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既存マスメディアの傲慢さについて考える-新聞協会の軽減税率適用に関する声明発表をうけて-

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さて、いま盛んな「消費税増税」の議論。僕自身は消費税増税に関しては、賛成の意見を持っているが、それは「働いている僕らの所得ばかり当てにしないでくれよ」という、気持ちが大いに働くからだ。

そしていま、消費税増税にあたって一部の製品サービスに特例措置を設ける軽減税率の議論が大いに交わされている。
米や味噌など、生活必需品に関して、低い税率の適用が検討されていたりと・・・

そんな中、本日、日本新聞協会が声明文を発表したのを目にした方も多いのではないでしょうか。

 → 声明文内容についてはこちら

皆さんはこれをどう思うのだろう。

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そもそも、軽減税率という制度自体がその適用の妥当性に疑問を感じるものが、海外の事例からも読み取れるので如何なものか?というのが僕の個人的な意見だ。

例えば、ドイツではファストフードが「店内で食べる時は外食」とみなされ19%の税率が適用され、「お持ち帰りとすると食料」とみなされて7%程度になる。
フランスではバターは軽減税率対象、マーガリンは工業製品であるとみなされ適用外となっているという。

もし、日本で導入されたとしても、なんだか良く分からないことにならないだろうか?
例えば「みりん」は適用対象で「みりん風調味料」が適用除外となるとか・・・

そんな中で発表された新聞協会の声明文になんとも不可解な感じをうけるのは僕だけでは無いと思う。

声明文によれば、軽減税率適用の理由として

「(前略)国民が正しい判断を下すには、政治や経済、社会など、さまざまな分野の情報を手軽に入手できる環境が重要です。(後略)」

「(前略)また、近年、いわゆる文字離れ、活字離れによってリテラシー(読み書き能力、教養や常識)の低下が問題となっています。国や社会に対する国民の関心の低下が懸念される状況です。国民のリテラシーが衰えていくことは、国の文化政策としても好ましいことではありません。(後略)」

などの理由を挙げている。

しかしながら、この声明文を読むにつれ、既存メディアの傲慢さがにじみ出ているように感じてならない。すなわち、「国民が正しい判断を下すための情報を自分たちが発信している」「新聞書籍によってリテラシーを高められる」という傲慢さだ。

インターネットが発達した現代においても、情報は新聞、書籍からのみ上質なものが得られる、と錯誤しているとしか思えない。
新聞、書籍、テレビなど既存のマスメディアにどれだけ信憑性のある情報があるというのか。確かに僕自身も新聞、書籍はかなり読む方だ。けれど、その全てを信頼しているわけではない。なぜなら、過去において多くの「やらせ」や、同一化された論調を展開してきたことを忘れていないから。

ずっと以前に沖縄のサンゴ礁にイニシャルを書いて傷つけて、「心無い人たちに自然が汚されている」といった記事を一面で挙げたのは、大手新聞社だったことを。

多くの人々は心を痛めた、イラク戦争の際のオイルに汚れた水鳥の姿はPR会社の演出であったことを。

インターネット上に散見する情報は確かに精度が粗いものが多いかもしれない。けれど大きな資本が利害や既得権益のために恣意的に情報を捻じ曲げているわけでは決してない。
資本によって発信する情報は、権力にも近しい。それらをある種の意図をもって発信することに僕は辟易しているのだ。

だからこそ今回発表された一連の声明に傲慢さを感じるのだ。

ある特定の業界団体が、軽減税率の適用を求めるのは決して悪いことではない。意見を自由に言える社会こそが民主主義の原則だから。
IT業界だって声明を出したっておかしくない。今や情報通信網やサービスは、水道や道路などと同じような、ライフラインとも言える社会的なインフラとも言える地位を築いていると考えるから。

ただし、そこに欺瞞や傲慢さがあってはならないのだ。

何故なら、軽減税率の目的はセーフティネットに近しいものなのだから。
公の利益に通じていないとならないのだから。

<了>

-正林 俊介-


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