ベッカム引退 或いは 三浦カズ からみるプロフェッショナル考
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オトコとして生まれたからには、誰もが甘いマスクでかつ、あふれる才能を持って生まれてきたらどんなにか素晴らしい人生だったことか・・・と妄想する人は多いはずで、そして自分もまたそのひとりだったりする。
そんな折、日本では一時期「ベッカム様」ともてはやされたサッカーのベッカム選手。端正な顔立ちとトップリーグに常に在籍してきたサッカーの才能をもった彼が引退した。38歳での引退はサッカー選手の中では長い現役を続けた、といえるだろう。
このベッカムという選手は「ロングボールのキック」だけが異様にうまい選手で、その柔らかなタッチで蹴りだすボールは、誰もができそうで出来ない正確無比なスルーパスでありFKだった。
逆に、足が早いわけでもなく、ドリブルが上手いわけでもなく、トリッキーなテクニックを持っているとは言い難く、今現役のメッシ選手のような得点感覚に優れたものを持っていた訳ではない。まぁ、僕より少しうまいくらいかな、なんて。
この、ベッカム選手のように「ロングボール」というワン・イッシューでここまで長い現役生活を第一線で続けられる選手は稀有だ。
突出した才能を持たないプロフェッショナルならば、強みを伸ばすのは当然のことながら、弱みを克服し、努力し続けることがプロとしての必要なことなんだと思う。誰もがベッカムではなく、ましてやスティーブ・ジョブズではないのだから。もちろん彼が努力をしていなかった、と言うことではない。凡百のプロたちは、よりそういったことが必要だということだ。
少し前に日本では、三浦カズ選手のフットサル日本代表入りがニュースになった。ニュースでは、フットサル界でのカズ選手の活躍を期待するものが多かったけれど、彼が代表として期待されているものは、選手としてのパフォーマンスでは無い、と思いながらそれらを観ていたものだ。
40代を超えてスタミナ、スピード、テクニックなど、若いほかの代表選手を凌駕するものは持ち合わせていないだろう。今後の成長性といったポテンシャルも若い選手に一歩も二歩も譲らなければならない。あの有名な股抜きフェイントがフットサルの狭いコートで通用するとは思えない。
では、カズ選手がフットサル日本代表にもたらしたものは何だったのか?
それは、選手としてのピークを過ぎてなお、努力し続けるプロとしてのメンタリティや貪欲な姿勢を伝えるためなんだと思っている。
そういった意味でカズ選手は今もなお一流のプレイヤーだ。
ビジネスの世界では、或いは仕事をしているとと言い替えてもよいかもしれないが、自らのピークや伸ばすべき長所、克服すべきものが自己認識するのは難しい。だからこそ、カズ選手のようなメンタリティは常に意識しなければならないと思うのだ。自らを客体視し、若い世代のポテンシャルを認めてそれを尊重すること。
僕みたいなオッサンになると酒席で人のことをグチグチ言うことは多いけれど、自らを厳しく律することは、なかなか難しい。
同じころ、ジュビロ磐田で長年活躍したゴン、こと中山雅志選手は引退をした。その時の言葉は感慨深いものがあった。
「こんなヘタクソな選手を長年応援してくれてありがとうございました」
彼もまた、プロフェッショナルとして一流のメンタルを持った素晴らしい選手だったと思うのだ。
<了>
正林俊介
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