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会議の人数を減らそう。5人を上限に

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出席した会議に消耗感や重苦しさを感じたことのある人は多いのではないでしょうか。「一人の話が超長くて飽き飽きする」「何もしようとしないくせに意見ばかりする」「何か意見をいえば責任をとらされ何も言えなくなる」「人数が多すぎて議論にならない」などなど。そんな経験を味わった方は多いのではないかと思います。

日本は生産現場などのブルーカラーの生産性向上にきゅうきゅうとしてきましたが、残念ながらホワイトカラーの生産性や創造生産性は聖域になってきました。その最たる元凶はムダな会議や下手な会議にあるのではないでしょうか。最近のホワイトカラー・エグゼンプションという残業規制の緩和の動きは一つの救いになりますが、これはホワイトカラーが何かする仕事を減らせというものではありません。しかし結末として残業が増え、だったら会議をどうにかしないといけない事態になるでしょう。ホワイトカラー・エグゼンプションはよい動きです。いずれ会議の問題を浮き彫りにさせると思います。

客観的に分かりやすい問題は、参加者が多すぎることです。5人を超える会議で企てができると思えません。企てをするなら5人までです。例えば10人も集まってくるような会議に呼ばれたら、企てが既に終わっているか、リーダーが間抜けで決めるアジェンダもなく集められていると思っていいのではないでしょうか。

宮中御前会議になっていないか

しかし日本人はこういう大人数の会議こそが会議だと思っていないでしょうか。目に浮かぶのは「宮中御前会議」です。宮中御前会議とは、戦前まで行われていた、天皇が参加し、国の重役が集まる会議です。これはテレビでおなじみの齋藤孝さんが著書の「不毛な会議・打ち合わせをなくす技術」で、日本にはあまりにこのタイプの会議が多いとして喩えています。

不毛な会議.jpg

不毛な会議・打ち合わせをなくす技術
(PHPビジネス新書) - 2015/2/19
齋藤 孝 (著)

宮中御前会議.jpg

「(宮中午前会議は)見渡してみたときにそれは、「序列確認会議」にしかなっていない。
その会議では、座った時点で各人の発言の重要度は数値換算されています。下々というか、地位の低い人の意見は、その意見がどんなにクリエイティブであったとしても、掛ける0.1ポイントほどでしかないわけです。」

「宮中御前会議は基本的に何かを生み出し、そこで意思決定をしていく会議ではありません。・・・何かを生み出さないようにしているための配置と言えます。「発言するなよ、下々は」みたいな雰囲気があるわけです。」


と、こんな喩えでした。

実際にはこんな古くさいスタイルの会議をしているところはまさかお目にかかれないでしょう。しかし席順がここまで固定されなくても、意識はそんなに違っていないと思います。役職を合わせて参加者を決めていたり、本人が出られなければ代理を立てて進行を見張らせようとしていないでしょうか。保険をかけるように出席者を決めているのが実情なのでは。会議に招集をかける人も、集まる人も、不安の解消のために会議をしているのに過ぎません。そこで何らかの秩序が保たれていることを確認したいだけなんですね。自分の居場所があるということも含めて。意識の上では宮中御前会議と何ら違いません。

不安と向き合うことが大事

本質の問題は、不安との向き合い方なのではないでしょうか。日本人はこの不安との向き合い方がものすごく下手だと思います。不安にナイーブになりすぎるのでしょうか、御前会議みたいにいかに体裁を立派に装っても、意識が野暮なままなのです。会議にまで保険を掛ける意識は野暮中の野暮という他ありません。恐らくこれはたいていの日本企業の問題になっているはずです。トップからボトムまで習い性になっているというほどのです。

マーヴィン・ワイスボード氏とサンドラ・ジャノフ氏がその著書「会議のリーダーが知っておくべき10の原則」の中で、不安へのより積極的な対処の方法を提示しています。ちなみに彼らも齋藤さんと同様に10の原則を掲げているのですが、それぞれの中身はまるで違います。齋藤さんのは会議の生産性を上げる方法論が中心なのに対して、こちらは心理学が中心です。


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会議のリーダーが知っておくべき10の原則
――ホールシステム・アプローチで組織が変わる 単行本 - 2012/2/7
マーヴィン ワイスボード (著), サンドラ ジャノフ (著), 金井 壽宏 (監修), 野津 智子 (翻訳)

彼らは「会議での不安は創造的なブレークスルーの前兆」になるという考え方にたち、「不安と仲良くなる」ことを提案しています。私たちの不安の状態は「4つの部屋」で整理できると言っています。

4つの部屋.jpg

満足...万事順調で、柔らかな光に包まれている。

否認...空気が重苦しい。詳しく知りたくもない。無視・無関心。

混乱...出口を探しまわる。可能性もここに。

再生...万事が可能になる。自信たっぷり。

この4つの部屋で最も重要な部屋が「混乱」です。

「不意に私たちは辺りを見まわし、昂ぶった気持ちの中で、いつのまにか「否認」の部屋から逃れ、「混乱」と書かれたドアを通り抜けていたことに気づく。「混乱」の部屋は不安で装飾が施されている。明るい光が七色の輝きを鮮やかに放つ。音楽が、耐えがたいほどに大きくなったり、聞こえないほど小さくなったり、脈絡なく鳴ったり止んだりする。壁には解読できない文字がびっしり書かれている。
私たちは逃げ道を探す。しかし賢い逃げ方が、どうもはっきりしない。ドアはいくつかある。どのドアを通り抜けるにしても、混乱したイメージを──私たちの心を驚かせ、体を興奮させ、精神を疲労困憊させるイメージを、理解しなければならない。ただ、「否認」の部屋と違い、「混乱」の部屋には手をとりあうべきものがたくさんある。・・・」

さて私たちは「混乱」の部屋にいるときの心理状態をナイーブに扱いすぎていなかったでしょうか。この部屋の可能性に目を開けば、会議をもっと創造的にできるはずです。不安や混乱は、再生のための大事なステップだという意識です。

会議の人数を減らそう

話を戻しますが、まずは参加者を減らすことが大事。上限は5人まで。
まずは小さな会議を徹底して、不安への洗練された対処方法を身につけることが大事だと思います。保険を掛ける発想で参加者を増やしたり回数を増やす発想は野暮なのでやめましょう。

現実には大きな会議は無くなりません。無くせば不安を増幅させるでしょうから。しかし大きな会議に参加する人たちは企てに関われない人たちではないでしょうか。小さな会議を徹底するのは、不安に堪えきれない人を会議から閉め出すためです。不安の問題を会議でなんとかしようとするのはやめたほうが良いのです。
もう別の問題になってしまいますので、このあたりで。

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