バイラル動画広告分析レポート:エビアン「ローラーベイビーズ」2年間の軌跡。7月11日、いよいよ国内でもオンエア開始
嬉しいニュースが飛び込んできた。あのエビアンのバイラル動画広告「ローラーベイビーズ」が、日本でもオンエアされることが決まったのである。オンエア開始日は7月11日の月曜日。「ローラーベイビーズ」ファンとしては、オンエアが今から楽しみでしかたがない。エビアンの「ローラーベイビーズ」は、バイラル動画広告を語る上で、絶対に外すことができないタイトルの一つだ。セミナーで講演する際は、必ず実際に動画を見せながら紹介しているし、ブログでも今まで何度取り上げてきたかわからないほどだ。
つい最近だと、6月25日の記事「バイラル動画広告視聴ランキングTOP20<2011年5月度>1位はエビアンのRoller Baybies」で、「ローラーベイビーズ」が5月の月間視聴ランキングで1位になったことをレポートしたばかりである。つまり、私にとって「ローラーベイビーズ」は、それほど気になったしかたがないバイラル動画広告なのだ。そして、いつか機会があれば、この「ローラーベイビーズ」を徹底的に分析してみたいと思っていた。
そんな矢先に飛び込んできた今回のオンエア開始のニュース。そして、今回このタイミングで分析してみようと思った、もう一つの大きな理由。実は、「ローラーベイビーズ」が公開されてから、この7月1日でちょうど丸2年を迎えることになるのである。タイミング的には今しかない、そう思って「ローラーベイビーズ」2年間の軌跡をレポートしてみることを思い立った。
■ エビアン:ローラーベイビーズ
【1】 公開スタートから怒涛の快進撃。公開から3ヶ月間で1位が10回
まずは、下の表を参照してほしい。「ローラーベイビーズ」の公開から3ヶ月間のランキングと視聴回数をまとめたものだ。なんと、1位が10回、2位が4回というちょっと信じられないくらいの記録を作っている。3ヶ月間、一度も2位から下がったことがないというのは、本当に信じがたい。この記録は、最終的にその年の10月第2週まで続くことになり、10月第3週に始めて3位に下がる。
下のグラフは、公開から7カ月間に渡るランキングの推移を表したものだ。10月の第3週から6週間ほど、3位から4位あたりをうろうろしているのがわかる。ところが、そこからまた快進撃が始まる。12月の第1週から翌年1月の第3週にかけて、7週間連続1位の記録を樹立してしまうのである。1位の座を2週間連続で守り続けるのでさえ大変なのに、公開から6ケ月経った時点であっさり連続1位の記録を作ってしまうあたりが、「ローラーベイビーズ」の本当の凄さだと言っていいだろう。
「ローラーベイビーズ」は、2010年2月第2週に始めて11位となり、TOP10から外れることになる。しかし、これはスーパーボウルをターゲットとした他のブランドの動画広告が視聴回数を伸ばしたためであり、「ローラーベイビーズ」自体は、前の週よりも多い120万ビューをしっかり記録している。
ランキング同様、視聴回数も凄い。2009年7月の第2週と第3週にかけて2週間連続で1,000万ビューを記録しているが、2週連続で1,000万以上の視聴回数を記録しているのは、他にオールドスパイスの「Responses」とフォルクスワーゲンの「The Force」のみである。
しかし、2週連続で1,000万ビュー以上を記録したこと以上に特筆しなければならないことがある。それは、コンスタントに100万ビューを達成していること。公開から連続18週も100万ビューを記録しているバイラル動画広告は、「ローラーベイビーズ」以外にない。
【2】 2年間でTOP10圏外になったのが僅か3回という抜群の安定感
今回調査をしてみて改めて思ったことは、「ローラーベイビーズ」の安定した強さである。下のグラフは、「ローラーベイビーズ」2年間のランキングの推移を表したものだが、TOP10圏外になったのは僅か3回しかない。もっと凄いのは、TOP20圏外になったことが一度もないという点だ。公開から2年間、毎週TOP20以内にランキングされ続けているのである。
その安定感は視聴回数にも反映されている。公開から100万ビュー以上という記録は、19週目で一旦途切れてしまうのだが、その後再び2009年11月の第3週から22週連続で100万ビュー以上を記録することになる。2年間の通算では、全102週中63週も100万ビュー以上を記録している。また、視聴回数の最低記録は、2011年の3月第2週に記録した784,757ビューとなっている。
