未来の経済危機に備えた経営をしたい
政治が長期政権になるのは国にとっても企業にとっても良いことだと思います。リーダーが長期に安定した力を発揮できるというのは、展望を持って未来を迎える必要条件だと考えるからです。
昨年は年末に安倍首相が次も勝つという見込みで解散選挙をしました。民意を問うという意味では良い判断だったと思いますが、一方でこの程度のことで解散をしなければならないのか、という意見もありました。確かに日本の政権は増税などの不人気な政策に耐えられない脆さを持っています。こんなことで長期展望をもった運営ができるのかと本当に不安になります。
最近の首相在任期間は平均430日
これまでの首相の在任期間を調べてみたら、初代の伊藤博文から現在の安倍晋三までで平均で490日(1年4ヶ月)でした。これは二回、三回と複数回務めた首相もいますから、それを複数回として母数にして平均した日数です。そして初代(1885年)から現在までの130年間に、のべ95回の政権交代がありました。(歴代首相の在任期間はWikipedeaで調べました。)
また長期の傾向としては、現在に近づくにつれ在任期間がだんだん短くなってきていることも見て取れます。バブル崩壊(1991年)の後に首相になった細川護熙から現在までですと、平均430日(1年2ヶ月)になります。この期間は失われた20年とも言われているように、首相もころころと交代し、政権が安定しない時期が続きました。
日本の首相の在任期間の短さは世界的に有名になっていますから驚くことはありませんが、短すぎます。
経済危機のスパンは8~9年
ところで世界の経済危機の歴史を振り返ると、バブル崩壊が1991年、ITバブル崩壊が2000年、そしてリーマンショックが2008年と、およそ8~9年のスパンで起きています。
そもそも不測の事態を予測することはできませんが、大きな経済危機が来ても大丈夫なように備えをもった経済運営をするという意味では、首相は少なくとも10年は任されないとダメだということではないでしょうか。
日本の首相がいかに運気に担がれて首相を務めているのかよく分かります。次の経済危機が来ることを覚悟して首相になった人は一人もいないのではないでしょうか。
ひるがえって、企業経営では10年以上社長を務める人は珍しくありません。前回のブログで取り上げた富士フイルムの会長・古森重隆氏の社長在任期間は2000年から2012年と12年間でした。やはりこれぐらいの長期経営ができないと、思い切った改革もできません。(参考:前回ブログ「脅威と正面から向き合えるか ~富士フイルムとコダックの明暗を分けた脅威~」)
政治に頼まず、未来の危機に備えた経営を
日本は少子高齢化、そして生産労働人口の減少といった、長期予測ができる深刻な問題をかかえています。この問題を乗り切るには政策に長期展望が必要です。しかし日本の政治システムが根本から変わらない限り、政権の不安定さはなくなりません。現実的に考えると、政治に未来の希望を託すということは神頼みのようなものであって、むしろ政治への期待はゼロかリスクかぐらいに考えておいたほうが良さそうです。
どんな会社も政治の影響を受けないわけにはいきませんが、できればこれから10年というスパンで事業展望を描き、どんな経済危機があっても乗り越えられる備えを持つことが大事になると思います。
今年から10年といえば2025年までです。2020年の東京オリンピックの後が経済的には谷底になるのかもしれません。それから少子高齢化の問題は、今はじわじわと来ていますが、もっと大きな波になってやってくるかもしれません。
そうした不測の危機に備えた、未来への事業シフトをどうやって描くかは、経営者の大切な役割になるような気がします。長期ビジョンを持つというのは表向きは未来像を明るく見せようとしているように見えるかもしれませんが、危機管理という裏側の意味が実はとても大切だと感じるこの頃です。
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