WBCルール改定にみるアメリカン・スタンダード考 或いは サッカーとの違い
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スポーツは定められたルールの中で人種もへったくれなく競うこと出来るものであるから、面白い。
競技としての面白さの他、人材育成やグローバリゼーションなど、ビジネスの世界に置き換えても、様々な示唆に満ちていている。
そして最近は、2013年(つまり今年)開催のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に向けて、国内でも代表候補の選出が話題になっていて興味深く思う方も多いのではないだろうか?
2013年のWBCは前回大会からルール改定がされていることも、耳に新しい。
>>>ここで注目するルールの改定内容とは?
これは、新聞・ニュースで様々報じられていることですが、大きな変更は投手の一人あたりの投球数が軒並み減ったことが挙げられる。具体低的には
● 1次ラウンド:65球(前回:70球)
● 2次ラウンド:80球(前回:85球)
● 準決勝・決勝ラウンド:95球(前回:100球)
となっている。
僕はこれを、日本に有利不利をここで言うつもりはないけれど、この変更は実にアメリカ的だと思うのだ。
というのも、このルール改定で試合はスピーディーな展開になるばかりでなく、1打席あたりの球数を少なくしなければならないため、打ち取るためにストライクゾーンに投げる割合が必然的に高くなる。ストライクゾーンの球が多ければ、バッターはヒットを打ちやすくなり、点の取り合いのゲームとなる傾向にあるのだ。
この「スピーディーな展開」「より多く点を取り合う」展開こそアメリカ・スポーツの傾向だ。
>>>アメリカ的スポーツの特徴
WBCあるいはメジャーリーグ・ベースボールに限らず、アメリカはこうした早い、点を取り合うゲームが好きだ。
僕が好きなアメリカの3大メジャーのひとつであるNBA(バスケットボール)なんかは、その典型だ。やはり、アメリカ発祥のスポーツだからこそ故か。
バスケットボールはかつてハーフ制(前半後半戦を戦うゲーム形式)をとっていたが、10年以上前にNBAはクォーター制に移行した。これは前後半20分づつのゲーム形式から、1クォーター12分のゲームを4回行うものに変更したことを指している。
これによって、NBAはよりスピード感に溢れる大量得点を取り合うエキサイティングなゲーム形式へ変遷した。現在では、国際ルールもクォーター制をとっている。
バスケットボールは1試合で100点前後を取り合う、スポーツだ。めまぐるしく点が入り、局面がかわるというのは非常にエキサイティングである。
そして、バスケだけでなくアメリカンフットボールも然りで、大量の得点を取り合うものが、アメリカでは好まれる。
>>>世界で最も人気があるのはロースコアなあのスポーツ
改めて言うまでもないことかもしれないけれど、世界で最も人気のあるスポーツは「サッカー」だ。これは、あまり反論の余地は無いだろう。
WBCは世界大会といわれながら、参加国は予選も含めて38ヵ国。サッカー・ワールドカップは・・・言うまでもなくサッカーの方が圧倒的に参加国が多いことも、それを裏付けるものだ。
で、そのサッカーはスポーツの中でも稀にみる「ロースコア」なゲームで勝敗を決めるスポーツだ。
超強豪といわれるクラブチームでも、リーグ戦で最下位チームと戦って「1-0」というスコアで勝つというのは決して少なくない。
引き分けでも勝ち点がつく、といういうのもロースコアなスポーツならでは、ないだろうか。
もし、サッカーがアメリカで発展したスポーツであれば、きっと
● コートは今より狭く
● ゴールは大きく
● 試合はクォーター制で
● 攻め時間の制限があり
● 選手の交代人数、回数に制限がない
なんてルールになるんじゃないだろうか?
まぁ、間違いなく言えるのは「スピーディーに点を取り合うのは、必ずしもグローバルで好まれているものではない」ということだ。
>>>アメリカン・スタンダード≠グローバル・スタンダード
このアメリカ的志向と、グローバルのそれとの違いは個人的にすごく面白いと感じる。これは、スポーツの話だけれどビジネスだって同様のことがあるのではないか?
例えば、アメリカ人は自分の主張がはっきりと言えて何事にも能動的でスバラシイのである、なんてよく言われる様々なことなんかのことだ。
アメリカは確かに世界最大の経済大国であるけれど、世界の全てではない。アメリカ的気質は世界の気質ではない。
僕がオリンピックなんかを観て思うのは、白人も黒人もモンゴロイドも関係なく金メダルを獲っている、ってこと。
グローバル人材というキーワードが氾濫する今、日本人は往々にして「アメリカではどうだ」というのに本当に弱い。
相手への尊敬・敬意があれば、オレはこうだ!でいいんじゃないのかな。グローバル人材って。
<了>
-正林 俊介-
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