ハイビジョンテレビでHDパッケージ映像が見れない件、ちょっと補足
トラックバックを追ってみたところ、前回のエントリーについて、ちょっと誤解をしている人もいるようなので、ちょっと補足しておきます(たぶん、ほとんどの人は誤解していないと思うのですが)。
"HDMIが付いていないHDTVで、BDもしくはHD DVDのパッケージコンテンツが見れない可能性がある"というのは、あくまでも市販の映像パッケージソフトに限っての話です。つまりハイビジョン放送や、ハイビジョン放送を録画したものは、もちろん通常のD端子やコンポーネント映像端子で見ることができます。もちろん、PS3やXBOX 360のゲーム画面も、D端子やコンポーネント映像端子から見ることが可能です。
なので、HDMIが付いていないテレビでは、すべてのHDコンテンツが楽しめない、というわけではありません。AACSという著作権運用の枠組みは、あくまでも次世代光ディスクを用いた映像パッケージソフトに適用されるルールです。
"ハイビジョン"という言葉はいろいろな捉えられ方がしていますが、元々は高解像の放送を行うときに作られた愛称のようなものですから、その意味ではすべてのハイビジョンテレビはハイビジョンをこれからもずっと見ることが可能です。で、問題は市販のソフトですよね。
で、ここで"ハイビジョン放送されているのを見たり、それを録画したものはHDMIじゃなくてもいいのに、なんでパッケージだとダメなの?"という疑問が沸きませんか?
でもデジタルハイビジョン放送。初めて見る人はキレイだと思うかもしれませんが、よく見るとボロボロなところがたくさんあるんですよ。たぶん、見慣れてくると誰でもわかるようになると思います。人間は高品質だと思っていても、だんだんと慣れてきますからね。特に地上デジタル放送は、圧縮歪みやノイズが普通に見てるだけでもかなり目立ちます。
しかしBDやHD DVDに収められる1080Pの映像は、それよりもずっとキレイです。一番最初に出てくるソフトがどこまでキレイかはちょっとわかりませんが、きちんとした圧縮ツールで、ちゃんとした技術者が圧縮した映像だと、元映像との比較でもほとんど区別が付きません。
何度かクリスティの業務用デジタル映写機で、今最もキレイと言われている某圧縮ツールで圧縮した映像とD5ベースバンドの映像をスプリット映像で比べたことがありますが、ほぼ同じに見えます。このツールはXeon/2.6GHzの1個あたり映像実時間の500倍の時間が圧縮にかかる(つまりリアルタイム化するには500プロセッサのクラスタが必要。もちろんアクセラレータを作れば別ですが)超複雑系のコーデックプログラムなので、今のところはあまり実用的じゃありません。
しかし、将来的にはそれも実用になっていくわけで、映画スタジオとしては、ほぼHDマスターと同一と言っていいほどの高画質コンテンツを売る事になります。さらに放送では、ショボショボ音質のサウンドトラックも、次世代光ディスクではCDよりも高音質になっちゃいます。
たいていの映画館は、リリースマスターフィルムの孫コピーだったりするわけで、さらにサウンドトラックだって次世代光ディスクの音声フォーマットにはかなわない事がほとんどでしょう。
1080iのハイビジョン放送(これはリアルタイムMPEG2圧縮なので画質はそこそこ)ではアナログ出力に文句を言っていない映画スタジオが、次世代光ディスクでは慎重な理由はそのあたりにあるようです。というよりも、メールであるスタジオの技術担当者がそう話していました。
言い換えれば家電ベンダー側は、自らの資産が盗まれるかも知れないと考えている彼らを説得する何らかの材料を提示しなければなりません。ですが、アナログ出力してもコピーされない方法というのが実はありません。つまり、コピーされないようにするためにはアナログを使わない、という以外に選択肢しかない、というわけで、話し合いも紛糾しているわけです。
もっとも、アナログのコンポーネント映像をキャプチャして複製する方法というのは、あるにはありますが、民生用機器では(今のところ)W-VHSという非常に特殊な機材でしか存在しませんから、映画スタジオ側もここまで意固地になる必要はないと思うのですが……。