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IPv4アドレス在庫枯渇問題を考えてみる

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11月28日のエントリーで少し書きましたが、現在のインターネットで重要な位置を占めているIPv4アドレスの在庫が、あと数年程度で枯渇する可能性が高まってきました。

この件に関しては、いろいろな議論が行われています。しかし、現状で“これだ”という解決案は出ていません。さまざまな議論の中から、代表的な案をここでご紹介しましょう。

  1. 未使用のIPv4アドレスを回収したり、新規の要求に対して割り当てを小さくすることで節約をする。
  2. IPv4アドレスを市場取引させ流通させる。
  3. IPv6に移行する。

まず最初の「節約」ですが、短期的には有効でしょう。しかし、未使用のIPアドレスを回収できるかというのはかなり不透明です。中には「強制的に行えばいい」という意見もあるようですが、それを行う法的根拠もありませんし、そもそも“未使用”をどう捉えるかが不明です(外部接続に使っているか否かとか)。この方法は単なる延命策なので、いずれは無くなることに変わりありませんし、IPアドレスの割り振りをあまり細かくしてしまうとルーティングテーブルが肥大化する一方になってしまう気がします。

次に「市場取引」ですが、この方法を採用するためにはさまざまなハードルを超えなければいけません。いままで財産価値が無いものに価値が付くわけですから、当然のように現在IPv4アドレスを大量に保有しているところはお金持ちになります。この不公平感に始まり、価値の正当性とか課税問題といった経済的な話がある一方で、技術的にはルーティングを破綻させない仕組みを導入しなくてはいけません。極端な例え話で言えば、東京03の電話番号を売り出して、それを北海道の人が買ったときにその03で始まる局番が北海道で使えるのかといったことと同様の問題を解決する必要があるということです。

最後の「IPv6に移行」は、理想的には一番良い解だと思います。ただし、通信といった面では問題が無いとしても、現状ではすぐに移行することは難しいと考えます。その一番の理由は、サービスがIPv6に対応していないケースが多いのではないかと思えることです。たとえば、スパム対策やファイアウォールといった、IPアドレスを見る必要のあるプログラムがIPv6にそのまま対応できるかと言われたら、かなり怪しいと言わざるを得ないでしょう。プログラムによっては、IPアドレスは4オクテット(バイト)固定で書かれている、なんてこともあるかもしれません。このあたりを明確にしていかないと、現場での対応が取りにくいというのは事実だと思います。

いくつものアイデアが出され、それに対して議論が行われている状態ですが、いつまでも議論ばかりをしていては何も解決しないような気がします。そろそろ、エイヤでもかまわないから、どれかに中身を絞って、そのために何をすべきかという具体的な行動計画を(国際的に)立てていただきたい。近頃では、本当にそう思います。

IPv4アドレス在庫枯渇問題に対する認識の違い、温度差など、いろいろと問題はあるかもしれません。でも、枯渇が予想される時期まで3年程度しか無いのですから、現場が対応しなければいけないことを考えるといつまでも引っ張るわけにはいかないはずです。一番危険なのは、“楽観視”なのではないでしょうか。

個人的には、IPv6を選択し、そして、現状のIPv4ネットワークの中にあるサービスにIPv6を混ぜていくのではなく、IPv4と並立する形でIPv6ネットワークのサービスを作っていくのが一番いいと考えています。そうすれば複雑さが激減しますし、最初はIPv6のサービスのほうが小さいですが、いずれは逆転してIPv4のサービスが縮小していくという形で収束を図ることもできます。もちろん、国とかはその推進のための支援(低利の貸付とか減税措置とか)をしていくべきでしょう。

いまの議論を見ていると、あまりにもよい子的な話がされているような気がします。世の中、リスクの無い世界などはありません。すべての人を救うのは難しいという前提の元で、どうしたらその被害を最小に収めることができるのか。その落としどころをみんなで探していく必要があると考えています。

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