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質問力はAI時代の人間に残された最後の砦

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言葉を「理解する」とは、言葉を関連付けて、それらの関係や構造を捉えることだとされている。この関連付けをより広範に、さらにはより精緻にしてゆくことで、より確かな構造が立ち上がっていく。これが、「理解を深める」ことだ

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例えば、「AI」は、「統計学」、「論理学」、「脳科学」、「生理学」、「コンピューター・サイエンス」などと関連付けられることで、どのような仕組みであるのか、何に使われるのか、どのような限界があるのかといったことが、分かるようになる。理解するとは、このような関連付けを拡げ精緻化することである。

言葉を知る、その意味を知るだけでは、使いこなすことは難しい。それらを様々な他の言葉と関連付け、様々な使われ方のシチュエーションを知り、それを実際に使ってみることにより、世間に晒し、その結果から関連付けや使い方を修正しながら、言葉の理解は、より確かなものになる。

言葉は世界のものごとの象徴であり、言葉を理解することは、世界を理解することに通じでいる。私たちは、かなりの部分、言葉を介して世界を理解し、把握していると言ってもいいだろう。

堅苦しい前置きになってしまったが、「質問する」とは、自分の作り上げた「理解」を世間に晒す行為だ。自分が作り上げた関連付けや使われ方を他人に検証してもらう行為である。つまり、質問をするとは、自分の「理解」を他者の批判に晒したり、違う視点からの解釈を得たり、関連付けや使い方を修正する機会を手に入れたりする行為だ。つまり、「理解を深める」ための手段ということになる。

質問をしないのは、「自分の理解」を他人に評価されることを嫌だとか、恥ずかしいと感じるからだろう。つまり、自分の理解を人前にさらすことで、他者からネガティブな評価を受けるかもしれない、それによって自分が劣等感を感じるかもしれないことを避けたいという意識が働くのだと思う。

私は、新入社員研修で、いつもこのようことを伝えている。

「貴方たちは、いまは、ただ飯を喰らっている。給料をもらっているのに、給料に見合う仕事などしていない。社会人としての経験も浅く、社会人としての未熟だ。そのことは、十分に自覚していると思う。」

「だからこそ、このままではいけない、早く社会人として独り立ちできるようになりたいという気持ちを強く持っている。だからこの研修にも前向きに臨んでする。ならば、質問をすべきだと思う。あなたの質問は、きっと稚拙だと思う。それは、皆さんが社会人として未熟だからだ。」

「未熟であることを恥ずかしく思う必要ない。この時期は誰もが未熟なのだ。未熟であることは、むしろいまだけに許される特権であり、そんな機会を得られていることに誇りを持って欲しい。未熟だから質問は稚拙であるのは当然だし、そんなことは、まわりの同期も講師もみんな分かっている。だから、何ら恥ずかしく感じる必要ない。自分の未熟を、自信を持って人前にさらしたところで、みんなそう思っているから、驚いたり、ネガティブな評価なんかしたりしない。むしろ、少しでも早く未熟から脱する機会を手に入れた法が得策ではないか。質問をして、その未熟から脱する機会を早めてはどうだろう。」

こんな話をすると、何人かの人が質問をする。そして、それに引きずられて質問が増える。それでも質問をしない人たちはいるのだが、それはもう仕方がない。いつかこの言葉の大切さに気がついてくれることを願うだけだ。

「質問力」あるいは、「質問をしたいという意欲」は、同僚や上司から知恵を引き出し、仕事ができるようになるためにも有効であり、お客様の課題やニーズを把握するためにも、他者とのコミュニケーションのためにも欠かせない。

生成AIの利用が拡大しつつあるいま、「質問力」は、社会人として、ますます重要な能力となった。何を知りたいか、何を解決したいかを明確にし、これを適切な論理構造と言語表現で質問=プロンプトを書けなければ、生成AIをうまく使いこなすことはできない。使いこなせないことは、仕事ができないと同義に見做されるようになるのかも知れない。例えば、ExcelWordPowerPointを使いこなせなければ、仕事に支障をきたすのと同じレベルの話しだ。

「質問力」は、社会人として、成果をあげるために欠かせない能力であるとともに、ものごとや世界の理解を深めるための強力なツールとなる。生成AIの機能の向上と普及が進む世の中で、ますます「質問力」のあるなしは、社会格差を生みだす要因になってゆくだろう。

AIの限界は、自らが問いを生みだせないことにある。つまり、内発的に動機付けられた問いや疑問を生み出せないことだ。これができるのは、人間だけであり、人間が生みだした問いに対しては、AIは人間よりも賢く答えられる可能性が高い。だからこそ、「質問力」は、AIが広く活用される社会においても、人間に求められる能力の核心だ。

だいぶ、話しがとっちらかってしまったが、質問力はAI時代の人間に残された最後の砦であろう。そういう時代であることを、新人君達にもしっかり伝えなくてはいけないと思っている。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

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  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

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