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技術者として経営者としてある前に ──『人間の達人 本田宗一郎』を読んで

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前職のときの同僚がホンダ出身で、その彼からホンダについていろいろ聞くうちに、社風に惚れて入社するような会社が、この世にはあるんだということを知った。

ホンダの創業者は本田宗一郎で、1991年に亡くなっている。その同僚と知り合ったのは本田宗一郎の亡くなった後のことだが、ホンダという会社は創業者が一代でたたき上げて巨大にした会社という印象が強く残った。

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人間の達人 本田宗一郎
伊丹敬之(著)

本書はそんな創業者・本田宗一郎の人物像を、宗一郎語録に伊丹氏が解説を加える形で描いている。技術者としても経営者としても優れていたが、それ以上に「人間の達人」であったという趣旨だ。

「宗一郎は、人間というものの理解が深く、人が何を考え何を感じるかを相手の立場に立って深くかつ素早く考えることができた。それゆえ、ごく自然に人の心の奥に届く行動をとり、ごく素直に人の心に沁みる言葉を発することができる、達人だった」と。


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本書があげた宗一郎の語録でとくに私が共感した1つをあげておきたい。

『この手で、この身体で物をつくり、身体で考えることによって新しい論理が開けていく』

手を動かすと理論が見えてくるという感覚は、多くの人が実感を持っているのではないだろうか。まずやってみると失敗をし、そこから新しい論理を見つけていくのだ。

これは頭でっかちな人や口ばかり動く人に対する戒めともとれる。手を動かすことの利点は、手順、つまり工程のイメージが明確になることだ。頭で考えていると並列にいろんな作業をいっきにこなせてしまうように感じるものだが、手を動かしてみると、直列的にしか工程を進められないことに気づく。

手にはこの制約があるからこそ、思いが緻密にゆきわたり、何が不足しているかとか、完成するのにどれだけ時間がかかるといった、リアリティを持った理論を思い巡らす力があるのだと思う。


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こういう本を読んでいつも思うのは、確かに伝説を多く残した人だけれども、自分も全く同じように感じられるという部分を見つけられるのは大きい。本書を読めば、きっと多くの人が、自分の中にある本田宗一郎を見つけられるのではないか。


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