーナメントに進出。過去のパラリンピックでは8位、7位だったのでベスト4は最低限の目標だったので、その時点でひとつ目標はクリアし、次の目標であるメダル獲得へ向けて戦っていくことになります。準決勝はオーストラリア戦でしたが、残念ながら敗退してしまいました。

<3位決定戦の結果は・・・>

 そして3位決定戦にまわるのですが、相手は予想をしていたカナダではなく再度世界1位のアメリカと戦うことになります。もうひとつの準決勝アメリカ対カナダでアメリカが負けてしまったのです。正直、何回戦ってもアメリカには勝てる率は低いです。結局3位決定戦でも敗退し4位と言う結果になりました。この結果はやはり非常に悔しいです。

 しかし、アメリカ、オーストラリアには明らかに力の差があり負けてしまいました。たらればの話になりますが、3位決定戦の対戦相手がカナダであればメダル獲得ができたのではないかと思うことがあります。しかしこの結果は受け入れなければならない。逆に今回はベスト4に入ることができたので、5位以下のチームに負ける気はしません。

 アメリカ、オーストラリアなどの上位チームとの差は選手層の厚さだと思っています。日本はスターターの4人は強く、中心となる選手は2人います。しかし、この2人を下げると一気に戦力が落ちてしまいます。

 上位チームにもエースと呼ばれる選手はいますが、その選手が交代したとしても日本に比べて戦力の下がり具合が低い。日本は常にエース格を出していかないといけないので、負担が多くなりどうしても疲れてしまう。この層を厚くしていかないといけません。

 

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-最後に岩渕さんの夢や目標を教えてください

 これからリオデジャネイロパラリンピックに向けて考えていかなくてはいけません。日本ウィルチェアーラグビー連盟関係者の目標は金メダルを獲得することです。2010年の世界大会で3位になってからメダル獲得は夢ではなくなりました。2010年から常にベスト4を維持しているのであとはメダルの色の問題。アメリカ、オーストラリアに対してはまだ力の差がありますが、目標設定としては間違っていないと思っています。

 個人的な夢としては、私は障害をもった人、もしくは高齢者の方が早い段階からスポーツを通して、体力や運動能力を高めて日常生活を自立して家庭復帰して、学校や職場に戻ったりするための支援をする仕事をしています。

<社会に対して参加できること>

 そのひとつの手段として運動・スポーツを用いて訓練・指導を行っています。ウィルチェアーラグビーもそうですが、スポーツを通して一人一人が自信を持ち、そして社会の中でなんらかの、目標を持てたり夢を持てるような社会にしていきたいと思っています。

 それは場合によっては、スポーツでなくてもいいと思います。障害を持っている人の中には、日常生活を送る上で大変なことはあると思いますが、家庭復帰をした後に家の中に閉じこもってしまうことがあると思います。家の中ではなく社会に対して参加し、目標設定して、目標を達成するために一生懸命やる姿は勇気や感動を与えることができます。

 障害を持っている人も、さらに健常者の方も頑張ってみようと思う人も出てくると思います。そういったスポーツの持つ無限の可能性というものに非常に魅力を感じています。その究極がオリンピックやパラリンピックだと思っています。それぞれの仲間、地域、大きく言えば日本がスポーツを通して、夢を持てるような社会になってくれればと願っています。

ーありがとうございました!

いかがでしたでしょうか?やはり選手スタッフ間とのコミュニケーションがチームをまとめ上げる秘訣みたいですね。そしてスポーツが社会に与える役割も非常に大きいものだと改めて感じることができました。次のリオデジャネイロパラリンピックでウィルチェアーラグビーが金メダルを獲得できるように皆さんもぜひ応援をよろしくお願いいたします!

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