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指導者は旗を、リーダーは戦略を立てろ! - blu② -

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一人では出来ない何かを成し遂げるには何かしらの目標を共有した組織、社会を形成しなければならない。
これ、当たり前のことだけれども結構大事なことで、経済学の古典たるバーナード著「経営者の役割」なんかにもすでに、このことが詳細に記述されている。バーナードはこれを「協働」と言ったわけだけど。

この共通の目標を共有するためには理念、目標、スローガンの類が必要であって、政治の世界でたとえれば、安倍政権の「3本の矢」なんかはまさにそれにあたる。
ここで「3本の矢」の中身をどうこう言うつもりはないけれど、スローガンとして分かりやすい。すなわち「協働」に値するかを判断しやすいということ。

振り返って「アベノミクス」。これはスローガンでも理念でもなんでもない。だから新語として登場したときに分かりにくいのだ。
何故分かりにくいのかというと、当然この言葉を使う人の立場が違うからなのだけれど、その本質は「曖昧さ」にある。なんとなくこのことかな?みたいな霧がかかったような言葉。本来この手の言葉は抽象的でなければならないというのが僕の持論。

指導者というのは、どういったスローガンを打ち立てて組織を率いていくか、ということが最も要求される能力だと僕自身は考えている。優れた指導者は「高度に抽象化」した概念を分かりやすく表現することが出来る人なんだと思う。

ところが「高度に抽象化された」というのが難しいのであって、だから例えば、IT業界で昨今言われ続けている「クラウド化時代だからクラウド事業をするのだ!」というのはあまりに安直だと考えるわけです。というのも、この例で言えば「クラウド」という言葉は分かるけれど、どのマーケットに、どんな事業を推し進めていくのか良く分からない。

転じて、リーダーの仕事とは打ち立てられたスローガンの下に、実際に何をするべきか?という取るべき具体的動作を考えることだ。だから、当然ながら曖昧な理念ではそれはぼんやりしたものになって、時間だけが経過する、或いはてんでまとまりの無いことになりかねない。
なぜなら、リーダーが打ち出す戦略に則って実務者達は具体的な行動、オペレーションをするのだから、戦略はきちんと戦略でなくてはならないからだ。(当たり前ですが。。)

けれど、本当に戦略たりうる行動指針を示すのは本当に難しい。なぜなら、戦略というのは、現場実務の思考から離れられた、中長期的な指針を示すことだから。リーダーは実務の責任者であるから、目の前の実務に捉われてしまいがちだ。それはそれで仕様の無いことなんだけれど、ここで必要になってくるのがまた、「抽象化」という思考のスキルになってくる。

組織のヒエラルキーが上がるにつれて、より抽象化した能力を使うことに自らのコストを裂いていかなければならない。それができないければ、あっちもこっちも、なんとなく

「さーて、クラウドビジネスでも考えようかしらん」

なんて悠長なことになりがちなのです。

例えがあまりにも稚拙すぎて恐縮なんですが、曖昧であることと抽象的であることは似て非なるもの。
『アベノミクス』が要するになんだっけ?って分からないのは、抽象的な概念が欠如しているからなのです。

<了>

正林俊介
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