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iPhoneが成功したAppleは、さながら「ロックからポップへ変遷したミュージシャン」の様だ

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今さら僕がこんなところで言うまでもなく「iPhone5C/S」は多くのエコノミスト達の予想を裏切って900万台を超える販売を記録して、大ヒットした訳だけれど、これはどうしてだろう。
あくまで個人的な、感想だけれども、今回の新iPhoneには、Apple社らしい、感動や驚きのある大きな機能追加がされたとは思えなくて、発売前には「これはエコノミスト達の予測を超えるものではないだろう」と考えていたんだけれど。

けれど、国内ではNTTドコモのiPhone参入が決まり、Apple社はスマートフォン市場の事実上の覇者となったと言っても過言ではない。

少し前まで、Apple社の製品と言えば、クリエイターやアンチMicrosoftな「少し尖がったユーザー」に愛されるメーカーだった。要するにメジャーではなかった。ところが今やMacからiPodへのシフトチェンジをした頃から徐々に、そしてiPadやiPhoneというメガ・プロダクトを送り出すにつれ、その存在はメジャーな企業へと変貌を遂げた。

ここにその、象徴的な例を示すために国内大手の企業名をお借りしてみることにする。

  • SONY
  • シャープ
  • パナソニック
  • エプソン
  • 京セラ
  • 村田製作所

...などなど

今ここに挙げた国内電機メーカーは何らかの形でApple社製品の製造や開発を請け負っている(あるいは近年請け負ったことのある)メーカーの名前の一部だ。

今、世界にApple社に対して、自社ブランドの製造やサービス開発の請負ベンダーとして、発注者となる企業は皆無だろう。

パーソナルなユーザー・デバイスを制したApple社は、もはやユーザーすらも抗えない「アップル・ワールド」とでも呼ぶべき状況をも作り出している。「ライフスタイル」「ビジネスシーン」これらにApple社の製品やサービスは無くてはならないものになりつつある。すなわち、自社の思惑の下に「ライフスタイル」「ビジネスシーン」をコントロールすることが出来るのだ。

iPhoneが故障したときを思い出せばよいだろう。今までの携帯電話のように、ソフトバンクやらauやらドコモやらの街にある通信キャリアの販売店へ行って修理をお願いすることは出来ない。iPhoneは故障したら、WEBからアップルストアへ修理予約をし、そこへ予約した時間にアップルストアまで足を運ばなければならないことなんかは、そのごく簡単な一例だろう。

このようにしてApple社は、かつて彼らが持っていた「尖がった」「エッジの利いた」イメージからはるか遠い存在になってしまった。彼らがそれを意図したとしても、或いは生み出したとしてもそれは、スタンダードでメジャーになってしまうのだ。

これは、全く別のシーンにおいて起こったことと非常に似ている、相似していると僕は思うのだ。
例えば、90年代に巻き起こった「オルタナティブ・ロック」の盛衰に。

「ロックミュージック」は元々、世間に対してのアンチズムやメジャーへの反抗心など、政治をも含めた批判的なメッセージ性を持った音楽だったはずだった。ところが「ロックミュージック」は徐々に強烈な批判的なメッセージを失っていき、「誰もが共感する、甘口な批判」を歌う音楽となって、メジャーでポップなものに変貌してしまった。
「オルタナティブ・ロック」は、その「甘ったるいロック」に対する、アンチテーゼとして誕生した新たなロックミュージックの形のことだ。多論あるとは思うけれど、僕の理解は少なくともそうだ。

そしてそれは、大きなインパクトと賛同を得て90年代に様々なミュージシャンが誕生した。

ニルヴァーナ、BECK、ビョーク、オアシス、レディオヘッド、ラーズ、スーパーグラス、エラスティカ...etc

と枚挙にいとまはない。

けれど、彼らや彼らを模したミュージシャン達は、既存のロックミュージックへのアンチテーゼを掲げながら「オルタナティブ」を、ムーブメントととしてしまった。メジャーへのアンチテーゼを掲げながら、それが共感を呼ぶことで、自らがメジャーな存在となっていくという、矛盾の中で彼らはその存在意義を失っていった。或いは劣悪化し、その多くは消えていった。

ロックの難しさは、そのパフォーマンスをキープし続けることにある。

「Keep On Rock 'n' roll」

これは、一見関係のないように思えるビジネスの世界、すなわち冒頭に書いた、Apple社に今起こっていることにも、同じことが言えると思うのだ。
僕なんかが知る由もない、想像にすぎないけれどApple社は「創業時の精神」に則り、最適なもの、クリエイティブで新しいものを作り続けてきたのだと思う。だからこそ、多くのユーザーの支持を得て、今のビジネスシーンに君臨することが出来たのだろう。

僕はAppleはAppleらしさを失って欲しくないと思う。だから、ロビー団体なんて作って、チンケでせこい活動なんてして欲しくないのだ。もちろん必要だからやっていることだとだとしても、そこに重きを置いては欲しくない。
今、メジャーとなった彼らの送り出すサービスは、良い、悪い関係なく「Appleだから」という理由で無条件に受け入れられてしまうことだってだくさんあるだろうと思うのだ。

だからこそ、「Keep on 」!!!

僕らユーザーだって、無批判な賞賛は企業をダメにするのだ。

強烈なロイヤリティを持つということは、常にこんな緊張感に耐えていかなければならないんだ。

<了>
正林 俊介
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