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グローバル化する地球の中に、日本はどう立つのかを考える日々

iPadはAppleの戦略上どういった意味をもっているのか考えてみた

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#明日2010年4月4日、母校の慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)20周年式典で↓のようなイベントします。TwitterでTsudaったり、UStream中継するはずなので、もし良かったら見てください☆.。.:*・

「SFCとwebの歩み20年史」
http://sfc20-webhistory.blogspot.com/
http://20th.sfc.keio.ac.jp/ceremony/event_0404_workshop.html#event

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)20周年記念公式サイト
http://20th.sfc.keio.ac.jp/
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既報のように、Apple の期待の新デバイスiPadが発売された。
Amazon.com + Kindle・Barnes & Noble + nook・eBook Store from Sony + Sony Readerと市場が立ち上がりつつある電子書籍市場に、新たにiBook/iTunes Store + iPadの組み合わせ参入すること、日本上陸時に日本の出版業界がどう対応するかが今後の焦点になると思われる。

しかしながらiPadがKindleなど他のデバイスと違って液晶を採用していることから、単純に電子書籍という市場での争いと捉えると矮小かなとも思う。

iPad以外が採用している電子ペーパーは、自分自身はKindleのヘビーユーザーなのだが、その特性上部分書き換えが難しく、全面書き換えになるため、どうしても動画には向かず傾向として画面書き換え速度が遅いということになる。そのため、Webをスクロールして見るといった用途には向かず、全面書き換えで対応できる『ページ』の概念がある電子書籍に適している。

そして電子ペーパーは液晶のように強いバックライトを裏に入れないため、使ってみるとスペック上はわかりにくいが革命的なほど目に優しく長時間読みやすい。

その電子ペーパーを使わずにiPadは液晶を採用しているというのは、iPadは電子書籍市場に参入することにフォーカスして作られたのでは無いのではないかと思う。

AppleがiPadで本当に実現したいのは、肘をついて読んだり、寝ながら読むと言った、本を読むという行為の形(=読書スタイル)でWebページを消費して欲しいのではないか。
そして、iTunes Storeで販売している他のコンテンツ(ミュージックビデオ・映画など)も読書スタイルで消費して貰いたいのではないかと。

そうなると、机上のPC/Macか読書かと分断されていた2つの行為が一つになり、結果として出版業界による読書スタイルの独占が破れることになり、出版業界が打ち出す電子書籍市場もPC/Mac(あとiPhoneも)側のコンテンツ市場の一部となるだろう。

つまりAppleは出版業界の独占領域を破り、コンテンツ市場領域の全てをiTunes Storeに治めたかった。iPadが液晶であることに注目して考えると、また、Macのデジタルハブ戦略・iPod・iTV・iPhoneなどラインナップの全体性を鑑みても、これがAppleの真の狙いじゃないかという気がしてくる。

つまり、今、市場で起こっているのは出版業界が電子書籍市場に移行する際に起こっている業界内の小さい嵐ではなく、読書スタイルという行為から得られる『体験』の次世代を作るのは、『本』からのアプローチで攻めるAmazon.com達なのか、『Web』からのアプローチで迫る『Apple』なのかということ。これが今回のiPadの本質ではないかと思う。

予想と仮説の積み合わせなのでこれが正しいかどうかはわからないものの、電子書籍市場は単なる出版業界のシフトでは納まらないはずなので、ここに着目した商売は今後一定の地位を築いていくだろう。

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