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【タレントマネジメント?マトリックス組織?そんなものをシステム化することに何の意味があるのか】

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皆様こんにちは。鈴与シンワート株式会社の正林です。


久しぶりに、人材・組織管理の話です。

この領域に関しては過去にさかのぼっても様々なキーワードが氾濫してして、例えば「HRM、HCM、MBO、パフォーマンス、メンタリング、タレントマネジメント・・・」正直僕にもなんだか判らないッス、ってことが多かったりします。

先に挙げたように人材マネジメントに関して新しいキーワードが打ち出され、何が必要なもので意味合いも含めて理解していくのは本当に大変なことです。
けれど、キーワードの妥当性とは別に本質的に必要な要素も変遷していることも恐らく事実でしょう。

人という究極のアナログな実態に対して、IT化をどこまですることが出来るのか?あるいはするべきなのか?

僕が個人的に思う最強の組織論、研究は『バーナード著「経営者の役割」』と日頃から考えています。

最近でも組織や人材に関して優れた研究は多く有りますが、誤解を恐ず大雑把に言ってしまえば「組織という社会的な面から人を捉えるか」「人という固体の集合体の最適化の手段として組織を捕らえるか」の2点に尽きるかと思います。
この大きく2つの考え方に対して、アプローチを「個人を主体としたもの」「組織を主体としたもの」両面からの考察がされているのが本書になります。

比較的新しい組織・人材マネジメント論は「マクロ的な考察の細分化」や「ミクロ的な考察の具体的な手法への細分化」を行っているに過ぎないと感じます。

時代の変化に合わせて、新しいキーワードを打ち出していくことについての意義も当然ながら否定しませんが、今見られる現象はキーワードありきで新しさを強調しているように感じられてならないのです。

現在の流行は「個人に立脚したマネジメント」のアプローチが隆盛です。企業が成長していく過程にあって全体を統制していくことよりも、個人の能力を活かしてその活路を見出したい、と考えているからだと考えます。

イノベーションを求めて緻密に設計した制度や運用のITシステム化を行って、それが3年、5年と変わらずに活用していたとして、それが「恒久的にイノベーションを生み続けているか?」疑問です。普遍的に変化しない組織や人材像であればそれは成功しているかもしれませんが。

しかし、実際には組織や事業の形態が変わらないことはありえないでしょう。
例えばタレントマネジメントのシステム化を行うとします。

タレントマネジメントとは「採用」「育成」「キャリア」「退職」などインフローからアウトフローまでの一連の事象をフレームワーク化して企業・組織理念をベースにして役割ごとに細分化した組織に必要な「タレント」を定義して、個人の「タレント」をスムーズにマッチングあるいは育成などを行う枠組みのことです。

組織の役割ごとに必要な人材像やスキルをマッピングして必要な「タレント像」を設計して、個々人のパフォーマンスや経歴などの「タレント」性を管理したとしても、それが普遍的なものであることはありえないでしょう。
金融危機、消費不況といった経済状況や、終身雇用から能力制度、世代間のモラルやマインドの違い、タレントマネジメントを行ううえでの基礎的な素養や要求事項が根本から変わってしまう可能性が十二分にあります。

そして更に、マトリックス組織などは、ナンセンスそのものであると考えるのです。

「マトリックス組織」とは、縦割りの組織に対してその枠組みを構成する、いわゆる横串の組織
のこと。組織にイノベーションを促すことを目的としているわけですが、イノベーションをマネジメントするという考え自体が僕にはしっくりきません。

そもそも、イノベーションを引き起こす人材はそのような枠組みがなくとも、イノベーションを求めて自律的に行動するわけ企業はそれをやりやすい雰囲気や文化によって、少し背中を押してあげるくらいがちょうどいい。
「マネジメント」された時から、そういった人材はその枠組みからはみ出して新しいことをしようとするのではないか。

人材マネジメント、組織マネジメントを語る上で最近流行の「タレントマネジメント」だの「マトリックス組織」etc・・・こんなものはTemporaryな言葉に過ぎない。

だって、これが制度化、システム化されてマネジメントされた時点で理念との矛盾を抱え込むことになるから。

こういったキーワードは基本的に「サービスを提供する側」がピックアップしてくる言葉であることがほとんど。
ユーザーは本当に必要なものを選び出すことが大切だと思うし、サービス提供側も本当に必要なものを見極めて提案することが重要なのです。

<了>

-正林 俊介-


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