【AIの現在地】生成AIの根幹「基盤モデル (ファウンデーションモデル)」・後編
前編では、基盤モデルとは何かについて解説しました。後編では、その能力を深堀します。
なぜ「基盤(Foundation)」と呼ばれるのか
スタンフォード大学の人間中心AI研究所(HAI)が2021年に提唱したこの「基盤(Foundation)」という言葉には、テクノロジーが社会インフラとして機能するという重要な意味合いが込められています。
ITにおける「基盤」の例として、スマートフォンの「OS(オペレーティングシステム)」が挙げられます。OSが存在するからこそ、開発者らはカメラ制御や暗号化技術を一から個別に構築することなく、その上で動く多様な「アプリケーション」の開発に専念できます。
基盤モデルは、まさに「知能のOS」として機能します。AIの知的な規模を測る指標に「パラメータ数」があります。これは人間の脳でいう「神経細胞(ニューロン)同士の結びつきの数」に相当するものです。このパラメータ数が数百億から数兆規模に達する基盤モデルは、いわば「あらゆる知識と言葉のつながりをあらかじめ網羅した巨大な脳」であり、人間の言語や概念を処理するためのベースとなる知的空間(普遍的な知覚層)を提供します。
また、基盤モデルの進化を支える法則に「スケーリング則(モデルの規模、データ量、計算パワーに比例して性能が飛躍的に向上する経験則)」があります。モデルが一定以上の規模に達すると、複雑な論理や比喩表現の理解といった高度な能力が突如として花開く「創発(エマージェンス)」が確認されており、これが基盤モデルを単なる自動化ツールから「知的なパートナー」へ進化させる原動力となっています。
ビジネスパーソンが捉えるべき「基盤モデル」の能力特性
現在、市場に流通している基盤モデルにはいくつかの種類が存在します。初期の生成AIブームを牽引したのはテキスト情報を処理する「大規模言語モデル(LLM)」でしたが、現在のトレンドはテキストだけでなく画像、音声、動画、さらにはセンサーデータまでを同一の仕組みで理解する「マルチモーダル(多様な情報の種類を横断的に解釈する技術)」へと進化しています。
この能力特性をビジネスの実装観点から整理すると、基盤モデルの強みは「セマンティック(意味的)な処理能力」にあります。従来のコンピュータプログラムは、データが完全に構造化(Excelの表のように整理)されている必要があり、一文字の誤字があるだけで処理がストップしてしまいました。
一方、基盤モデルは、感情的なクレームメール、手書き報告書の画像、会議の録音音声であっても、そこに流れる「文脈」や「意図」を高い精度で汲み取ることができます。この意味理解の柔軟性を活用することで、これまで人間の判断に依存していた「非定型業務の標準化」が初めて可能になるのです。
『AI実践ドリル30日チャレンジ 仕事にすぐ効くAI活用』(日経BP)を紹介する連載が、日経クロステック(xTECH)に掲載されました。
第1回 ビジネスパーソンが生成AIの有償版を使うべきである理由
第2回 「事業変革推進室長」として生成AIで新規事業を企画する
第3回 AIの「魔法」をメール作成と悩みの「壁打ち」で体感
第4回 新規事業の「3段階の自立シナリオ」をAIで描く
第5回 AIにいきなり「斬新なアイデア」を求めるのは避けよ
本書は、これまでのAI本とは毛色が異なり、新規事業開発やマーケティングの実践ノウハウを、AIを使いながら体験的に学べる「ドリル」です。AIの使い方を解説するのではなく、実際のビジネスの現場でどう使いこなし、新しい価値を生み出せばいいのかを、手を動かしながら身につけていただけます。
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