下の表は、「ローラーベイビーズ」の2010年7月第1週~12月第4週におけるランキングと視聴回数を週別にまとめたものである。この表を見てもらえればわかるにだが、2010年7月から12月末にかけての6ケ月間は、100万ビューに届かない週が目立つようになる。この6ケ月間は全部で26週あるのだが、100万ビューを達成した週は4週しかない。あえて「ローラーベイビーズ」の勢いに翳りが見え始めた時期を探すとすれば、この時期になるだろうか。ただ、勢いに翳りがあると言っても、毎週80万ビュー以上を記録している。他のタイトルと比較すれば、何の問題もない。
2011年に入ってからは再び勢いを取り戻し、4月第2週から直近の週まで10週連続で100万ビュー以上を継続中である。特に5月は、5週連続で3位以内にランキングされており、5月度の月間視聴ランキングでも1位になっているほどだ。
【3】 「ローラーベイビーズ」と同時期に公開されたバイラル動画広告
「ローラーベイビーズ」と同時期に公開された、是非チェックしておきたいバイラル動画広告がいくつかあるので紹介したい。
■ マイクロソフト:MEGAWOOSH - Bruno Kammerl jumps
2009年8月3日に公開されたマイクロソフトのバイラル動画広告。「ローラーベイビーズ」の6週連続1位を阻んだ作品で、初登場の週に260万ビューを記録している。その後1位になることはなかったが、5週連続でTOP10にランキングされるなど、この時期話題になったバイラル動画広告の一つである。内容自体は、見ての通りもの凄いシンプル。
■ フォルクスワーゲン:Piano stairs - TheFunTheory.com
2009年10月7日に公開されたフォルクスワーゲンのバイラル動画広告。今でこそ、フォルクスワーゲンを代表するバイラル動画広告と言えば「The Force」ということになっているが、「The Force」が公開されるまでは、この「Piano stairs - TheFunTheory.com」がフォルクスワーゲンの代名詞だった。1位を3回記録している上、13週連続でTOP10にランキングされるなど、「ローラーベイビーズ」と並ぶこの時期を代表するバイラル動画広告の一つである。
■ ドリトス:Crash the Super Bowl 2010 Finalist - Casket
2010年1月4日に公開されたドリトスのバイラル動画広告。スーパーボウル2010で放映されたテレビCMで、初登場となった2010年2月第2週にいきなり1,700万ビューを記録して話題になった。TOP10にも8週連続でランキングされるなど、2010年を代表するバイラル動画広告の一つである。
■ ジレット:Amazing Roger Federer trickshot on Gillette ad shoot
2010年8月16日に公開されたジレットのバイラル動画広告。この頃のジレットと言えば、他にも「Perfect Length」と「A Mayne & His Razor 」がある。しかし、プロテニスプレイヤーのロジャー・フェデラーを起用した「Amazing Roger Federer trickshot on Gillette ad shoot 」が、話題性ということでは群を抜いている。2週連続で1位を記録した、ジレットと2010年を代表するバイラル動画広告の一つである。
■ オールドスパイス:Responses
2010年は、オールドスパイスの年だったと言っていいだろう。公開するバイラル動画広告が全てヒットするという現象を引き起こし、2010年第2週にいたっては、上位4位までをオールドスパイスが独占してしまった。中でもこの「Responses」は、初登場した週に3,500万ビューを記録して話題となり、4週連続1位、9週連続TOP10入りという、この時期おける「ローラーベイビーズ」最大のライバルとなったバイラル動画広告である。
【4】 まとめ
エビアン「ローラーベイビーズ」の、2年間に渡る全データを調べてみて感じたことは、100週以上に渡って平均100万ビュー以上の視聴回数を記録するその際立った安定感が、いかに他に類を見ないほど突出しているかということだ。キャンペーンと連動して、瞬間的に視聴回数が増えるという事例は時々あるが、安定して100万ビューを続けているのは「ローラーベイビーズ」以外にない。
7月1日からのオンエアで、日本にも「ローラーベイビーズ」のファンが増えることは間違いないだろう。そういう意味では、今後どこまで記録を伸ばすことができるのか、楽しみでしかたがないバイラル動画広告である。
※ 参考情報
● 調査に用いたVisible Measuresのウェブサイト ⇒ Visible Measures
● オンエアを記念して公開されたキャンペーンサイト ⇒ エビアン
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